●「一方通行型経済」から「循環型経済」への移行

サーキュラーエコノミー(Circular Economy)とは、日本語で「循環経済」を意味しています。

従来の「大量生産」「大量消費」「大量廃棄」型の経済社会活動ではなく、製品やサービスを作りだす段階から、新たな資源投入量を抑え、リサイル・再利用を前提に設計することで、既存のものを無駄にせず、価値を最大限に生かす循環型の経済システムです。

従来型の経済システムは、気候変動や生物多様性の損失、天然資源の枯渇などさまざまな環境問題を生み出しました。資源・エネルギー不足や汚染、廃棄物発生量の増加など持続可能性にかかわる課題はますます深刻化しており、一方通行型の経済社会活動から、持続可能な形で資源を利用する「循環経済」への移行をめざすことが世界の潮流となっています。

循環経済に対して、従来型の経済は、製造から廃棄までが「生産→使用→廃棄」のように一方通行となるリニアエコノミー(Linear Economy・直線型経済)と呼ばれています。
リニアエコノミーでは、製品使用後やサービスの利用後に発生する大量の廃棄物が考慮されていないため、現在起きているさまざまな環境問題、天然資源の枯渇、廃棄物の処理能力の限界を考えれば、長期的に持続不可能であることは明らかであり、サーキュラーエコノミーへの移行は世界の喫緊の課題となっているのです。

サーキュラーエコノミーとリニアエコノミー.png

引用:令和3年版「環境・循環型社会・生物多様性白書」

ところで、これまで日本政府も推進してきた「3R」と、サーキュラーエコノミーの違いは何でしょうか。
それは「廃棄物」の概念が存在するかしないかです。
3R、Reduce(リデュース)Reuse(リユース)Recycle(リサイクル)は「廃棄物をできるだけださないようにする」「使用済み製品を資源として有効活用する」ことを目標としていますが、サーキュラーエコノミーでは製品の設計段階から廃棄物が発生しない前提で資源を循環させるシステムなのです。

●サーキュラーエコノミーの3原則とバタフライダイアグラム

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サーキュラーエコノミーへの取り組みは、世界では10年以上前から始まっています。2010年にサーキュラーエコノミーの推進を目的として設立された英国を本拠地とする国際的な活動団体、エレン・マッカーサー財団が掲げた「サーキュラーエコノミー3原則」では、以下のように定義づけられています。

  1. 1.製品の設計段階から廃棄物や汚染を発生させないようにすること
  2. 2.製品を使用した後も循環させて使い続けること、
  3. 3.資源を有効利用して、自然のシステムを再生させること 

サーキュラーエコノミーでは、この3原則に基づき、資源循環の視点から、木材や食料など自然界での分解・再生が可能な資源(再生可能資源、生物資源)の生物学サイクルと、鉄やプラスチックなど、自然界では分解・再生不可能な資源(有限資源・技術資源)の技術サイクルにおいて循環的な経済の構築をめざしています。
生物資源と技術資源は分けて考えられており、製品をつくる時にはそれぞれの循環サイクルで資源を循環させることが求められます。
たとえば、木材(生物資源)と金属(技術資源)が混ざった製品であれば、使用後にそれぞれのサイクルで処理されるよう、あらかじめ分離しやすい設計が求められます。
この二つのサイクルが、チョウのように円を描いているので「バタフライ・ダイアグラム」と呼ばれています。両者のサイクルは内側の円の方が優先度が高く、生物資源について、使用後の資源を別の用途で使うカスケード利用や、技術資源の維持、長寿命化が推奨されています。

バタフライ.png

その後、2015年にEU(欧州連合)は2030年に向けた成長戦略として、循環経済パッケージを発表しました。
循環経済パッケージは、製品・材料、資源の価値を可能な限り長く保持し、廃棄物を発生させないことを目的とした、サーキュラーエコノミーへの移行を経済競争力の向上に結びつける実効性の高い戦略であり、世界的にサーキュラーエコノミーが広がるきっかけとなりました。

●メーカーの競合関係を超えた「プラスチックの資源循環」への取り組み

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サーキュラーエコノミーへの取り組みのなかでも、近年特に注目度が高く、具体的に取り組みが進んでいるもののひとつに「プラスチックの資源循環」があります。
日本でも、政府目標として、プラスチック資源の効果的な分別回収・リサイクルなどを通して、2035年までに使用済みプラスチックを100%リユース・リサイクルし有効利用すること、および使用後に分解されて自然に還る「バイオマスプラスチック」の再生利用を促進し、2030年までに約200トン導入することが掲げられました。
2020年7月に始まったレジ袋の有料化もこうした取り組みの象徴的な一例です。
企業活動においても、サーキュラーエコノミーの概念を取り入れ、製品を再利用やリサイクルがしやすい設計にしたり、リースやシェアリングなどのビジネス形態を採用するなど、循環型への移行が進んでおり、メーカーや小売店がパッケージ(容器)を自ら回収してリサイクルしたり、アパレルやスポーツメーカーが使用済み商品などを回収して寄付・修理・リサイクルするといった例も多く出てきています。

さらに競合関係を超えた取り組みも始まっています。消費財メーカー大手のユニリーバ、花王、P&G、ライオンとプラスチックリサイクル事業を展開するヴェオリア(本社フランス)は、共同でボトルリサイクルプロジェクトを開始しました。具体的には、東京都内の10カ所に回収ボックスを設置し、家庭で使用した容器を回収。リサイクル工場にて分別・洗浄・処理を行う取り組みです。各社の商品であるシャンプーなど日用品容器の資源循環をめざし、ペットボトルから新しいペットボトルを作るような、リサイクル前と後で用途を変えない「水平リサイクル」技術の検証を実施しており、プロジェクトを各地に広げています。

これらの取り組みは、まだ日本ではスタートしたばかりですが、今後加速的に進んでいくことが予想されています。自社のビジネスのなかで循環型のビジネス、サーキュラー・エコノミーを意識したビジネスがきるかどうかは、今後の企業の持続可能性に大きな影響を与えるからです。

●世界がサーキュラーエコノミーをめざす「メリット」と「デメリット」

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世界がサーキュラーエコノミーをめざすメリットと発生しうるデメリットは何でしょうか。

まず「メリット」としては以下の4つがあります。

  1. 1.製造過程を見直して無駄を省き、資源を再利用することで、製造する際の資源コストの削減が可能になる。
  2. 2.資源の再利用プロセスを構築することで、資源不足による価格高騰などの影響が受けにくくなり、安定した資源確保が可能となる。
  3. 3.資源をリサイクルすることで、製造過程で使用する原材料やエネルギーが削減できるので、温室効果ガスの排出量の削減も進む。
  4. 4.リサイクルなどの技術開発に取り組む他業種の企業と連携することで、新たなビジネスの創出も期待される。

反面、「デメリット」として、移行期におけるビジネスモデルへの影響やジレンマがあることも事実です。たとえば、以下の2つがあげられます。

  1. 1.現在のグローバル経済のシステムでは、多くの製品が発展途上国で大量生産され、先進国などで大量消費された後に廃棄物となります。
  2. 2.急激にサーキュラーエコノミーへの以降が進めば、低所得者層の雇用機会を奪い、生活の困窮を招く可能性もある。
  3. 3.リサイクルを前提にした場合、製品のデザインや設計が制限される可能性や使用済みの資源を回収するための対策やシステムの導入など、さまざまなプロセスで新たにコストがかったり、増えたりする可能性も否定できない。

とはいえ、気候変動や資源問題、生物多様性の損失など地球のおかれた現状を鑑みると、地球と人類社会の持続可能性の観点からも先送りは許されない状況であり、企業も経済活動を循環型に変え、さらにその新しいモデルを競争力にしていく取り組みが求められています。

●まとめ

日本でもサーキュラーエコノミーは「企業の事業活動の持続可能性を高めるため、ポストコロナ時代における新たな競争力の源泉となる可能性を秘めており、現に新たなビジネスモデルの台頭が国内外で進んでいる」(環境省)と位置付けられており、2021年1月には環境省と経団連が循環経済の取り組みの加速化に向けて官民連携による「循環経済パートナーシップ」を発足しました。

2021年3月には世界経済フォーラム(WEF)と共に「循環経済ラウンドテーブル会合」で日本企業の循環経済に関する技術や取り組みを世界に発信するなど、その動きはますます加速しています。
さらにサーキュラーエコノミーは、マーケットとしても限りある資源の効率的な利用などにより世界で約500兆円の経済効果があると言われている成長市場でもあります。2023年のグリーントランスフォーメーション(GX)への投資200兆円にも、関連する経済効果が多く含まれています。

サーキュラーエコノミー実現にむけて、企業が自社のビジネス戦略として資源循環に取り組むことは、中長期的な競争力の強化に直結していくのです。


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