統合報告書制作の2年目以降のレベルアップについて、全2回で解説しています。Chapter.2は重要コンテンツの必要な編集ポイントを抑えて、さらにスパイラルアップしていく術を紹介します。


[Chapter.1] 2年目の課題。どうすればよりレベルの高い開示ができるのか
・財務情報と非財務情報の統合の進め方
・単なる情報の網羅ではなく、自社らしさを表現したレポートにしたい
・実際の制作プロセス、情報収集の注意点はココだ

[Chapter.2] 統合報告書の重要コンテンツを抑えて、さらにスパイラルアップ
・統合報告書の重要コンテンツの制作、注意点はココだ
・スパイラルアップを図るため、レポートアワードを活用
・Webページとレポートの両方のツールをうまく使い分け


統合報告書の重要コンテンツの制作、注意点はココだ

統合報告書全体のレベルを一段と引き上げる重要コンテンツは「価値創造モデル」と「トップメッセージ」です。これらの制作には十分注意が必要なため、制作のポイントを挙げてみます。

●重要コンテンツの制作①価値創造モデル

価値創造モデルとは、会社がどれだけのお金や人材、設備、機材を投入してどのような製品、サービスを生み、どのような価値を生み出しているかを表したものです。これらを言葉でなく、定量化して図にすることがポイントです。

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価値創造モデルをつくる場合には、「自社がめざすところは何か」、企業のパーパス(社会に果たす役割)を定義し、起点とします。そこから、たとえば「革新的な技術でより質の高い医療を世界の人々に届ける」というパーパスに対し、その役割を果たす裏付けとなる材料を収集します。
<価値創造モデルの材料>
●会社の沿革・あゆみ、企業理念や社是
●現在のビジネスモデル   ●現在の成長戦略
●会社の強み、競争力の源泉   ●重要な経営資源
●長期の経営ビジョン(財務的・非財務的にめざすところ)
●マテリアリティ      ●定量化された6つの資本 など

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IIRCの価値創造モデル(プロセス)の基本概念図をベースにこれらの材料を配置してゆきましょう。

定量化された各資本を投入(インプット)して、中央のビジネスモデルで何か良い製品やサービスに変えて、右側のお客さまや社会にアウトプットする。アウトプットとは、事業活動によって生じたもので、たとえば、製品やサービスそのもの、売り上げ、販売数、顧客数、あるいは、マイナスの意味でのCO2、廃水、廃棄物なども含みます。アウトカムとは、アウトプットによってもたらされた成果を意味し、財務では売り上げから生まれた利益、あるいはお客さま満足、ユーザーの伸びであり、非財務では知的財産、優秀な社員、ブランド価値、CO2の削減量なども入ります。
そして、この概念図を完成させるには、マテリアリティ=会社が持続的に成長していくうえでの財務、非財務(環境、社会、ガバナンス)上の重要課題が不可欠です。この重要課題に対し、きちんとしたリスクヘッジを行いながら成長し、めざすところに到達していくことを示す必要があります。

●重要コンテンツの制作②トップメッセージ

価値創造モデルは、制作する際に手間と時間を要するので先に紹介しましたが、統合報告書のコンテンツにおいて最も重要であり、注目度が高いのがトップメッセージです。これは、価値創造モデルを一連のストーリーとして語ったもので、会社がどこから来てどこに行くのかを、長期的俯瞰的視点で語ってもらうことがトップメッセージの役割であり、価値創造ストーリーとなるのです。先ほどの価値創造モデルの材料を、社長メッセージとして言い換えてみると、以下のようになります。

<トップメッセージは価値創造ストーリー>
●会社の沿革・あゆみ、企業理念や社是 
→当社はそもそもこのような歩みをしてきたので、このような理念をもって事業をやってきた。
●現在のビジネスモデル●現在の成長戦略
→現在はこういう事業をこういう地域(国内外)で展開し、このような経営戦略(中期経営計画)で、このような業績・成果を挙げている(目標に対する達成度の報告)。
●会社の強み、競争力の源泉 ●重要な経営資源
→当社にはこういう強みがあり、良い人材や生産拠点を世界に保有している。
●長期の経営ビジョン(財務的・非財務的にめざすところ)
→だから、こういうビジョンを持ち、社会に貢献していきたい。
●マテリアリティ
→ビジョン達成のために重要な経営課題をしっかりと捉え、財務活動とESG活動を統合して行っている。

社長がしっかりと会社の将来像を語り、目標設定をして進捗を語る。掲げた目標に対して積み残しや課題が生じたら、このように取り組んでいくと解決策を示し、しなやかで頼りになるリーダーの姿を示す必要があります。統合報告書のコンテンツのなかでも一番読まれるのがこのページなので、制作には全力で取り組む必要があります。

スパイラルアップを図るため、レポートアワードを活用

せっかく全力で制作した統合報告書のどこが良くてどこが課題か、それを自己評価するのはなかなか難しいものです。そのため、客観的な評価を知る方法としてレポートアワードに出してみるのも一つの方法です。単に受賞したか漏れたかの結果だけでなく、細かいレビューがもらえるため、次に向けた改善に役立てることが可能です。
<レポートアワードの主な評価ポイント>
●価値創造モデル(プロセス)の中身、ストーリー性
●トップメッセージの説得力、社会環境認識
●社会価値の創出を伴う長期的ビジョン、ありたい姿
●中期的、長期的な経営計画と戦略
●経営目標に対する成果の分析・報告
●ビジョン達成のためのマテリアリティ(リスクと機会)の抽出
●コーポレートガバナンス・取締役会実効性向上の取り組み
●環境・社会活動に対するガバナンスと目標管理状況(KPI)

Webページとレポートの両方のツールをうまく使い分け

また、開示の充実をめざしていると2,3年で項目が多くなりすぎて、レポートに収まりきらなくなり、ページ構成に困るという事態が訪れます。そんな時は統合報告書だけで構成を考えるのではなく、企業サイトやその他のWebツールなどをリーチしたいターゲットによって使い分け、Webインテグレーションをしっかりと行っていくことが望まれます。乱立する情報ツールの棚卸、役割整理も必要に応じて行っていけるとよりよい情報開示フレームの確立が可能になるでしょう。

[Chapter2] のまとめ

重要コンテンツの制作①価値創造モデル
→会社がどれだけの資本を投入し、どのような価値を生み出しているかを
定量化して図にする。

重要コンテンツの制作②トップメッセージ
→最も重要なコンテンツ。全力で制作したい。

スパイラルアップを図るため、レポートアワードを活用
→賞がとれなくても、細かいレビューがもらえるので次に向けた改善の目安になる。

Webページとレポートの両方のツールをうまく使い分け
→乱立する情報ツールの棚卸、役割整理も必要に応じて行いたい。

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