HintClip編集部が、広告・販促・広報・サステナビリティなどの各分野のプロフェッショナル(専門家)に依頼して、お薦めの書籍を紹介してもらうシリーズ企画です。
第3回目となる「CI・ブランド戦略編」では、企業・地域・商品のアイデンティティ戦略・ブランド戦略などの企画立案・コンサルティングに携わる株式会社コトヴィアの荻原 実紀さんが実務に役立つベストな3冊を選んでくれました。

▶題字:書家 小川啓華

■推薦理由

CI(コーポレート・アイデンティティ)やブランドを築き、企業としての社会的価値を創造する上では、方法論以上に「経営的な指針」、基となる「理念・ビジョン」が重要だと考えます。企業ブランドの実例とその背景にある経営思想をもとに、CI・ブランド戦略の基本的な考え方や価値創造・戦略デザインのプロセスについて学ぶことができる良書を推薦しました。企業経営者やこれから起業を志す事業家、経営企画・広報・人材開発・マーケティングなどの実務担当者、外部支援する専門コンサルタント・プランナー・デザイナーなど幅広い方々に、CI・ブランド戦略に関わる重要な視座を学び、現場での実践に生かすことができる3冊です。

■推薦者

株式会社コトヴィア

CEO,Visionary

荻原 実紀

共創ブランド戦略コンサルタント。2003年PAOS入社。CIコンサルタント中西元男代表のもとで、企業経営における戦略デザインを研究。CI・ブランド戦略立案、企画調査業務などに従事し、PAOSメソッドを修得。2010年PAOSの同僚らと独立し、感性価値創造を行うクリエイティブ・カンパニーCOTOVIA(株式会社コトヴィア)を創業。お客さま・社員・市民・地域・社会とともに魅力を共創するアプローチで、企業・地域・事業・商品などのアイデンティティ戦略・ブランド戦略・イメージマーケティング戦略、文化育成・社会貢献事業、新事業・商品開発などの理念・ビジョン設計、ブランドデザイン、企画立案などを行う。共同印刷グループの120周年を機にしたCI再構築、企業ブランド”TOMOWEL”の開発を後方支援。立命館大学経済学部卒業、同大学院経営学研究科修了。共創によるマーケティング・ブランド戦略を研究実践。https://cotovia.co.jp/

●『ブランド論―無形の差別化をつくる20の基本原則』
著者:デービッドアーカー 氏  
訳:阿久津聡 氏
出版社:ダイヤモンド社

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ブランド論といえば第一人者、デービッドアーカー氏を避けて通れません。本著はブランドの価値、ビジョン、戦略、ポートフォリオ、そして構築や強化のプロセスなど、ブランディングに対する考え方とその実践方法を20の基本原則にまとめています。現代の情報が溢れるデジタル社会において「ブランディング」はますます重要視されています。経営者層やブランドに関わる実務担当者に向けて、企業にとってのブランドとは何かを原点に立って学び直したり、自社の戦略や将来展望を構想したりする際の体系的な照合に役立ちます。
ブランドは企業経営における無形資産。組織から顧客への約束であり、ブランディングは顧客との信頼の関係性構築のプロセスです。説得力のあるブランド・ビジョンのもとで、人々の心に響く道を示し、ブランドに命を吹き込むことで差別化を生み、人や組織、社会を動かす力をもちます。本著を読めば、ブランドが企業にとって戦略価値を持つ大切な資産であり、ブランド構築が継続的に価値を生み出す戦略であることが深く理解できます。また、社内向け、社外向けにどのように活性し何を強化すべきか、ブランド・ポートフォリオの管理・運用方法、各ブランドの役割と個別戦略、新製品市場開拓のためのブランド活用など、ブランディングの優良事例とともにブランドの全体像を学ぶことができます。
本著は、アーカー氏の数々の論文、著書、長年のブランド研究とブランド構築実務を通じた総括と言える書。経営戦略やマーケティング戦略として、また企業の戦略的資産としての目線で見通すことができ、企業経営におけるブランド論を学ぶアカデミックな教科書としても優れています。

●『ビジョナリー・カンパニーZERO―ゼロから事業を生み出し、偉大で永続的な企業になる』
著者:ジム・コリンズ 氏/ビル・ラジアー 氏 
訳:土方奈美 氏
出版社:日経BP

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本書は、世界的なロングセラー『ビジョナリー・カンパニー』シリーズの新著。先見性があり未来志向で社会的評価が高く、優れた業績で進化し続けるビジョナリー・カンパニー(偉大で永続的な企業)をめざす経営層や実務担当者向けに、CI再構築やリブランディングを通じて、経営全体を俯瞰した存在意義の見直しや理念構築の考え方の参考に読んでいただきたい書です。
本書の特徴は、ビジョナリー・カンパニーと呼ばれる企業のこれまでのイノベーションや成長過程とその背景を実例に、CI構築やブランディングに必要なコアバリュー、パーパス・ミッション・ビジョン、戦略、それらを実現するためのリーダーシップ、事業姿勢、遂行能力、社内で共有し参画する枠組みなどを具体的かつ実践的に示しています。さらに、すべての社員・顧客・社会と互いを尊重する関係性、事業内容以上の、価値観、組織や人材の重要性についても言及しています。「企業は人なり」との名言がありますが、ビジョンに沿った人材採用や育成も大切です。ビジョンは企業のアイデンティティであり、人に人格があるようにブランドは「企業の格」のようなもの。大切にしたい信念(コアバリュー)は何か、失敗をどう考え革新・創造していくのか、社会にどう貢献し未来を創造していくかなど、企業の在り方を深く考察する示唆を与えてくれます。
本著は『ビジョナリー・カンパニー』シリーズ出版以前の『ビヨンド・アントレプレナーシップ』(1992年発行・日本語未訳)をオリジナルとし現代に合わせて加筆修正され、『ZERO』はシリーズの原点でもあり、今もなお普遍的な視座とエッセンスが多く含まれています。その他、シリーズでは『ビジョナリー・カンパニー②飛躍の法則』がおすすめです。

●『ブランド戦略論』
著者:田中洋 氏
出版社:有斐閣

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日本における「ブランド戦略論」の権威の一人である田中洋氏(中央大学名誉教授)のブランド論に関する研究の集大成、“日本初の本格的ブランド体系書”。理論篇、戦略篇、実践篇、事例篇と大きく4つに編成され、ブランド戦略を体系的かつ包括的に学びたい方、マーケティングやブランドに関わる実務担当者にぜひ一読いただきたい書です。
注目すべきポイントは、「理論篇」では、ブランドの定義、ブランド史の構造など、ブランドの価値や機能について記されており、「戦略篇」では、経営レベル・マーケティングレベル・コミュニケーションレベルに続き、ブランド戦略の組織的実行と管理、測定について言及されています。経営レベルのブランド戦略として、投資する経営資源の意思決定や知的財産権に関する戦略について、またフォーカス顧客戦略、ブランド価値のプロポジションなどのマーケティング・レベルのブランド戦略、ブランド・コミュニケーション戦略など全体像を知ることができます。実行において組織的な取り組みの重要性や陥りやすい課題についても示されています。「実践篇」では、企業ブランド戦略、ブランド拡張戦略、グローバル・ブランド戦略に続き、さまざまな顧客のタッチポイントを経由して購買・サービス受容・情報処理という行動に導くための種々のブランド戦略上の戦術に関して、実践上の課題と優位点を理解できます。「事例篇」では、有名企業のブランド(食品・飲料/日用品/耐久性消費財/ヘルスビューティ/サービス流通/カルチャー/ツーリズム/B2B企業)の事例が掲載されています。
電通マーケティング・ディレクターや企業のブランドに関する戦略アドバイザーを務めた田中教授の豊富な経験値と、長年の学術的なマーケティング、特にブランド戦略研究の蓄積に基づき、具体的でわかりやすく実践的な知見に満ち、読み応えのある教科書的な存在です。


<番外編コラム>

CI・ブランド戦略で最もおすすめしたい書籍は、日本のCI戦略の先駆者、PAOS代表 中西元男氏の書籍。現在、残念ながら中古市場でしか入手できませんが、『コーポレート・アイデンティティ戦略―デザインが企業経営を変える』中西元男(著)誠文堂新光社(出版)では、経営戦略デザインで新たな個性を創出する、社会における企業存立戦略としての「CIの本質」が凝縮されています。大企業から中小企業まで25のケーススタディ別に構成され、それぞれの経営層の想いや意思決定プロセス、取り巻く環境や経営課題など、企業側の実施目的が理解でき、経営層から実務担当者まで幅広い層に役立ちます。

また最近の書籍では『理念経営2.0―会社の「理念と戦略」をつなぐ7つのステップ』BIOTOPE代表・佐宗邦威(著)ダイヤモンド社(出版)がおすすめです。世の中の価値観が多様化し、創業者の理念浸透ではなく、社員から社会まで内外のステークホルダーを包括し、共創する次世代理念の在り方、昨今のパーパスブームの背景や企業の存在意義の見直しの潮流などに触れつつ、理念構築における最新手法や実践ワーク、日本企業の企業理念一覧(2023年3月時点)も記載されています。

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