※株式会社吉野家の「吉」の字は、正しくは「土(つち)」に「口(くち)」と書きます。
牛丼チェーン「吉野家」を全国に約1,200店舗展開している株式会社吉野家さま。『DUET!』は、全国の社員およびアルバイト・パート社員に向けた社内報で、共同印刷が編集をサポートしています。
「社内報」は、企業文化や経営方針などを反映して多様な編集内容・形態で発行されていますが、吉野家さまの『DUET!』の特色は「トップコミットメントの強さ」にあります。
トップが自ら現場に赴き、自社の理念やトップとしての想いを伝え、また社員の声を聴くために、社員との意見交換を頻繁に行い、その内容を誌面に掲載しているのが特徴的です。
今回は、『DUET!』の編集担当である株式会社吉野家 企画本部 広報課長の山岸裕子さまに、社内コミュニケーションや社内報づくりでこだわっていること、今後の方向性についてお話を伺いました。
<ファシリテーター>共同印刷株式会社 HintClip編集長 杉山 毅
広報担当に脈々と受け継がれている「現場主義」の考え
杉山:吉野家ホールディングスでは、「For the People すべては人々のために」という経営理念や、「すべての従業員が人間性や能力を高め、それを十分に発揮できるように、健康的で未来への期待に満ちた職場を目指します」という「従業員への約束」を打ち出されており、“人”というところに重点を置かれている印象があります。御社の社内広報も、そうした方針を持って展開されているのでしょうか。
山岸:広報に脈々と受け継がれている考え方として、「現場主義」があると思います。全国の吉野家を支えているのは、キャストさん(吉野家でのアルバイト・パート社員の名称)、店長、エリアマネージャーなど、現場の“人”に他なりません。
現在、社内広報ツールとしては、社内報(月刊)『DUET!』と、月2回発行の社長の河村のメールマガジンがありますが、いずれも現場で働いているキャストさんや店長、エリアマネージャーとのコミュニケーションを主眼としているものです。
現場とのコミュニケーションを何よりも重要視しているからか、私も含めて歴代の広報担当はキャストから店長、エリアマネージャーといった現場経験者ばかりです。それはやはり、「現場を知っているからこそ、現場に寄り添ったメッセージが発信できる」という考えがあるからではないかと感じています。私も、何かのメッセージを発信する際、現場での経験から「こういう形のほうがよい」と意見することはありますね。
杉山:『DUET!』を拝読しましたが、河村社長と現場の皆さんの座談会「河村泰貴の『お話きかせてください!』」の企画が印象的です。トップメッセージや座談会は社内報でよく見かけますが、トップが自ら全国の現場に足を運び、従業員と直接コミュニケーションを取る機会を定期的に、これだけ多く実施しているのは珍しいと思います。
山岸:社長の河村自身、「現場が考えていることをリアルタイムで知りたい」という想いを強く持っているので、年に3~4回、自ら地方まで足を運んで、現場のエリアマネージャーや店長と意見交換をしています。そこは確かに、『DUET!』ならではの特徴かもしれません。地域の選定、人選など大変な企画ではありますが、各地域の営業部の皆さまに都度ご協力いただいて実現できています。
「自分も取材されたい」そう読者が思える社内報でありたい
杉山:『DUET!』の発行目的や編集方針についてお聞かせください。
山岸:『DUET!』のメインターゲットは店長であり、編集コンセプトは「いかに店長に読んでもらえるものを作るか」です。そして、キャストさんへの教育ツールとしても活用してもらいたいと考えています。
メインターゲットを店長にしている理由は、店長に読んでもらわなくては、キャストさんにも情報が落ちていかないからです。
特に店長に読んでほしいのが、ほかのお店での好事例です。店長が店舗をうまく運営していくにはキャストさんの協力が不可欠ですから、キャストさんのモチベーションを向上させている事例を知って、店舗の運営やキャストさんの育成の参考にしてもらえたらと考えています。
本社に異動してみて痛感したのは、全国のさまざまな地域での取り組みや本社の各部門の取り組みなど、現場で仕事をしているだけでは得られない情報がたくさんあるということです。
そういった事例を、『DUET!』でできる限り紹介して、店長やキャストさんのモチベーションを喚起していきたいと思っています。
できるだけ多くの人に手に取って読んでもらいたいという思いから、紙メディアでの発行を続けているのも、『DUET!』のこだわりです。
杉山:山岸さんご自身は、店長だった頃、『DUET!』をどのように読まれていましたか。
山岸:私が現場にいたとき、『DUET!』に出るということは“夢”や“目標”でした。
『DUET!』には、大きな業績を上げたり、新しい取り組みをして輝いている方がたくさん登場します。特に、刺激を受けていたのが、「店長集会号」です。顕著な活躍をされている店長たちが紹介されるので、誌面を見るたびに、「自分もここに出られるくらいの取り組みがしたい!」と鼓舞されていました。
今は社内報の読者の側から作る側に立場が変わりましたが、たくさんのよい事例を紹介し、多くの店長が「自分も出てみたい」と思えるような社内報にしたいです。
杉山:社内報を編集する際に心がけていることがあればお聞かせください。
山岸:私が本社に異動して半年あまりということもありますが、編集に協力していただく社員とは “本社の人間”というよりも、“現場に近い存在”として接することです。
例えば、メールのやりとりであったり、取材での会話であったり、できるだけ堅苦しさを与えることなく、“一緒に働いている仲間”として接するよう心がけています。
「閲読率向上」と「参加意識の醸成」が今後の課題
杉山:今の御社のなかで社内コミュニケーションの課題があれば、お聞かせください。
山岸:エリアマネージャーとして勤務していた福井県から異動してまだ6カ月、やりたいことはたくさんありますが、まずは閲読率を上げていきたいと思っています。さまざまな店舗を見ていると、店長が教育ツールとしてうまく活用してくださっている場合もあれば、そうでない場合もあるのではないかと感じています。
閲読率の調査を実施していないので、まずはそこを把握しつつ、対策を行っていかなくてはと思っています。
もう一つは、社員の参加意識を醸成することです。『DUET!』で何かの公募をしても、今までは社員からあまり反応がなかったと聞いています。
今はまだ『DUET!』を発行することに精一杯な状況ではありますが、来年度はエリアマネージャーや店長にヒアリングを行う予定です。ヒアリング結果を基に、社員の参加意識を高めるために、編集内容や配信方法を検討したいと考えています。
杉山:具体的な対策はこれからということですが、現時点で上記の課題に対して工夫していることがあればお聞かせください。
山岸:できるだけ『DUET!』に親しみを持ってもらいたいので、自分のキャラクターを誌面に出すようにしています。例えば、編集後記のなかで、クスッと笑えるような冗談を入れてみたり。そうしたことから、「この人ちょっと面白いな」と感じてもらい、『DUET!』への興味につながればと思っています。
杉山:当社は『DUET!』の編集にご協力させていただいていますが、ご要望があればお聞かせください。
山岸:広報経験がまったくないなかで、共同印刷のディレクターさんには編集企画から取材撮影、記事のライティングまで、幅広くサポートしていただいており助かっています。
私よりも当社や『DUET!』について理解されているので、過去の編集内容を踏まえて助言していただくことも多々あります。
今は頼ってしまってばかりですが、今後は現場でのキャリアも生かして、より現場の声を抽出し、より社員に読まれ、社員が参加したくなる社内報にしていきたいと考えています。
共同印刷さんには、今後も閲読率や社員参加をアップさせる、ご提案をお願いしたいです。
全国にもっと“『DUET!』ファン”を増やしていきたい
杉山:ありがとうございます。これからも、山岸さんの想いがより反映された社内報に進化するようサポートさせていただきます。
最後に、社内コミュニケーションや社内報についての「ビジョン」をお聞かせください。
山岸:『DUET!』は、現場の店長に見て、活用してもらってこそ価値があると考えています。そのためには、読者からの多様な意見や感想、要望が自然と集まるようにしたい。
そこがまず、第一の目標ですね。
そうして多様な声を集めて、社員と共に誌面を作りながら、より多くの“『DUET!』ファン”を増やしたいです。
“『DUET!』が発行されるのを心待ちにしています”という声を、たくさんいただけるようにするのが、次の目標です。
また、こちらから取材のオファーをしなくとも、店舗側から「私たちはこんな取り組みをしているのでぜひ取り上げてほしい」というオファーが来るようになれば、うれしいですね。
共同印刷さんには、このビジョンを実現させるためのサポートを引き続きお願いいたします。
株式会社吉野家
企画本部 広報課長
山岸 裕子さま
石川県小松市出身。地元の吉野家でキャストを8年間経験後、同店を運営するフランチャイズ会社の社員を1年間経験。その後、一時吉野家の仕事を離れるが、2010年にキャスト時代の店長に誘われ、株式会社中日本吉野家に入社。店長、地域のモデル店のリーダーを経て、2017年に金沢地区のエリアマネジャーに昇格。2021年9月に株式会社吉野家に出向、現職。
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