“データを強くする”という意味の「データエンハンスメント」。4回に分けてお届けするシリーズ企画です。
3回目の今回は、購買データを利用したエンハンスメント事例のご紹介をいたします!

データエンハンスメントとは

データエンハンスメントは、あるデータにオープンデータや自社保有の別データ、あるいは他社のデータを繋ぎ情報を付加することで、データの価値を高めることです。エンハンスメントすることにより、顧客インサイトを解き明かし、施策のための新たな切り口の発見の可能性を広げます。


HintClipノウハウ一挙公開企画 「データエンハンスメントのススメ」(全4回)
[Part1|概要編] マーケティングのために自社のデータを「強く」する
[Part2|クレジット業界編] 「クレジットカード明細」を強くする!
[Part3|小売業界編] 「購買データ」を強くする!
[Part4|実店舗編] 「位置情報」を強くする!


「ヒト」と「モノ」をつなげる購買データの台頭

スーパーなどの小売店で商品を購入する際、必ず利用するのがレジです。そして、私たちが日々商品をこのレジに通すたびに蓄積されていく購買データがPOSデータです。POSデータには、「いつ」「どこで」「何を」「何と」「いくつ」購入したかといった情報が蓄積されています。一度の買い物での買い合わせや、全体の売り上げをみるにはPOSデータで充分でした。
このPOSデータに「ヒト」の要素、会員情報を加えられるようになったのが、ID-POSデータです。ID-POSの登場により、今までのPOSデータでは分からなかった「誰が」「どのような順番で」「どのくらいの頻度で」商品を購入したのか、などの情報が付加できるようになりました。つまり、顧客ごとの商品の「買われ方」が見えるようになったのです。

これらの購買データと会員情報の組み合わせを、「デモグラフィック属性」や「購入した商品のカテゴリ」、「一緒に購入した商品」などの切り口で分析しマーケティングを行うことで、ECサイトを含む小売店では、デモグラフィック属性ごとの購買傾向だけでなく、個々の会員のニーズまで把握することができるようになりました。

ヒトの趣味・嗜好は多様化している

こうしたことを背景に、購買データと会員属性情報を組み合わせた分析手法や分析ツールは、近年マーケティング業界に広く浸透しています。購買データの分析ツールもさまざまなものが販売されていますので、専門知識は無いけれど簡単な分析は一通りやってみた、という方も珍しくないと思います。それでは実際に分析してみて、どのようなことが分かったでしょうか?「思ったよりも傾向って出ないものだな」と感じたことはないでしょうか?

昭和~平成~令和と時代が移り変わるにつれて、人の趣味・嗜好はますます多様化しています。インターネットの普及により、以前なら関わることの無かったような属性の人とも簡単につながれるようになりました。多様な属性の人たちから多様な影響を受けるようになった結果、同じ性別、年代、居住地域だからといって、同じ趣味・嗜好を持っている、とは以前よりも言い難い時代となりました。その傾向は今後さらに強くなると予想されます。
もちろん、デモグラフィック属性は人のセグメント分けを行う上では現在でも非常に重要な要素でしょう。しかし、それだけでは推し量ることのできない要素が、マーケティング上無視できないものになっています。

また、同じカテゴリの商品と言っても、各メーカーが訴求するポイントは人の趣味・嗜好と同様ますます細分化されています。同じチョコレートであっても、どのような趣味・嗜好を持つ人に向けて訴求したいのかによって、宣伝やマーケティングの手法は変わってくるのではないでしょうか。人の趣味・嗜好の数だけ商品の数、訴求の方法も増加する状況にあるのです。

購買データに「商品の特徴」をエンハンスメントする!

そこで、ID-POSデータを新たな軸「趣味・嗜好」でエンハンスメントしてみませんか、という提案です!
商品に対して、商品説明データを機械学習させて生成した「特徴タグ」をエンハンスメントしていきます。すると、商品カテゴリによらない新たな「商品の特徴」というセグメント分けが可能となります。この「商品の特徴」をキーとして、顧客の「趣味・嗜好」を可視化する、という手法です。

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顧客の「趣味・嗜好」を従来の分析と組み合わせてみましょう。
例えば、会員のデモグラフィック属性ごとに商品の購買傾向を分析するときも、性別、年代、居住地域などの切り口のほかに、「商品の特徴」という切り口でも分析が可能となります。
これにより、デモグラフィック属性ごとの分類では埋もれてしまっていた会員一人ひとりの特徴をより深く説明できるようになります。例えば、「【平日】に【大容量】の商品を高頻度で購入する人」 = 「【飲食店を経営している】可能性がある」といったような具合です。

また、会員のよく購入する「商品の特徴」別に分類し、「趣味・嗜好」を軸とした新たな顧客セグメントを作成することもできます。まさにデモグラフィック属性によらない新たなセグメントです。「趣味・嗜好」ごとに分析を行うことで、セグメントごとの購買の傾向や、売れ筋商品が見えてくるでしょう。

従来の分析では、傾向として見えてくるものはあっても、その後の販促施策に落とし込む際に「イメージがわかない」「現実的な施策にならない」などの問題が発生することも、ままあったのではないでしょうか。趣味・嗜好の軸で分析を行うことで、販促施策に落とし込む際の大きなヒントとなり得るのです。

*1.外部データを付加することでデータを強化すること

例えば… 流通・小売だったら

ここからは、事例を元にご紹介していきましょう。
ID-POSデータから、購買商品の「特徴」を機械学習によってタグ付けしていきます。会員ごとに、購買した商品の特徴から会員の趣味・嗜好を推測します。さらに購買頻度や来店回数などから「趣味・嗜好」ごとの優良会員、準優良会員…とセグメントを設定していきます。

セグメントを設定したら、準優良会員を優良会員に引き上げるための施策を打ちます。今回は、各セグメントの趣味・嗜好に合わせたクーポンを会員アプリにレコメンドしていきます。趣味・嗜好ごとにセグメント分けを行っているため、より各会員の趣味・嗜好に合わせた精度の高い「個客」マーケティングが可能となります。これにより、ばらまきによるクーポンの常態化を避け、無意味な値引きを行わなくて済むようになります。

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例えば… ECサイトだったら

それでは、ECサイトで「商品の特徴」をタグ付けしたらどうなるでしょうか。
あらかじめ、ECサイトの商品を「特徴」によってタグ付けし、検索項目を作成します。顧客は、自分の趣味・嗜好に合わせた「特徴」を自ら選択することによって、サイトの検索性が向上し、「これまでにない商品の選び方」という新たな価値を提供することができます。また、顧客の趣味・嗜好が分類されることで、ECサイト側も、より顧客のニーズを正確に把握しやすくなり、新たな商品の仕入れの参考とすることができるのです。

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また購入した履歴だけでなく、サイトでの行動ログからもどのような「特徴」タグを選んで検索していたのかを把握できるようにしておくと、購入に至らなかった見込み顧客でも「どのような趣味・嗜好を持った人なのか」が把握できます。これにより、サイトに来訪する顧客がサイトに「何を求めていたのか」を分析することができ、見込み顧客のニーズまで反映した商品ラインアップへの改善、SEO対策にも役立てることができるのです。

いつもの購買データを より「活用できる」データに

ここまで、購買データに「商品の特徴」を付与することで強化できること、実現できることを紹介してきました。現在手元にある情報に、さらに情報を付加することで、新たな価値を生み出せることがお分かりいただけたでしょうか。

「商品の特徴」と簡単に書きましたが、マーケティングに活用しやすい「特徴」を付与しなければ、あまり意味の無いものとなってしまいます。どのような「特徴」をエンハンスメントすれば購買データを価値のあるデータにできるのか。共同印刷にご相談いただけますと幸いです!

データエンハンスメントのススメ、今回も最後までお読みいただきありがとうございます。次回もお楽しみに!


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