“データを強くする”という意味の「データエンハンスメント」。4回に分けてお届けするシリーズ企画です。
第1回目の今回は概要編。
クレジットカード明細の事例を基に、概要をご解説します!

データエンハンスメントとは

データエンハンスメントは、あるデータにオープンデータや自社保有の別データ、あるいは他社のデータを繋ぎ情報を付加することで、データの価値を高めることです。エンハンスメントすることにより、顧客インサイトを解き明かし、施策のための新たな切り口の発見の可能性を広げます。


HintClipノウハウ一挙公開企画 「データエンハンスメントのススメ」(全4回)
[Part1|概要編] マーケティングのために自社のデータを「強く」する
[Part2|クレジット業界編] 「クレジットカード明細」を強くする!
[Part3|小売業界編] 「購買データ」を強くする!
[Part4|実店舗編] 「位置情報」を強くする!


蓄積した情報を販促に生かす

情報は力だ、ということを人間が学んでから、現代ほど情報があふれている時代はありません。情報がデジタル化されて以降、情報は生み出されやすく、伝わりやすく、そして貯めやすくなっています。センサー類の発達、IoTの普及などにより、今まで情報として取得されていなかったものもデータ化され、知ることができるようになっています。データの流通量が日に日に増加していることは明らかで、2021年には、Googleでは570万件以上の検索が1分間に行われ、Amazonでは$28万以上の購買活動が同じく1分間に行われていると言われています。*

また、2020年以降のパンデミックで、デジタルの普及は5~10年間分の予想を大きく超える動きを見せました。アメリカの消費者の75%は、パンデミックによりその人が従来行ってきたのとは異なるショッピング行動を起こしているという調査もあり、マーケティング担当者はこれらの消費者の行動の変容のスピードについていかなくてはなりません。

ただ、取得した情報はデータとして蓄積されていきますが、持っているだけではその力を発揮することはできません。各企業が顧客や市場、商品やサービスに関するデータを持ち活用していますが、一部の企業を除き、壁にぶつかることが多くあります。要因はさまざまですが、今回は「持っているデータを販促に生かしたいが、手持ちのデータをどうすれば良いかわからない」、「今持っているデータだけでは販促に使えないのでは」という悩みを解決する手法の一つとして、「データエンハンスメント」をご紹介したいと思います。

*出典:DOMOによる分析レポート「Data Never Sleeps 9.0」

「データエンハンスメント」とは

「エンハンスメント」とは、英語で「強化」という意味です。情報は既に力なのに、それをさらに強化しようというのが「データエンハンスメント」というわけです。データエンハンスメントは、大きく2つの種類に分けることができます。

まず1つ目が、「デモグラフィック属性からの拡張」です。この場合は、追加される情報が顧客の情報から一意に定まります。例えば、年齢を10歳ずつに区切り「20代」「30代」とまとめることも、新しい情報の追加と言えます。たったこれだけで、と思われるかもしれませんが、こうして年齢を一定のまとまりにすることで、会員データの傾向というものが見えやすくなります。つまり、無意識にでも多くの人は普段から何らかの形でデータのエンハンスメントを行っているのではないでしょうか。また、例えば顧客の生年を定義された区分で区切り、どういった特徴を持つ世代なのかという分類を割り当ててみるのもエンハンスメントの一例です。よく使われる顧客情報の「年齢」は時間と共に変化する情報ですが、こちらは年月を経ても変化しない顧客の特性情報として使用することができます。下表の「世代」がこの例にあたります。

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わかりやすい「生年」の変換を例としてあげましたが、もちろん情報の価値を高めるために付加する内容はこれに留まりません。さまざまなオープンデータや各企業が独自で持っている情報と「結びつける」ことで、データはより価値の高い情報へと生まれ変わります。結びつけるデータの種類はオープンデータの地理空間情報、気候情報、設備の設置情報、災害情報、リサーチ会社によるマーケティングリサーチからの情報、自社内に散らばっている情報、など多様な情報が存在しています。

例) クレジットカード明細に公開情報より業種をエンハンスメント

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2つ目のエンハンスメントの種類は、リサーチなどから得られる新しい情報を付加することによるエンハンスメントです。例えば、顧客へのアンケート調査を行うことが考えられます。体系だった項目に基づき企業や商品へのイメージ、あるいは顧客本人の特性や嗜好についての情報を取得することができれば、それらの情報を基に顧客の新しい分類を行い、気づきを得ることができます。

データエンハンスメントで「何が」できるのか

さて、ではデータエンハンスメントはなぜマーケティングに役立つのでしょうか。先ほど、情報は既に力なのに、それをさらに強化するというフレーズを使いましたが、これを別のものでイメージするとわかりやすいかもしれません。素手の人がトングを持つことをイメージしてみてください。トングを持つことによって、人は「熱いものでも移動させられる」「対象物を衛生的に扱える」「手を汚さずに済む」といった機能を手に入れ、且つ、届く範囲が素手よりも広がります。これは、データエンハンスメントでも同様のことが言えるのです。

まず、エンハンスメントすることにより、持っているデータを見る切り口が増えます。数字の羅列だったものを「世代」でくくる、あるいは文字の羅列だった住所を「意味づけを持ったワード」でくくる、といったことをすることで、各顧客の持つ特性を踏まえた施策を考えられるようになります。「バブル世代の傾向を踏まえた施策」「地域特性を踏まえた施策」のように、マーケティング上の視点を増やすことができるわけです。付加するデータに合わせて、顧客を意味付けする項目が増えていき、元々持っていた情報の視点、機能を増やすことができるのです。視点が増えることで、「この商品を購入する人は、こちらの商品も買ってくれるのでは」といった可能性の検証も行うことができるため、商品やサービスのクロスセル、リーチ力の向上にも力を発揮します。

そして、エンハンスメントの効果は既存の顧客を表すフレームワークを増やすだけではありません。同時に、新規の顧客を獲得するにあたっても、付加された情報を鍵に分析を行うことができます。さまざまな視点で見た時の「共通事項」を発見することで、「商品Aはこの層にも訴求できるのでは」といった気づきを得ることができます。新しい顧客層を発掘するという意味でのリーチ範囲の向上、アプローチする上での方策の幅の向上といったことが見込めるのです。

これらが、情報の「力」を強化することの意味であり、効果であると言えます。

データエンハンスメントのポイント

データエンハンスメントを行う際に重要なのは、目的をはっきりさせることです。何でも良いからたくさんの情報を付加してみた上で「見えるものを探す」ということは推奨されません。ランダムに情報を増やしても、分析をする上でのノイズとなる可能性が高く、導き出された結果の信憑性に影響する場合も多いためです。まずは現在抱えている販促課題の「何を」解決したいのかを明確にし、それに対する仮説を立てることが重要です。その上で、仮説に合う新しい情報を、既存の情報に付加するのがデータエンハンスメントを行う際のポイントとなります。

データエンハンスメントのススメ マーケティングのために自社のデータを「強く」する

以上、この記事ではデータエンハンスメントとは何か、そしてエンハンスメントのメリットや注意するポイントについて解説しました。
エンハンスメントをする際に使ったデータの区分や視点は、その後のマーケティング活動のなかのさまざまな場面でも活用することができます。「データ活用」が叫ばれる現在、多様なデータから何も読み取れない、と困った場合には、まずは目的を決めた上で自社データを強くする試みを行ってみてはいかがでしょうか。顧客像、あるいは顧客行動の理解を深めるため、ぜひ検討してみてください。


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