化粧品の選択肢が増えています。
スキンケア化粧品だけを見ても、長年市場をけん引してきた化粧品メーカーの商品に加え、多くの企業が新規参入しています。OEMを活用して商品を展開するケースもあります。消費者にとっては選択肢が増える一方、「どの商品を選べばいいのか」を判断するために、より多くの情報を集める必要が生まれています。
※OEM(original equipment manufacturer):ブランドを持つ企業が製品の製造部分を他社に委託する仕組み
かつての化粧品選びでは、テレビCMや雑誌、店頭で商品を見たり、美容部員から説明を受けたりすることが主要な情報接点でした。現在はどうでしょうか。スマートフォンを使い、SNSで口コミを確認し、検索で商品情報を調べ、公式サイトやECサイトを確認する。場合によっては、実際に使っている人の投稿を見てから購入を決める。情報収集の方法は大きく広がっています。
化粧品の情報収集では、SNSをはじめ、検索や公式サイト、店頭など、さまざまな接点が使われています。では、実際にスキンケア化粧品を探すとき、最も利用されている情報源は何なのでしょうか。
化粧品の情報収集は、やっぱりSNS?

今回、スキンケア化粧品について「どのようなチャネル」から情報を集めているかを共同印刷BeautyProjectチームが独自アンケートを取り調査しました。

全体250名の回答を見ると、最も多かったのは「SNS全般」で、59.6%。2番目は「Web検索・ネット全般・公式HP」で20.8%、「実店舗・店頭・美容部員」が14.4%、「アットコスメ(@cosme)」が12.8%でした。一方、「ECサイト・通販のレビュー」は4.4%にとどまっています。この結果から、スキンケア化粧品に関する情報収集にSNSが大きな役割を果たしていることがわかります。
SNSの利点は、情報に触れるまでの距離が近いことです。意識せずに日常的に利用しているなかで、新商品や話題の商品を偶然知る機会が多く、実際に使っている人の投稿や動画を通して、使用感や使い方を具体的にイメージしやすいという特徴もあります。また、多くの情報に短時間で触れられるため、購入をまだ具体的に考えていない層にも商品を認知してもらいやすいチャネルです。個人の口コミやレビューといった、広告だけでは伝えにくい情報を届けられる点もSNSの強みといえるでしょう。
ただし、SNSで商品を知ったからといって、そこで得た情報だけで即購入に至るとは限りません。SNSをきっかけにしながら、検索や公式サイト、店頭などで情報を確認してから購入する人もいます。そのため、SNS活用時には、投稿や広告を見た人が次にどの情報へ進むのかを設計しておくことが重要です。
ブランド乗り換えのタイミングはいつ?

では、消費者が今使っているスキンケア化粧品から別の商品へ切り替えるのは、どのようなタイミングなのでしょうか。

最も多かったのは「今使っているものがなくなったとき」(48.5%)でした。
次いで「既存のものが合わないと感じたとき」が45.3%。さらに「バズっているのを目にしたとき」が35.8%、「気分で飽きたと感じたとき」が30.1%、「季節の変わり目」が29.4%、「新商品が発売したとき」が27.6%となっています。
ここで興味深いのは、SNSなどから商品情報を得ることが多くても、実際の買い替えでは、「今使っている商品を使い終える」という、とても日常的なタイミングが最も大きいことです。
これは販促を考える上で重要なポイントです。商品を知ってもらうことと、実際に買い替えてもらうことは同じではありません。例えば、自社の化粧水を使っていない消費者にSNS広告を見てもらい、商品を知ってもらったとしても、その人が今使っている化粧水がまだ残っていれば、すぐに購入するとは限りません。
だからこそ、「認知」と「買い替え」を分けて考える必要があります。
スキンケア化粧品のプロモーションの正解は?

ここで一つの仮説を考えてみます。
「SNSで商品を知ってもらう。そして、競合商品を使い終わるタイミングを狙って広告を出せばいいのではないか」
考え方としては合理的です。しかし、実際には「競合ブランドの商品をいつ使い終わるか」という個人の購買タイミングを、競合ブランド側から取得することはできません。そこで、競合商品のキャンペーンや新商品発売などが増える時期と、一般的な商品の使用期間などを参考にしながら、広告やキャンペーンのタイミングを設計する方法が考えられます。
もちろん、こうした考え方は一つの方法にすぎません。ここでさらに、回答を世代別に分けて見てみると、情報収集と買い替えタイミングの両方に違いが現れます。
世代による情報収集の違い

全体の回答をY世代とZ世代に分けて見てみると、情報収集の方法に違いがあることがわかります。
※ Z世代(1997-2012生まれ)、Y世代(ミレニアル世代、1982-1996生まれ)と定義して分類しています。

それぞれの世代全体に対してSNS全般を情報収集に利用すると答えた人の比率は、Y世代が55.5%、Z世代が63.5%。Z世代の方が8.0ポイント高く、SNSはZ世代にとって重要な情報源ということがわかります。一方、「Web検索・ネット全般・公式HP」は、Y世代が26.7%、Z世代が18.3%となっておりY世代の方が8.4ポイント高くなっています。つまり、Z世代が情報収集をSNSに依存している率が高い一方、Y世代ではSNSに加えて、検索や公式サイトなどにも情報収集の接点が広がっているということが言えないでしょうか。
さらに「実店舗・店頭・美容部員」も、Z世代11.5%に対してY世代16.4%と、Y世代の方が高くなっています。反対に、「友人・知人・リアルな口コミ」はY世代2.1%に対してZ世代5.8%で、Z世代の方が高くなっています。
Z世代はSNSで情報を得るだけでなく、自分にとって身近で信頼できる「人」からの情報も重視していると考えられます。SNS上の投稿や口コミであっても、発信者との距離の近さや、実際に使っている人のリアルな声が、商品への関心や購入意向につながる可能性があります。
一方、Y世代は、検索や公式HP、店頭・美容部員など、複数の情報接点を参照しながら商品を検討しているようです。商品の特徴や使い方、成分、肌悩みとの相性などを確認し、納得した上で購入する流れが考えられます。
SNSを活用する際にも、誰に向けて発信しているのか、どのような情報を届けるのかを意識することが重要でしょう。
買い替えのタイミングにも世代差がある

さらに面白いのが、買い替えタイミングです。買い替えのタイミングでも世代間のギャップが存在します。

「今使っているものがなくなったとき」は、Y世代49.0%、Z世代47.9%。ここには大きな差はありません。「既存のものが合わないと感じたとき」もY世代45.2%、Z世代45.4%で、ほぼ同じです。つまり、化粧品を使い切ったり、今の商品に不満を感じたりしたときに買い替えるという基本的な行動は、世代が変わっても大きく変わりません。
ところが、3番目の「バズっているのを目にしたとき」になると違いが出ます。Y世代33.1%に対して、Z世代は39.9%。Z世代の方が6.8ポイント高くなっています。一方、「季節の変わり目」はY世代31.4%、Z世代26.4%。こちらは、Y世代の方が5.0ポイント高い。
つまり、Z世代では「バズっている」という話題性が買い替えを考えるきっかけの一つになり得る一方、Y世代では「季節の変わり目」が比較的重要なタイミングになっています。
もちろん、このデータだけから「Z世代は流行にすぐ乗る」「Y世代は季節を重視する」と断定することはできません。しかし、販促を考える上で、同じ商品でも、誰に向けるかによって仕掛けるタイミングを変えるという発想につなげることはできます。
「世代×タイミング」でプロモーションを考える

では、実際の販促ではどう考えればいいのでしょうか。
一つの考え方が、「世代 × 情報源 × タイミング」です。
例えばZ世代向けの商品なら、SNSで単純に商品広告を配信するだけではなく、「話題になっている」「誰かが使っている」「自分も試してみたい」と感じられる情報設計を考える。SNS上でのインフルエンサーの口コミやユーザーのリアルな声、動画などを活用し、商品そのものだけでなく「人」を介して商品を知ってもらう。Z世代では、SNS上の話題性に加えて、身近な人や信頼できる発信者の情報が購入のきっかけになる可能性があります。新商品発売や限定商品など、話題が生まれやすいタイミングと、共感や口コミが広がるSNS施策を組み合わせるとよいでしょう。
一方、Y世代向けでは、SNSで認知を獲得した後の情報設計が重要になります。例えば、SNSで商品を知った人が検索したときに、公式サイトで商品の特徴や使い方を確認できるようにする。季節の変わり目には、「乾燥」「紫外線」「肌のゆらぎ」など、その時期に生じやすい悩みに合わせて商品を提案する。店頭や美容部員などのリアルな接点がある商品であれば、オンラインと店頭をつなげることが求められます。Y世代では、SNSで興味を持ってもらった後、公式サイトや美容部員などから、より確かな情報を確認できる導線を整えることが重要です。
このように考えると、同じ「SNS広告」でも、その後にどの情報へつなげるかによって役割は変わります。
Z世代には「話題・人・共感」を起点にする。
Y世代には「検索・公式情報・季節」を組み合わせる。
もちろん、これはあくまで今回の調査結果から考えられる一つの仮説です。実際の施策では、自社商品のターゲットやカテゴリー、価格帯、購入チャネルなどを踏まえて検証する必要があります。
「SNSを使う」ではなく「どう動く人なのか」を考える

今回の記事では、わかりやすくY世代とZ世代に分けて、情報収集と買い替えタイミングの違いを見てきました。
同じZ世代でも、SNSより検索を重視する人はいるでしょう。同じY世代でも、SNSで話題になった商品をすぐに試す人もいるでしょう。そのため、世代だけで消費者の行動をすべて決めつけることはできません。ただし、今まで「この商品はオールターゲット」と一つの括りにして広告を配信していた場合、このように世代によって情報収集や買い替えのきっかけに違いがあることを認識して、施策設計に生かしていくきっかけにして欲しいと思います。
今回のデータから考えたいのは、世代を分類することそのものではなく、
「どこで商品を知るのか」
「誰の情報を信頼するのか」
「どんな情報を確認して購入するのか」
「どんなタイミングで買い替えるのか」
まで見た上で、ターゲットごとに施策を細かく設計することの大切さです。特にスキンケア化粧品では、「商品を知る瞬間」と「実際に買い替える瞬間」が一致するとは限りません。
「SNSで話題をつくる」
「検索で詳しい情報を提供する」
「公式サイトで納得感をつくる」
「店頭で商品を体験してもらう」
そして、消費者が買い替えたくなるタイミングで選択肢に入る。
こうした一連の流れを設計することが、これからの化粧品プロモーションでは重要になってくるのではないでしょうか。「とりあえずSNSで広告を出す」のではなく、「誰に、何を、いつ、どこで届けるか」を考えることが大切です。
世代だけで消費者を一括りにする必要はありませんが、世代による傾向を手がかりに、情報源や買い替えタイミングまで細かく分けて施策を打つことで、広告の届け方はより具体的になります。今回のZ世代・Y世代の比較も、その一つのヒントとしてご参考になれば幸いです。
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