中期経営計画に基づき、ITを活用して通販・直営店舗チャネルが持つ強みを融合し、「ファンケルらしいOMO」を創造することで「お客様体験価値の最大化」を推進されているファンケル様。その強みやブランド価値を最大限に生かしたOMOの戦略と具体的施策についてご紹介する記事の後編です。
株式会社ファンケル通販営業本部コミュニケーション部の松本尚子様に、当社の制作担当ディレクターである石井純子と菊地祐樹が、通販と実店舗の連携や、お客様とのコミュニケーションのあり方などについてお話をお聞きしました。
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■ファンケルらしい、店舗との連携を実現する

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石井:ファンケル様の場合、通販だけでなく直営店などの実店舗も展開されていますね。店舗との連携は意識されていますか?
松本:お客様にインタビューしてみると、店舗の接客を通した感動体験がファンケルとお客様とのつながりの強化に結びついているケースが多く見られます。店舗ではスタッフがお客様お一人おひとりに合ったご提案ができますし、実際商品を手に取って確かめていただくことも可能です。通販と店舗が連携することで、お客様にさまざまな体験をしていただきたいと考えています。例えば、共同印刷様に企画から開発までご担当いただいた「パーソナルカラー診断」をきっかけに、来店につながることもあると思います。
石井:このコンテンツは私も制作に関わりましたが、メイクの仕方や自分に似合う色、カラーコーディネートなどがトータルでわかります。診断モノは、ついやってみたくなりますね。
松本:そうですね。実際とても人気で、2月のスタートから1カ月で約36,000名のお客様にご体験いただいています。そして今回の「パーソナルカラー診断」では診断結果とアイカラー、チーク、リップカラーなどの商品が紐付けられているので、「じゃあ買って試してみよう」と思われるお客様が多いようです。ご提案一式をまとめてご購入されるお客様もいらっしゃいます。
石井:制作側としてはうれしい限りです。
松本:OMOという視点で考えると、診断結果を持って店舗に行かれてもいいと思っています。実際に色を確かめることができますから。
菊地:なるほど。店舗で体験されることで、また新たな感動やつながりが生まれる、ということですね。やはりこうしたコンテンツは、ファンケルらしさをベースにしてつくるべきだと感じました。お客様のアクセスや購買といった結果に、よりつながりやすくなると思います。

「パーソナルカラー診断」
https://www.fancl.co.jp/beauty/coloranalysis/index.html

■65歳以上に、オンラインで新たな体験を

菊地:60代以上のお客様のデジタル活用状況はいかがでしょうか。
松本:デジタルへの移行が難しいお客様もいらっしゃいますね。そもそもお電話でのご注文のほうがお好きというお客様もいらっしゃるかと思います。デジタルをお使いいただくには、こちらから丁寧にフォローする必要がありますが、オンラインを利用できるようになると、いろいろな情報に触れる機会が増えますし、世界観が広がるのではないかと思います。ファンケルからももっとお客様の日常に寄り添い、日々の楽しみにつながるような新たなサービスをご提供できたらと構想しており、最近、社内にシニアプロジェクトが発足しました。新たなコミュニケーションの展開方法について模索しています。

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■紙媒体で培った情報制作スキルをデジタルに生かす

石井:貴社の化粧品の情報誌「エスポワール」は、商品情報はもちろん、季節にあわせた美容情報や生活に役立つお楽しみ情報まで、内容がとても充実していますよね。
そして、売り上げはもちろん、お客様がどのページに興味関心を持たれたのかや、
どの表現が良かったのか、わかりづらかったのかといった誌面の検証にも力を注いでいますね。
松本:はい。売り上げなどの数字面だけでなく、お客様のおハガキやWebアンケートの結果、美容相談室に寄せられる声などを確認した上で誌面評価を行っています。
菊地:そのレポートは当社も毎回拝見し、こちらの意見や対策などのコメントをお返ししています。お客様の声が、最新号に反映されることは多いですね。
松本:そうですね。例えば当社の洗顔アイテムはラインアップが豊富なので、お客様から「自分の悩みにあわせてどれを選べばいいのかわからない」というお声をいただいておりました。
そこで『エスポワール』に各商品の特徴や違い、どんなお悩みを持っているかたにおすすめなのかを整理した特集ページを掲載したところ、「疑問に思っていたことが解決できた」「とてもわかりやすい!」といったお声をたくさんいただきました。
反響が大きく、売り上げ計画の大幅達成にもつながりました。
お客様と向き合いながら検証と改善を重ねることは、とても重要です。そして、その検証結果を次の制作に生かすというPDCAを常に回しています。
石井:このPDCAにより、お客様が本当に必要としている情報を察したり、単に商品の良さをお伝えするだけでなく、お客様のインサイトをついた情報開発につながっているのですね。
松本: はい。情報をつくる、という仕事はとても大変ですが、情報誌の制作で培ったノウハウがあるからこそ、伝える場所がデジタル上になっても、良質な記事を生み出すことにつながっているのではないかと自負しております。

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■「ファンケルらしさ」で、感動を生み出し続ける

菊地: OMOの展開やお客様とのコミュニケーションにおいて、今後のビジョンはありますか?
松本:近年、デジタルコミュニケーションの量が増えています。この状況では、効率だけを重視した広告やコミュニケーションではますます埋もれてしまうのでは、と危惧しています。また、効率化を重視することで失われたものが大きいとも感じます。そこにこそ、本当に価値があったのではないかと…。
石井:もっと感情的な部分を大切にしたいということでしょうか。
松本:ブランドの「感情的価値」ですね。効率化の波に呑まれて他社と同じことをしていては、お客様に何も届けられません。ファンケルらしいコミュニケーションで感動を生み出し続けることが重要だと感じています。今まで築き上げてきた当社ならではの通販モデルや強みを、さらに磨いていきたいですね。
菊地:競合ブランドやほかの媒体と差別化し続ける必要性を強く感じます。
「いいコンテンツ」イコール「売り上げにつながる」ではなく、もっと本質的な価値を生み出すことを、長い目線で捉えつつ、短期的なトライ&エラーを繰り返しながら、取り組みたいですね。
石井:本質的で、感情的な価値。…そうですね。自分らしくあり続けたいお客様をファンケルはいつも応援している、という想いを込めたいと思います。
松本:コミュニケーションを通じて、お客様を肯定するような感覚。ずっと大切にしたいですね! そしてお客様に「ファンケルを使っていてよかった」と感じていただく、その積み重ねが「ファンケルが好き」につながっていくのではないかと思います。

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■まとめ

松本様がおっしゃっていた「感情的価値」こそが、ファンケルらしさの源なのだと実感できたインタビューでした。効果検証を重視するファンケル様は、その判断基準を「お客様に感動を与えることができたか」に置いていることも、松本様の発言から伝わってきます。
企業のOMOについてはまだ暗中模索の状態が続いているかと思います。しかしファンケル様のように、お客様視点でのPDCAを徹底する姿勢こそが、自社らしい手法を確立できるのではないでしょうか。
共同印刷では、コミュニケーション設計からコンテンツ制作まで、OMOの構築・運用も積極的にサポートしています。ぜひご相談ください。

株式会社ファンケル

通販営業本部コミュニケーション部 部長

松本 尚子

2001年入社。以来、ロイヤルカスタマー向けのサービス構築、販促企画、CRM、広告など通信販売に関わる業務を幅広く経験。現在は、化粧品・健康食品の会報誌の制作、ファンケルオンラインおよび「FANCL CLIP」の運営、メルマガ、各種SNSなど、多種多様な媒体の責任者として、未来を見据えたファンケルらしいコミュニケーションのありかたを模索中。

共同印刷株式会社

コミュニケーションデザインセンター コンテンツプロデュース部 チーフディレクター

石井 純子

広告制作会社にて、デザイン・アートディレクションの経験を積んだ後、2018年共同印刷株式会社入社。現在は情報誌をはじめとした化粧品通販媒体をメインに制作物全体を統括的にディレクション。エンドユーザーに寄り添った、幅広い視野でのクリエイティブ提案を行っている。ファンケル様では、化粧品情報誌「エスポワール」「コスミー」ほか、通信販売・店頭ツール関連の制作を担当。

共同印刷株式会社

コミュニケーションデザインセンター SPメディア部 ディレクター

菊地 佑樹

2009年共同印刷株式会社入社。多様な業種のWeb・スマートフォンアプリなどの設計・運用・制作ディレクションの実績を持つ。ユーザー視点に立ったユーザビリティ向上の表現方法提案やコンテンツ制作、さらにはテクニカル・サポート、運用管理までをこなす守備範囲の広さが強み。FANCL CLIPではWebサイト設計・構築計画を担当。

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