昨今、ビジネスにおける動画活用が活発化しており、販促活動から顧客サポート、採用、人材育成に至るまで、幅広い分野で取り入れられています。特に販促動画は、顧客の心を動かすために戦略的に設計することが求められます。しかし、実際には「流行っているから」「とにかくかっこいいものを作りたい」など、曖昧な理由で制作を進めてしまっていませんか?
設計図なしで建てられた家がもろく崩れやすいように、戦略なしで作られた動画も期待する成果につながりにくいものです。動画マーケティングを成功させるためには、消費者の心理に寄り添い、緻密に計算された「制作の手法と流れ」が必要です。
今回は、多くの企業の動画制作を手掛けている共同印刷のディレクター大畠航程に、成果を出すための動画制作の裏側にあるプロフェッショナルな設計プロセスを紹介してもらいます。
すべては「理解」から始まる

動画制作の第一歩は、カメラを回すことではありません。まず徹底して行うべきなのは、市場のトレンド、ターゲットの好み、そしてブランドイメージを深く理解することです。
具体的には次の方法が挙げられます。
ターゲット顧客の購入プロセスに応じたアプローチ
重要なのは、ターゲット顧客が現在、何に関心を持ち、どのような比較検討を行っているのかを具体的に把握することです。
そのためには、顧客の購入プロセス(見込み顧客育成ファネル)のどの段階にアプローチすべきかを明確にすることが重要です。
【顧客の一般的な購入プロセス】
(1)認知
商品やサービスを認知し、興味や関心を持ち始めた段階です。課題に気づいていない「潜在層」と呼ばれる層です。
(2)比較
商品やサービスへの興味関心が高まり、他商品やサービスと比べて検討している段階です。
(3)検討
選定した商品・サービスの購入や問い合わせを検討し始めた段階です。「顕在層」と呼ばれる層です。
例えば、動画配信の目的が、「まだ自社商品を知らない認知層に向けた認知拡大」である場合、エンターテインメント性を重視したコンテンツを制作し、興味・関心を惹きつけることも一つのアイデアです。
購買促進が目的であれば、主に比較層に向けた配信となるため、「インフォマーシャル」としてメリットを段階的に伝える方法が考えられます。インフォマーシャルとは、インフォメーション(情報)とコマーシャル(広告)を組み合わせた言葉で、テレビCMよりも詳細に商品・サービスの概要やメリットを訴求する広告手法です。
このようにして、目的に応じて最適な動画の種類と方向性を定めることが重要です。
顧客を「物語の主人公」にする

動画の種類と方向性を定めたら、次に内容を詳細に詰めていきましょう。
ブランディングや商品紹介を行う際、スペックや機能をただ羅列するだけでは、視聴者の心は動きません。重要なのは、「物語=ストーリー」です。
まずは顧客を物語の主人公として位置づけましょう。
効果的な動画は、主人公である顧客が直面している「課題」を明確に捉えることから始まります。
例えば、経理業務の効率化ツールを訴求する動画であれば、単に機能を説明するのではなく、「毎日の膨大な申請処理と戦う経理担当者」を主人公にし、金額ミスや領収書の不備といった「日常的な課題」を描写します。
そして、その課題を解決する方法として、経理業務を効率化するツールを登場させるのです。
「共感」と「信頼」を生むストーリーテリング

ストーリーを用いたストーリーテリングの手法は、単なる機能・スペック紹介動画と比べ、大きな効果を生み出します。
動画内では、主人公が抱える課題に対し、企業や商品・サービスが「信頼できるパートナー(導き手)」として登場します。
このストーリーテリングの手法により、視聴者は動画内の主人公に自分を重ね合わせ、「自分の悩みをわかってくれている」という深い共感を抱くのです。
さらに、その課題が見事に解決され、業務が楽になるなどの「成功の結末」を具体的に描くことで、より現実に落とし込んだイメージを持てるようになり、企業への信頼が醸成されるのです。
人間の本能を刺激する戦略的アプローチ

さらに一歩踏み込んだ動画制作では、心理学的なアプローチも取り入れます。ここでは、その手法の一部をご紹介します。
5段階の欲求を刺激する
人間には、生存に関わる基本的な欲求から、他者に認められたい、自己を実現したいといった高次の欲求まで、さまざまな段階の欲求が存在します。主に次の5段階に分類されるといわれます。
【5段階の欲求】
- (1)生理的欲求:生命維持に必要な食事・睡眠・排泄などの生命を維持するための欲求
- (2)安全の欲求:健康・経済的に安心して暮らしたいという欲求
- (3)社会的欲求:集団への所属や仲間の獲得など、社会への帰属に関する欲求
- (4)承認欲求:他者から認められたいという欲求
- (5)自己実現欲求:自分が満足できる自分になりたい欲求(1から4が満たされた状態で実現される)
これらの欲求を効果的に刺激する手法を用います。例えば、シニア層向けのトレーニング機器の訴求動画では、「健康になりたい」という安全の欲求を刺激するのはもちろん、「より快活に生活できるようになることで社会参加が促され、人から高く評価され、自己実現にもつながる」といった、より高次の欲求を幅広く刺激することが効果的です。
本能的な感情に応える
上記に加え、人間の本能的な感情を戦略的に刺激することで、視聴者の心をより強く揺さぶることが可能になります。
例えば、先のシニア層向けのトレーニング機器の例では、負荷が低く疲れにくい設計であることを訴求し、「疲れたくない」「苦労したくない」といった本能的なニーズに応えます。
このように、単に美しい映像を作るのではなく、ターゲットのどのような欲求や感情に響けば行動を促せるかを計算したうえでストーリーを組み立てるからこそ、記憶に残る動画が生まれるのです。
確かな設計が成果への近道
動画制作は、感性だけで行うものではありません。「市場理解に基づき、顧客を主役に据え、人間心理の深い部分にまでアプローチする」という一連の流れを論理的に組み立ててこそ、初めて人の心を動かす動画が完成します。
共同印刷の動画制作では、こうした消費者心理を活用したマーケティング戦略を実践しています。
顧客の課題を物語として描き出し、解決へと導く信頼のパートナーとして、確かな成果につながる動画作りをサポートします。
今回ご紹介した動画制作のアプローチは「オーダーメイドのスーツ仕立て」に例えられます。
「なんとなく」で制作する動画は、既製品のスーツをただ着せるようなものです。既製品では、サイズが合わなかったり、着る人の魅力が十分に伝わらなかったりすることがあるでしょう。
一方、今回の手法は、着る人(ターゲット顧客)の体型や好み(市場・心理)を細部まで採寸し、どのような場面(利用シーン)で一番輝かせたいかを計算して生地を選び、縫製するプロセスに似ています。
手間や戦略が必要ですが、その人に完璧にフィットした一着(動画)は、スーツを着用した時と同様に、見る人に強い印象と信頼感を与えることでしょう。
共同印刷株式会社
プロモーションメディア事業部 CD1部 ディレクター
大畠 航程
2009年共同印刷入社。フォトディレクターを経て、映像制作を学び映像ディレクターとして現在活動中。映像制作において、構成から進行、撮影ディレクション、編集まで包括的なディレクションを担当している。
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