人材の流動化、働き方の多様化、人的資本の情報開示の義務化などを背景に、多くの企業で重要視されているエンゲージメント
社員の「エンゲージメント向上」を実現させるには、社内コミュニケーションの活性化が不可欠であり、今改めて注目されているのが社内報です。
しかし、社内報の役割が高まるなか、専門的な人材の不足も叫ばれ、「編集業務効率化」が課題となる企業も増えています。

近年、よくご相談を受けるこの2つの課題の解決方法について、数多くの企業の社内報制作をサポートしてきたディレクター小林真也へのインタビューを通じて、前後編で探っていきます。

※エンゲージメント=社員の企業に対する自発的な貢献意欲。上場企業では人的資本の情報開示が義務化されるなど、社会全体で人的資本経営への要請が高まるなか、その指標となるエンゲージメントは社外のステークホルダーからも一層注目されるようになっています。

<ファシリテーター>HintClip編集長 杉山 毅

包括的サポート:年間企画から取材先調整まで編集全般をプロデュース

杉山:紙やWebの社内報は、その編集業務の煩雑さから、多くの企業が専門性の高い制作会社にアウトソーシングしていますね。小林さんは、そうしたお客さまの企画編集業務の支援をされていますが、何社くらいを担当されていますか。

小林:現在、6社を担当しています。主に外食業界の大手企業さまで、同じグループ内の複数社のインナーツールを担当させていただいています。発行形態や配付対象もさまざまで、月刊の社内報や季刊のグループ報などがあります。

杉山:業務の主な流れを教えてください。

小林:編集方針の策定、企画立案、コンテンツ設計、その後の制作進行管理まで、社内報・グループ報制作にトータルで携わっています。

特にお客さまとのやりとりが多いのは、年間企画や新規コンテンツの策定時です。社内報やグループ報では、「この月はこの企画を実施する」といった年間計画が決まっていることもあるため、その場合は切り口や見せ方を工夫します。
また、「今年はもう少し柔らかめの企画を増やしたい」といった、ご相談も多いため、その都度新たな提案を行い、お客さまと綿密な打ち合わせを重ね、企画を進めます。

実際の制作工程では、複数の案件が同時進行するため、同じチーム内の担当ディレクターと協力しながら、私は全体を統括するプロデューサー的立場を担っています。
お客さまに「何かあれば小林に相談しよう」と思っていただけるよう、 “常に状況を把握し、信頼される存在”であることを心がけています。

エンゲージメント:読まれる社内報づくり=エンゲージメントの向上

杉山:現在、企画面ではお客さまからどのような要望が多いですか。特に、企業が社員エンゲージメントを高めるための施策を実施するなかで、社内報の企画に対する課題は増えていますよね。

小林:「読まれる社内報にしたい」というご相談は、どの企業からも寄せられます。その背景には、「エンゲージメントを高めたい」という思いがあると感じています。

エンゲージメントを高めるには、まず会社を好きになってもらうことが大切です。そのためには、会社のことを知ってもらう必要があり、その役割を担うのが社内報だと思います。

杉山:確かに、「エンゲージメント」や「ワークライフバランス」「コンプライアンス」といった言葉は最近よく耳にしますが、以前から企業が抱えていた課題ですよね。
社会的にサステナビリティへの関心が高まり、我々制作会社に求められる役割に変化はありますか。

小林:人的資本を大切にしようという流れは、社内報にも影響を与えていると思いますが、本質的な課題は変わっていません。
社内報編集の仕事は、お客さまの人的資本の戦略に合わせて、編集企画を検討し、どう表現するのかを考えることです。
社内の人だけで進めてしまうと、考えが凝り固まってしまい、画一化することがあります。私たちのような外部スタッフの視点だからこそ見えてくる、課題感や表現方法が求められていると感じています。

伝えなければいけないことも、表現が難しくなりすぎて、読んでもらえなければ本末転倒です。また、エンゲージメントを向上させるためには、他部門の業務内容や人を知ることだけでなく、業界や社会の情報を知ることも不可欠です。
その役割までを社内報が担い、前向きに楽しく読んでいただけるような工夫が大切だと考えています。

ダイバシティ&インクルージング:多様な社員がいる前提のもと、コンテンツを考える

杉山:社内報が読まれているかどうかは、読者アンケートなどで判断されることが多いのでしょうか。

小林:アンケートを実施すると、多くの要望が寄せられるものの、批判的な意見はあまり見られません。また、回答者は毎回同じ方が多く、すでに会社に興味を持っている層に偏りがちです。そのため、関心が高くない層の本音はなかなか見えてこないのが現状です。

杉山:一般的に、従業員満足度調査を実施すると、同じ社内でも部門によって高低差が明確に出る傾向があります。
会社全体の情報を見聞きしやすい環境の部門の社員は満足度が高く、逆の場合は低くなる傾向があります。

会社の情報を見聞きしにくい社員に「実はうちの会社はこんな事業を展開したり、こんな制度があったりする」ということを知ってもらうのが、社内報の役割なのでしょうね。

小林:まさにおっしゃる通りで、会社の前向きな方向性や未来を伝えることこそ、社内報が果たすべき大きな役割だと思います。
アンケートに積極的に回答してくださる方や、社内報を隅々まで読んでくださる方は、もともと会社に関心を持っていますから、ある意味ではあまり心配はいらないのかもしれません。
しかし、そうではない層のエンゲージメントをどう底上げするかが、大きな課題だと感じています。

杉山:会社に対して興味を持っていない層を取り込むのは難しいですよね。どのような工夫をしていますか。

小林:「多様な社員がいる」というあたりまえを忘れずに、「画一的な視点でコンテンツを展開しない」というのが私の考えです。
社内報の読み方は人それぞれです。例えば「社員の趣味紹介」や「人事慶弔情報」といった柔らかい記事を中心に読む人もいれば、毎号すべての記事に目を通す人もいます。ですから、その読者層に対しどんな切り口や表現なら関心を持ってもらえるのかを考えることが大切です。

杉山:同じ会社でも、本社勤務の人と現場勤務の人では働き方が異なるため、読まれやすい記事の傾向も違ってきますよね。その点について、どのように切り分けて伝えているのか教えてください。

小林:私が担当している社内報については、どちらかというと現場に重きを置くことが多いので、休憩時間(20〜30分程度)で読めるものが求められています。
長い文章は避け、デザイン面でも視覚的・感覚的に伝わりやすい工夫をしています。

また、会社への関心が低い層は、本社でも現場でも存在します。そこで、社長メッセージのように、全社員に浸透させたい重要なコンテンツは、インタビュー形式の記事だけではなく、社長と社員が直接コミュニケーションを取る企画など、さまざまな工夫を凝らして提案を行います。

コネクトするメディア:企業と社員、社員と社員をつなぐ

杉山:社内報にはコンテンツを通じて、トップと現場のコミュニケーションを促したり、現場同士の交流を生み出したりする機能がありますね。
言い換えれば「企業と社員」「社員と社員」をつなぐメディアということですね。

小林:そうですね。それはまさに、社内報だからこそ実現できることだと思います。

先日、お客さまとお話ししていて、大きな発見がありました。
そのお客さまは、社内報のデジタル化を検討されていたので、まず社内報のアーカイブをイントラにアップして閲覧数を探ってみることをお薦めしたところ、閲覧数が一気に増えたそうです。

その理由を探ってみると、社内の飲み会で「新入社員紹介」のページを閲覧する社員が増えたことが要因でした。会社の状況を知るためにバックナンバーを閲覧することは、残念ながらあまりないと思います。
しかし、自分が何年入社でどの社内報に掲載されたかは覚えています。昔の社内報を遡って読みながら思い出話に花を咲かせ、自然と当時の会社の様子も振り返り、結果として閲覧数が増えたようです。

「こんな使われ方もあるのか」と、目から鱗が落ちる思いでしたね。

杉山:なるほど、「企業と社員」「社員と社員」をつないでいる。
それは、社内報が持つ、新しい可能性を感じさせるエピソードですね。

>後編では社内報づくりの負荷軽減のための工夫に迫ります。

共同印刷株式会社

プロモーションメディア事業部 コミュニケーションデザイン第1部 コンテンツプロデュース第1課

小林 真也

商業印刷部門の営業を経て2005年より現職。営業にて培ったコミュニケーション力を生かし、各種プランニングから販促系ツール・編集系ツールなどのディレクションを担当する。現在はプロデューサーとして、社内報・会社案内・統合報告書など、企業広報を中心に、お客さまの課題解決に向けた提案活動をおこなう。今年の目標は資格取得とラテアート。

共同印刷株式会社

プロモーションメディア事業部 営業推進部 ビジネスマーケティング課 HintClip編集長

杉山 毅

1982年共同印刷株式会社入社。商業印刷部門の企画営業を経て、1987年よりセールスプロモーション部門でクライアントの事業戦略・マーケティング戦略のプランニングから、広告・広報・販促の各種ツール・メディアのクリエイティブ・ディレクションを担当。2008年からコーポレートコミュニケーション部門にて広報、IR・総会、サステナビリティなどを部門長として担当。2017年の自社の創立120周年では、CIとコーポレートブランド再構築を含む周年事業を統括管理。2020年4月から現職。

私たちがお役に立てること 想いをカタチに 企画編集/クリエイティブ プロモーション活動の全体を俯瞰しながら、お客さまの求めるイメージを各種ツールへとカタチにします。 詳細はこちら

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