サステナビリティへの取り組みが投資家だけでなく、消費者や社員などすべてのステークホルダーに注目される時代になり、ブランディングにも、その理念を反映させる企業が増えています。
そこで今回は、サステナブル・ブランディングとは何か、どんなメリットがあり、どのように構築すべきかを、入門編として簡潔にまとめました。
HintClip編集長 杉山 毅
サステナブル・ブランディングとは
サステナブル・ブランディングとは、「サステナビリティ(持続可能な社会)」の考え方や取り組みに基づき、自社のブランディングを行うことです。
「独自性・らしさ」による他社との差別化や価値の向上という点は通常のブランディングと同様ですが、「社会・環境課題の解決」「社会への貢献」をより重視する点が異なります。
サステナブル・ブランディングの2つの目的
一般的に、サステナブル・ブランディングは以下の2つが目的として設定されます。
目的1:新たなブランドの構築・確立
「サステナビリティ」を中心的な軸として、新しいブランドの開発や既存ブランドの再構築を行います。
目的2:ステークホルダーからの共感・エンゲージメント
サステナブルな取り組みを「ブランディング」の一環として発信・表現することで、ステークホルダーからの共感を獲得し、エンゲージメントを高めます。
主に以下の効果を期待できます。
- ●消費者・顧客…ファン化、購買促進
- ●取引先…取引の活性化、円滑な事業活動
- ●従業員・入社希望者…優秀な人材の確保、社員エンゲージメントの向上
- ●投資家・株主…新規株主の獲得、適正株価の維持
サステナブル・ブランディングが求められる背景
サステナブル・ブランディングを取り入れる企業が増えている背景には、「SDGs」による社会全体の意識の変化があります。
17の持続可能な開発目標として世界的な課題が具体化されたことにより、問題意識が世間一般に広まり、消費者の行動変容が起こりつつあります。また消費者の関心は、自身の行動だけでなく、企業の事業展開や企業活動にも向けられるようになりました。
したがって、企業は持続可能な取り組みを行うだけでなく、それを消費者などに向けてアピールする必要が生じているのです。
押さえておきたい4つのポイント
この図は、サステナブル・ブランディングがどんな要素から構成されているかを図式化したものです。サステナブルな取り組みを行い、それを発信するだけでは、サステナブル・ブランディングは成立しません。企業活動全体にかかわる重要なエッセンスとして位置付け、計画的に展開する必要があります。
従って、サステナブル・ブランディングを実施する際には、以下のポイントを重視する必要があります。
ポイント1:企業理念やブランド理念とサステナブルな取り組みの方針をリンクさせる
サステナブル・ブランディングは、自社が現在掲げているミッション、ビジョン、価値観などの企業理念に基づいて構築する必要があります。
また、既存のコーポレートブランドやプロダクトブランドの理念との一貫性が重要です。
この点が乖離していると企業活動全体に一貫性がなくなり、期待する効果が得にくくなります。
ポイント2:事業活動とサステナブルな取り組みの方針をリンクさせる
ポイント1と同様に、製品やサービスなどの事業活動が、サステナビリティに配慮されていることが重要です。
サステナブルな製品・サービスを、ブランディングの構成要素として取り入れ、ステークホルダーとのコミュニケーションのキードライバーとして使うことも考えてみましょう。
例えば、生活者向け一般消費財のメーカーがパッケージの素材をプラスチックから再生紙に変更するといったケースも考えられます。
ポイント3:サステナビリティの理念との整合性
サステナビリティの方針、マテリアリティ、ESG、SDGsなどの理念との整合性は最も重要なポイントと言えます。
CSVやサーキュラーエコノミーといった取り組みも視野に入れてください。
社会・環境課題への取り組みの方針、具体的施策、目標などにも配慮して、ブランディングの要素となる理念を組み込んでください。
ポイント4:4つの構成要素を体系的に融合させる
企業理念、事業活動、ブランド、サステナビリティの4つの構成要素における理念や取り組みの整合性を配慮しながら融合させて、理念化・体系化させてください。
最終的には、これらの理念を明文化・図式化しておくことで、「サステナブル・ブランディング」活動に一貫性が生まれ、情報発信の際にメッセージ化やストーリー化がしやすくなります。
サステナブル・ブランディングの注意
サステナブル・ブランディングで注意したいのは「SDGsウォッシュ」「グリーンウォッシュ」と呼ばれる事態に陥ることです。
「SDGsウォッシュ」はSDGsに取り組んでいるように見えて、実態が伴っていないこと。「グリーンウォッシュ」は、環境に配慮しているように見えるが実態はそうではないことを指します。
自社のサステナブルな活動が「SDGsウォッシュだ」「グリーンウォッシュだ」と批判されると、それが誤解だったとしても、ステークホルダーからの共感が失われ、企業としての価値を損なう可能性があります。
しかし、理念に基づいてブレのない活動を行っている企業であれば、これらのトラブルが起きることは少ないでしょう。
こうした事態の予防策としても、サステナブル・ブランディングを正しく構築・継続することは有効と言えます。
まとめ:取り組み体制の整備が重要
サステナブル・ブランディングの概要を簡単に説明しました。
実は企業活動の根幹に関連することであり、その領域はとても広いことがおわかりいただけたと思います。
実際に取り組む場合には、経営企画、サステナビリティ、マーケティングなどの関連部署との調整を円滑に行いながら推進する体制が重要となります。
また、サステナブル・ブランディングをコーポレートブランドとして取り組むのか、プロダクトブランドとして取り組むのか。さらに、ブランドの開発や再構築段階から取り組むのか、コミュニケーション段階からの再構築なのかでアプローチ方法は変わってきます。
いずれの場合も、本格的に取り組むにはプロの手が必要となります。共同印刷は、全体戦略、社員への周知、社外への情報発信、効果測定など、さまざまな面をサポートしています。お気軽にご相談ください。
共同印刷株式会社
ビジネスマーケテイング部 HintClip編集長
杉山 毅
1982年共同印刷株式会社入社。企画営業、クリエイティブディレクターを経て、2008年からコーポレートコミュニケーション部門にて広報、IR、サステナビリティなどを部門長として担当。2017年の自社の創立120周年では、CIとコーポレートブランド再構築を含む周年事業を統括管理。2020年4月から現職。
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