近年、社内報について、よくご相談を受けるのが「エンゲージメント向上」と「編集業務効率化」という課題。
前編の「エンゲージメント向上」に続き、後編は「編集業務効率化」について、その解決策を探っていきます。
効果的な社内報を作りたくても、多くのリソースを割くことが難しい企業は少なくありません。そうした状況のなかで、効率的に編集を進めるためには何が求められるのでしょうか。
共同印刷で数多くの企業の社内報編集のキャリアを持つディレクター小林真也に話を聞きました。

※エンゲージメント=社員の企業に対する自発的な貢献意欲。上場企業では人的資本の情報開示が義務化されるなど、社会全体で人的資本経営への要請が高まるなか、その指標となるエンゲージメントは社外のステークホルダーからも一層注目されるようになっています。

<ファシリテーター>HintClip編集長 杉山 毅

運営体制:アウトソーシングと社内編集委員の活用がポイント

杉山:インナーコミュニケーションにマンパワーを割けないという実情を抱えているお客さまが多いですね。効率化に関するご相談は多いですか。

小林:はい、多いですね。広報部門には担当者が1~2名程というお客さまも多く、場合によっては1人で社内広報と社外広報を兼任されていることもあります。
社内報の編集だけを見ても、企画、取材、ライティング、レイアウト、印刷といったあらゆる工程を管理する必要があり、その量は膨大です。
当然、手が回らないので、私たち制作会社側で、編集方針を決めるところから始まり、年間企画の立案、各コンテンツの担当者との直接的なやり取り、取材先の調整、校正の依頼、ライティングまで、一貫してサポートするケースもあります。

杉山:効率を考えると、企業がアウトソーシングに頼るのは賢明ですね。
社内の情報収集で困っている担当者は多いかと思いますが、どのようなアドバイスをすることが多いですか。

小林:各部署に「編集委員」を設置して社員参加型にすることがお薦めです。
各部署で編集委員を選んでもらい、定期的に情報を提供してもらいます。この仕組みが参加意識を高めて、おのずと「社内報に掲載できるネタに気を配り、前向きに情報収集する姿勢」となります。

実際ある企業では、定期的に各部署やグループ企業の編集委員を集めた会議を開催しています。編集委員が集まっていると、「取材するなら、こういう人もいるよ」「こういう活動が始まっているので、ネタにしては」などと企画が点で終わらず、線でつながっていくことが多いです。

先手先手の対策:年間計画や連載企画など、早めに仕込みをしておく

杉山:企画段階や編集段階では、どのような工夫をされていますか。

小林:早めに仕込みをすることです。「年頭に次年度の年間企画を立案する」「連載企画を設け、まとめて編集をしておく」などの対策です。
早めに仕込みをしておくことで効率的に進めることができます。また、突発的な追加情報掲載など、緊急の案件が発生しても慌てずに対応できます。

また、撮影については「まとめ撮り」がポイント。
例えば、あるインタビュー撮影が決まった際に、改めて年間計画の編集台割をチェックして、同じ取材対象者が登場する企画があれば、そこでも使えるように別カットも撮影してしまいます。
執筆依頼のページで写真が必要な場合も、「まとめ撮り」の日を決めて、複数の対象者の撮影を済ませてしまいます。
写真を送っていただくこともありますが、できるだけカメラマンが撮影した写真でクオリティを維持したいですよね。

杉山:確かに、写真だけでも撮影しておくと、あとはライティングに集中できますし、メリットが大きいですね。

小林:もう一つ大きいのが、社内報担当者と年間計画を共有していることです。
「次はこの企画が動きます」「次にあの企画でインタビューをします」とアナウンスしやすい点です。
広報部門でマンパワーが足りていない場合は、どうしても編集の段取りが後手に回ってしまうことがあります。だからこそ、私たち制作会社が先に動いている姿勢を見せて、スケジュール面でも、しっかりサポートすることが大切です。

お客さまに広く入り込む:取材は広報以外の部署から情報を得る貴重な場

杉山:社内報のサポートを深めようとすると、よりお客さまに寄り添い、入り込んでいくことになりますよね。

小林:やはり、編集会議だけではなく、取材の現場に行くことも大切です。広報以外の幅広い部署の方々と直接お話しすることで、インタビュー内容を超えた情報を収集することができます。
そこで得られた幅広い情報や人脈は、新しい視点での企画や、次の取材先の候補を挙げたりする際に役立ちます。
また、社内報の編集企画は、「この分野ならこの人」という取材候補が固定化しがちです。しかし、読者側からするとマンネリ感を感じてしまいますよね。ですので、できるだけ取材対象者が偏らないように、取材候補者に関してこちらからご提案させていただくこともあります。

さらに取材の際にも、取材対象者の方に気持ちよくお話していただけるよう、楽しい雰囲気づくりを心がけています。親しくなることで、次の企画のネタになるような話題も引き出せたりします。

杉山:なるほど。提案の幅が生まれて、結果的に効率化にますね。

紙かWebか:「効率」と「効果」を考えて使い分けるポイントは

杉山:社内報をWeb化する企業も増えていますよね。
①紙だけ、②Webだけ、③紙とWebの両方、という3つのケースがありますが、小林さんが担当されている企業ではいかがですか。

小林:私も、紙とWebの両方の編集をしていますが、Webへの移行が進んでいる企業は増加傾向にあると思います。
ただし、紙とWebはそれぞれの特性が異なるというのが私の意見です。
紙の利点は、デバイスを介さずにいつでも閲読できる点です。仕事の合間に気軽に見ることができるので、情報がその場で横に広がりやすいというメリットがあります。
「社員の家族にも会社を好きになってほしい」という理由で、必ず紙で配付して家に持ち帰るように促している企業もあります。

杉山:併用するにしても、理解浸透を目的としたものは紙、そうでないものはWebというように使い分ける必要がありますよね。

小林:そう思います。例えば、社長メッセージや中期経営計画など、社員全員にしっかり読んでほしい記事は紙で。一方で、速報性が求められるものや、社員が登場するなど目を引きやすいコンテンツはWebが適していますね。
それぞれの特性を生かして展開していくことが、「効率」と「効果」を高めてくれると考えています。

社内報の未来形:多様なコンテンツで多様な社員をつなぐツールへ進化

杉山:今後、社内報の役割はどのように変わっていくと思いますか。

小林:働き方も自由になり情報もリアルタイムで共有できるようになった今、社内報は単なる情報発信源としての役割から、社員コミュニケーションやエンゲージメントを高めるという目的で、多様な社員をつなぐメディアへと進化していきます。
取り扱うコンテンツも、時代ごとの社会課題を反映して、より多岐にわたるようになっていくと思います。

杉山:今回は、いろいろと社内報担当者のために参考になる話が聞けました。
長時間ありがとうございました。

共同印刷株式会社

プロモーションメディア事業部 コミュニケーションデザイン第1部 コンテンツプロデュース第1課

小林 真也

商業印刷部門の営業を経て2005年より現職。営業にて培ったコミュニケーション力を生かし、各種プランニングから販促系ツール・編集系ツールなどのディレクションを担当する。現在はプロデューサーとして、社内報・会社案内・統合報告書など、企業広報を中心に、お客さまの課題解決に向けた提案活動をおこなう。今年の目標は資格取得とラテアート。

共同印刷株式会社

プロモーションメディア事業部 営業推進部 ビジネスマーケティング課 HintClip編集長

杉山 毅

1982年共同印刷株式会社入社。商業印刷部門の企画営業を経て、1987年よりセールスプロモーション部門でクライアントの事業戦略・マーケティング戦略のプランニングから、広告・広報・販促の各種ツール・メディアのクリエイティブ・ディレクションを担当。2008年からコーポレートコミュニケーション部門にて広報、IR・総会、サステナビリティなどを部門長として担当。2017年の自社の創立120周年では、CIとコーポレートブランド再構築を含む周年事業を統括管理。2020年4月から現職。

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