社内報を創刊あるいはリニューアルする場合、発行する目的や期待できる効果、基本方針などを策定したら、次は具体的な編集企画の立案に移ります。どんな記事を掲載したらいいのか、 誰もが最初は迷いが生じることでしょう。ヒントはあなたの会社内にあります。経営層は何を考え、従業員はそれをどう感じているか。社内報の位置づけから記事の考え方、見せ方のアイデアまでご紹介します。

1.インナーコミュニケーションにおける社内報の位置づけをチェック!

社内報のコンテンツを考えるとき、どのような留意点があるでしょうか?社内報はいうまでもなく会社内のコミュニケーションを活性化し、お互いの理解を深め、同じベクトルで目標にむかって進んでいくためのツールです。しかし、そのためのツールは社内報だけではありません。年始の社長訓示、階層別研修、朝礼なども会社の方針を伝える機会ですし、社内表彰制度やイントラネットを通じての情報発信もあるでしょう。企業によっては、企業理念や中期経営目標などを小さな冊子にまとめた「カルチャーブック」を携帯させて、日々の業務にどのように落とし込むか社員一人ひとりに考えさせるようにしているところもあります。

これらのツールと社内報の違いは何でしょう? それは、自分が働く組織や階層を越えたコミュニケーションがはかれることでしょう。普段は会うことがない経営層、まったく別の組織や海外拠点で働く仲間の「生の声」が聴けることが大きな特徴です。

また、もうひとつの違いは、社内表彰や階層別研修といった一過性のイベントを誌面に定着させて、幅広い読者がいつでも読み返せるようにできることです。こうすることで、社内報とそのほかのツールのシナジー効果を期待できます。

[社内報はさまざまな施策を共有・保存できるツール]

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2.自社のコミュニケーション課題を知ろう

どの企業にもインナーコミュニケーションの課題がありますが、あなたが知っているのは自分の周りで見聞きした、限られた情報だけかもしれません。そこで、幅広い情報収集が必要になります。

経営層の考えを知りたければ、社長や事業部長などの経営層に話を聞かせてもらえないか依頼してみるのがよいでしょう。誌面用のインタビュー記事という意味ではありません。社内報を企画するうえで方向性のヒントにするためです。同期入社や母校が同じ社員、社内サークルの仲間といった人脈もフル活用しましょう。社内にどんな課題があり、社員はどんな意識を持っているのか常にアンテナを大きく張っておくと、読者の心の琴線に響く企画につながります。もし、あなたの企業で社員意識の定点アンケートや、従来の社内報に対する読者アンケートを実施していたら、その結果も読み込み分析します。

3.課題解決&エンゲージメントを高めるコンテンツ事例

社内報には、その時々のトピックを深掘りする「特集記事」と、毎号同じテーマを掲載する「連載記事」があります。特集記事は、決算情報や中長期計画、新入社員紹介、大規模プロジェクト紹介、社員対象の定点アンケートなど、その時々で伝えたい内容を自由に編集してつくります。
これに対して「連載記事」は通年を通して同じテーマとするため、それぞれの企業が抱える課題の解決に寄与するテーマを選びます。ここでは、いくつかの実例を紹介しましょう。

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●世界中に工場を持つA社のケース

ある機械メーカーA社の課題は、グローバル人材の育成でした。国内工場のラインマネージャーが突然海外工場へ異動の辞令を受け、文化の異なる国の社員が働く工場の生産を軌道に乗せなければならない、といったことがしばしば起こります。英語が話せるという能力だけでなく、常に海外赴任を意識して働く必要がありますが、社内報で堅苦しい外国語講座を掲載してもあまり読まれることはないでしょう。
そこで、「世界の社食から」というタイトルで、「食事」という誰もが興味をひかれる記事を企画し、おいしそうな料理の写真を誌面に掲載しました。企画の入り口は社食のメニューですが、そこからそれぞれのお国柄や工場を稼働させるための苦労話などへ誘導。いつか自分も同じ立場になるかもしれない社員に、日ごろからグローバルな感覚を持たせることを狙っています。

●10年で再上場をめざしたB社のケース

B社グループは不祥事から上場廃止となり、経営危機をむかえました。会社再建にむけてメインバンクから新しい社長が就任し、10年後の再上場にむけた壮大なプロジェクトが始まりました。
それまでB社グループは、子会社同士の連帯感が希薄だったといいます。そこでグループの企業理念を定義し、その理念を簡単に解説した小冊子「カルチャーブック」をつくり、全グループ社員に携帯させました。また、グループ社内報では、グループ企業の社員が、その「カルチャーブック」に書かれている理念を日常の業務に落とし込んでいる様子を紹介。読者の自己啓発につなげるようにするとともに、誌面にはできるだけ多くの企業・社員を掲載しました。
さらに、ただそれだけでは退屈な誌面になってしまいがちなので、①職場紹介、②私の仕事術、③地域に貢献する、④お客さまからの「お褒めの言葉」といった4つの切り口にアレンジして掲載することにしました。

グループ社内報で紹介された社員をはじめ、グループが一丸となって企業理念の実践に努めた結果、B社は計画どおり10年後に再上場を果たしました。

●製造品質の向上が課題のC社のケース

C社は工場の組み立てラインにおける製造品質向上が課題でした。C社の製品は数多くのサプライヤーから納入された部品を組み合わせて作られており、組み立てにはそれらの部品をよく理解していることが大切です。また、サプライヤーに対してはC社が要求する品質がなぜ必要なのかを十分に理解してもらい、高品質な部品を納入してもらいたいと考えていました。そこで企画したのが、「匠たちの対談」という記事です。

C社の組み立てラインの社員がサプライヤー企業を訪問し、モノづくりのこだわりについて語り合うのです。無味乾燥な要求仕様書ではなく、血の通ったモノづくりのプロ同士が語ることで、品質の大切さ、相互理解が得られます。違う製品のラインで働く社員には、自社製品について幅広く知ってもらうことにもつながりました。

●M&Aで統合したグループの一体感醸成が課題のD社のケース

D社の製品は、もともと全国の地場企業がフランチャイズとなり製造・流通させていました。しかし、競合企業に打ち勝つためにはコストダウンと製造・流通の合理化が必要となり、東日本と西日本で複数の会社を統合、さらには、日本全国でひとつの会社としました。同じ製品の製造・流通を行っていたとはいえ、資本も文化もまったく異なっていた企業の集合体です。そこで、新しい企業理念を打ち出し、その浸透を図るためのツールとしてグループ社内報の発刊を決めました。工場・流通・営業拠点がすべて日本全国に散らばっているため、誌面ではできるだけ多くの拠点を紹介しています。豪雨災害で工場を移転しなければならない被害が発生したときは、遠い地方から応援部隊が支援に駆けつけたエピソードなども取り上げ、全社的な一体感の醸成に努めています。また工場では、使用する水の削減、事故撲滅などの目標値の達成状況とともに、新製品や新しい物流拠点の竣工、社内表彰者などを紹介する壁新聞を貼りだし、全国で目標達成に励んでいます。社内報のサブツールとして、こういった壁新聞の活用も検討したいものです。

4.読者を飽きさせないアイデアを

企業内、あるいはサプライヤーまでを含んだ多くのステークホルダーの相互理解を促進する社内報では、たくさんの社員などが登場して、自らの言葉で情報を発信します。しかし、同じような見た目のページがずっと続いたら単調で飽きやすい誌面になってしまうかもしれません。そこで、手をかえ品をかえ飽きさせない工夫をします。例えば次のような「見せ方」が効果的です。

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① ストーリー化でひきつける

企業理念に即した行動ですぐれた成果をあげた社員を紹介することは、知識や姿勢の水平展開に役立ちます。たとえば、接客業なら「お客さまからのお褒めの手紙」をいただいた社員を取材して、なぜそのような行動をしたのかというストーリーを語ってもらう記事を掲載します。お客さまとの接点がない職場でも、上長や同僚が「あれはGood Job!」と感じたことを手紙にして渡す仕組みを導入して、そのGood Job!がなぜ生まれたのかをストーリー化します。

② 誌面のバラエティ感を出す

社内報は文章と写真だけではありません。紹介したいことをまんがにしてもよいですし、手紙風、写真と短いコメントのフォトエッセイ、時系列のチャート、Q&A形式、川柳などいろいろな形式が考えられます。同じような見た目のページが続くと飽きられやすいため、変化が感じられる誌面にしましょう。また、拠点を紹介する記事なら「西と東」「北と南」といった2つの拠点の比較記事にすると、目先が変わります。

③ ダイバーシティを感じさせる

誌面のデザインだけでなく、紹介する社員もダイバーシティを持たせるとバラエティ感が演出できます。女性、外国人、若者&ベテラン、ハンディキャップをお持ちの方、地域、国など、さまざまなバックグランドを持つ社員が登場する社内報は、読者の興味をひきやすく、職場のダイバーシティやインクルーシブネスを高める効果が期待できます。

まとめ

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社内報はあなたの企業が独自に持つ課題を、インナーコミュニケーションという切り口から解決するためのツールです。企業ごとに課題が異なるように、100の企業があれば、100通りの社内報になるはずです。デザインが洗練されている、予算がかかっているという側面のみで評価するのではなく、いかにあなたの会社に「オーダーメイド」な内容になっているかが問われています。そのためには「何が自社の問題か」を常に感じとる機会をつくるように心がけるとよいでしょう。

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