オンラインとオフラインの融合が重視される時代において、リアルな顧客体験の価値はさらに高まっています。そこで今回は、店頭販促物や展示会ブースのディレクターを務める当社クリエイティブディレクターの熊谷啓太郎が、実際の売り場やイベントでの「リアルタッチポイント」の重要性や、当社が提供する店頭ソリューションについて語ります。

ファシリテーター:HintClip編集長 杉山毅

店頭販促物・展示会ブースのディレクターとして活動

杉山:現在の担当業務を教えてください。

熊谷:コミュニケーションデザインセンター(CDC)SPメディア部で、セールスプロモーション関連のディレクションを担当しています。

杉山:どのようなツール・メディアの企画制作を手掛けているのでしょうか。

熊谷:大きく分けると三つあります。一つ目は、製品ブランドを売り場で強調する店頭販促物、いわゆるPOPです。これがSPメディア部のメイン取扱品目となります。

二つ目は、当社の配信型デジタルサイネージ一体型什器「デジタルゴンドラ」の拡販業務です。開発段階から携わっています。近年、当社が注力している店頭販促施策です。

そして三つ目は、東京ビッグサイトや幕張メッセなどで行われる展示会イベントにおける、企業ブースの企画制作です。企画デザインから展示設計、全体施工、運営、撤去まで、ディレクターとして幅広く取り組んでいます。
最近では、一般消費者向けの販促イベントでも実績を積み上げています。

店頭販促から見た、オンラインとオフラインの「違い」

杉山:熊谷さんの現在の業務はオフライン、つまり店頭などのリアルな場がメインですね。一方、近年はオンラインでのマーケティングコミュニケーションが重視され、当社でも受注が増えています。オンラインとオフライン、二つのマーケティングコミュニケーションの違いを、どのように捉えていますか。

熊谷:オンラインは、現代における企業の情報発信の主力メディアです。これまでメインだったテレビCMと比べて、顧客の反応をデータとして測定できるという強みがあり、費用対効果も高いですからね。メーカー企業が顧客と直接コミュニケーションをとれる機会となるので、ブランドやサービスのファンづくりに活用している事例も見受けられます。顧客にとってもメリットの大きいメディアといえます。

一方オフラインは、大きく「店内コミュニケーション」と「店外コミュニケーション」に大別できます。

「店内コミュニケーション」では、私たちが請け負っているPOPの設置や、店頭キャンペーン、試食などの施策を通じて、顧客に直接働きかけることができる強みがあります。店頭でアンケートを実施するなど、顧客の声をダイレクトに収集できる機会でもありますね。

杉山:「店外コミュニケーション」は、具体的には何を指しますか?

熊谷:イベントや展示会、セミナーなど、売り場以外で行われるリアルタッチポイント施策です。コロナ禍では実施が難しかった施策ですが、最近は積極的に出展する企業が再び増えているようです。企業は言葉や表情で情報を直接伝えることができますし、消費者は商品やサービスを実際に体験できます。
したがって、「オンラインのメディア」と「オフラインの場所」、双方をうまく融合させたプロモーションの設計が今後はますます重要になります。

リアルタッチポイントを活性化させるには

杉山:最近はオンライン重視の傾向が強いですが、やはりリアルなタッチポイントも重要だということですね。

熊谷:そうですね。企画提案や制作の際は「CX(Customer Experience:顧客体験)」全体におけるリアルタッチポイントの役割をしっかり考えなければ、と日頃から意識しています。

杉山:オンラインで情報収集する人は多いので、オンラインとリアルとの連携は、より強く意識する必要がありますね。

熊谷:同意見です。もちろん、店舗で得られる情報も重要です。人が接する情報は膨大で検索しても求めている情報にたどり着けないケースも多々ありますが、店舗では実際に見て、触って、食べて…と、実体験から主観的な情報を得ることができます。これはオンラインより有意義な情報かもしれません。気になる食品はオンラインで調べるよりも試食したいですよね。

もう一つ重要な要素となるのが、「流通の課題を解決する」※という視点を持つことです。POPを制作する場合、メーカーと顧客の二者に意識が向かいがちです。しかしPOPを設置するのは流通=売り場となるため、流通側の意向を汲み取り、売り場にとってプラスになる視点を盛り込む必要があります。そもそも、「売り場の活性化・売り上げアップ」に貢献する企画を提案しないと、制作した店頭販促物が活用されないという現実があります。メーカー企業側は、この点にしっかり向き合い、対策を練る必要があります。

▶こちらの記事もご参照ください。
「リテール・インサイト入門」Vol.1 ~小売業の担当者の課題を理解する~

リアルな顧客体験を高める「三つの柱」

杉山:お話を聞いていると、店頭販促の世界も様変わりしていると感じます。そのような状況の中、当社は現在、メーカーなどのお客さまに対してどんなソリューションを提供しているのでしょうか。

熊谷:従来型POP以外では、三つの柱があります。
一つ目は、冒頭でもお話した「デジタルゴンドラ」を活用した新しい展示手法の提供です。複数のディスプレイと商品展示スペースを一体化することで、より魅力的でインパクトある売り場創出が可能になります。紙やプラスチックを使った使い捨て型となるPOPと違い、基本的に廃棄物が出ない「ゴミゼロ販促」を実現できるので、SDGsにも貢献できる環境配慮型施策といえます。

杉山:導入実績が増えているようですね。

熊谷:おかげさまで店頭検証導入を含めるとメーカー、流通、公共機関さまなど約50社にご利用いただいています。ある炊飯器メーカーさまでは、売り場での差別化施策として、全国の大手家電量販店に複数設置していただきました。動画コンテンツやポスター掲示物の差し替えが簡単に行えるので、長期間の使用にも適しています。

二つ目は「販促イベント」による新規顧客の獲得やファン育成です。大型の商業施設や展示会場などで開催する一般消費者向けのイベントですね。
製品・サービスの世界観を魅力的に表現することや、実際に触れて品質や価値を体験していただくことを目的とした、大型什器や試用コーナー、フォトスポットなどの企画から施工までを行っています。
ある海外化粧品ブランドの「ポップアップイベント」では、ゲーム性の高いサンプリングなどを行い、見込みを大きく上回る集客を成し遂げました。このように、ブランドの認知拡大に貢献することができた事例もあります。

また、ある飲料メーカーさまの「販促イベント」では、商品パッケージのデザインを生かした巨大なモニュメントを制作したところ、「ここで写真を撮りたい!」と注目を浴びました。

三つ目は、これも冒頭でお話しした「展示会イベント」によるリード獲得です。BtoC同様、流通向けのBtoBにおいても、リアルな場は効果的です。会場で製品の実物を見て触れたり、サービスを享受したりといった体験をすることで、商談も円滑に進めやすくなります。

コミュニケーションで、プロジェクト全体をリードする

杉山:店頭販促物のクリエイティブディレクターとして、心掛けていることはありますか?

熊谷:クリエイティブ面では、精度や品質を高めるために、社内外の関係者とアイデアを出し合い、緊密に連携して最適な提案に導けるリーダーシップが重要です。
プロダクション面においても、店頭販促物やイベント・展示ブースの場合、立体構造物を扱うので、材料選定や強度といった品質面・安全面は細心の注意を図るようプロセス全体を管理しています。
ディレクターの役割とは、お客さまの課題・要望を最大限叶えるために、プロジェクト全体を俯瞰して円滑に動かす「司令塔」だと考えます。

杉山:なるほど。コストやスケジュール面も含めて、プロジェクト全体を把握した上で、社内外の関係者とのコミュニケーションを深めて、チームをリードしていくわけですね。
最後に、今後の目標を教えてください。

熊谷:一つひとつの案件に全力で真摯に取り組み、お客さまにとって付加価値の高い販促施策やメディア・ツールを提供し続けていきます。
「次回の案件もぜひ、熊谷さんにお願いしたい!」と指名されるような存在になれるとうれしいですね。

共同印刷株式会社

コミュニケーションデザインセンター SPメディア部 チーフディレクター

熊谷 啓太郎

武蔵野美術大学造形学部を卒業後、2000年に共同印刷へ入社。商業印刷部門の営業、広告代理店に企画担当として常駐、当社アート&カルチャー部門での企画担当などを経て、2017年からディレクターとしてクリエイティブ部門に異動。企業カレンダーなどを担当する。2019年より現職。オンライン・オフラインの店頭販促、展示会・イベントなどを担当。

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