多くのカタログ担当者を悩ませる「ブランディングと売り上げの両立」という大きな課題。これを解決に導くのが、共同印刷のクリエイティブディレクター・白川 伸孝の提唱する「戦うカタログ」です。その「戦うカタログ」とは、一体何なのか。それはどのようなプロセスを経てつくられるのか。そして、私たち共同印刷のカタログ制作チームの強みとは何なのか。
HintClip編集長・杉山 毅が話を伺いました。
〈ファシリテーター〉HintClip編集長 杉山 毅
■お客さまと共につくる「戦うカタログ」
杉山:カタログというメディアは、近年ブランディングツールとして重視される一方、当然ですが「売り場」としてのミッションが重要です。これらを両立するためにはどうすればいいと考えていますか?
白川:個人的には、「戦うカタログ」を実現することだと思います。
杉山:かねてから提唱している考え方ですね。読者のために説明をお願いします。
白川:私が提案書によく使うキーワードで、「私たち共同印刷が、お客さまと共に戦っていくためのカタログ」という意味です。
さらに深い意味やそこに込める想いはお客さまの状況などによって大きく変わりますが、「私たちも、お客さまと共に戦いたい」という基本姿勢は変わりません。
例えば、何社もある競合他社のカタログのなかで、ブランド価値が伝わり、買いやすいことで、ユーザーに“選ばれるカタログ”になる。これも「戦うカタログ」の一つのカタチです。
杉山:なるほど。当社がお客さまと共に作り上げたカタログの内容や表現が、お客さまが競合他社と戦っていく上できちんと生かされる。だから「共に戦っていく」なんですね。
■〈戦うカタログ〉づくりは、オリエンテーションから始まる
杉山:「戦うカタログ」を実現するには、企画段階から徹底する必要がありそうですね。
白川:そうですね。オリエンテーションの段階から取り組みます。一番重視しているのが「熱量」の確認です。
杉山:カタログ制作に対する「想い」や「情熱」のことですか?
白川:そのとおりです。当社は常に「よりよいものを!」という熱い想いと共に提案や制作を行いますが、それが空回りすることがあるのです。多くの場合、原因はお客さまとの熱量の違いにあります。お客さまと私たちの間にギャップがあるようなら、彼らの熱量を少しずつ高めるための工夫をします。
杉山:なるほど。お客さまの気分を上げる企画提案をするということですかね。
機能的・実務的な面ではどうでしょうか。
白川:カタログの「使い方」をしっかり確認します。つまり、このカタログにはどんな役割があり、誰に、どのように使われるかを把握します。エンドユーザー向けなのか、営業担当者が小売店への営業に使うのか、販売代理店が使うことが多いのか…といったことですね。お客さまの「商流」をしっかり把握する必要もあります。これらによって、お客さまの課題の本質をより深く理解できるようになります。
■外には出さない「制作スローガン」を掲げる
杉山:オリエンテーションの次は、当社からお客さまに企画提案を行うことになりますが、この段階で行っていることは何でしょうか?
白川:必ず「制作スローガン」を提案書に盛り込んでいます。これは、実際にカタログにキャッチコピーとして出てくるものではなく、お客さまと制作チームが、カタログ制作の目的やゴールを共有するためのものです。これがあることでカタログ制作における「軸」が明確になり、迷った時などに適切な判断しやすくなります。
杉山:カタログ制作における基本方針のようなものですか?
白川:それを、いつでも思い出せるよう、もっとキャッチーにした感じですね。例えば、あるエンドユーザー向け美容サービスのカタログでは、「お客さまに最高のパスを出す」という制作スローガンを掲げました。「ターゲットがサービス利用を決意するために必要な情報を、ベストな状態で提供できるカタログ」という意味です。これにより、「最高のパスを出すカタログにあるべき姿とは」といった問題を考えやすくなります。
■「ポジショニング」からコンセプトをつくる
杉山:カタログコンセプトを開発する際は、どうしていますか?
白川:まず、ポジショニング分析ですね。「戦うカタログ」を実現するには市場競争力を高める必要があるため、市場におけるポジションを明確にし、それに基づいてカタログコンセプトを提案します。
杉山:企画提案段階で気をつけていることは、ほかにありますか?
白川:“論理性やマーケティングを重視するお客さま”には考え方を提案書で丁寧に展開しますが、“売り場の見せ方を強く求めるお客さま”には、最初に「クリエイティブの答え」をコンセプトとして提示し、ストーリー展開や見せ方のご提案につなげるようにしています。
■「イメージ」と「機能」を分け、尖らせる
杉山:コンセプトが決まったら、「戦うカタログ」としての具体的な表現ということになりますね。
白川:最初に全体の台割構成を作成し、パートごとの役割をお客さまにお伝えします。冒頭で杉山編集長がおっしゃっていたように、カタログには「ブランド価値の向上」と「売り上げへの貢献」の二つの機能があり、その両立はとても重要な課題です。これを実現するために、イメージをしっかり訴求する“ブランディング重視のページ”と、商品の機能を訴求する“売り上げ重視のページ”を分けて構成します。
杉山:そうすれば両立が可能になるだけでなく、それぞれの表現を高めやすくなりますね。
白川:そうですね。例えば、イメージページでは商品の色味の正確な表現よりも、その商品が持つ雰囲気を最大限に引き出すことを重視した撮影をします。一方、機能ページでは色味に忠実な撮影や、機能のわかりやすい写真表現などを徹底追求します。
■「ターゲット」に表現を最適化する
杉山:デザイン、コピーなどの表現面についてはいかがでしょうか?
白川:ターゲットに最も響きやすい表現を常に模索しています。例えばBtoCのカタログの場合、ターゲットが男性か女性かによって表現は大きく変わります。男性ならスペックを重視して機能を数値で伝えるソリッドな表現が刺さりやすいですが、女性は「ふんわり」「さらさら」といった、より感覚的な表現を好む傾向があります。性別に限らず、ターゲットがどんな表現を好むのかをしっかり把握した上で、カタログ表現に落とし込むようにしています。
■〈戦うカタログ〉は5つの“P”から生まれる
杉山:共同印刷のカタログ制作における「強み」とは何でしょうか?
白川:「ワンストップ」です。マーケティング段階から撮影、デザイン、印刷、配送まで、すべてのプロセスが共同印刷だけで完結できることですね。全体での意思統一をしやすいというメリットがあります。スケジュール管理やコスト配分に関しても、制作と製造の両面から調整できます。
例えば「製造コストを下げた分だけロケ撮影の回数を増やしましょう」といった、全体予算を配慮した「戦うカタログ」のための提案がしやすくなります。
杉山:企画制作面に絞り込むとどうでしょうか?
白川:私が所属する「コミュニケーションデザインセンター(※1)」が、優れたディレクター集団であるということですね。ディレクターたちは、デザイナーやコピーライターなど多くの、専門性の高い外部協力スタッフとネットワークを構築しています。
また、撮影については当社の「播磨坂スタジオ」などで、さまざまな得意分野を持つ社内カメラマンたちが担当します。
つまり「戦うカタログ」の実現に必要な能力を持ったスタッフを選りすぐり、その都度ベストな制作チームを編成できるのです。
杉山:「戦うカタログ」は、人、熱量、プロセスなど、さまざまな要素から成り立っているのですね。
白川:私は「5つの“P”」が必要と考えています。Passion、Person、Partnership、Purpose、Processの5つですが、やはり一番重要なのは人を動かす力である“Passion(熱量)”ですね。「戦うカタログ」は熱量から生まれる。そう信じています!
※1 当社でカタログなどのプロモーションメディアの企画制作を担当する部門の名称。
共同印刷株式会社
コミュニケーションデザインセンター コンテンツプロデュース部 ディレクター
白川 伸孝
大手印刷会社に入社後、独立してデザイン会社を設立。カタログ、雑誌を中心に店舗販促物、VMD、パッケージなどを企画制作。2016年共同印刷株式会社に入社。 カタログ、パンフレットのクリエイティブを中心に、撮影を含む企画制作から製造までの一元管理および効率化なども提案。中長期でクライアントのカタログのブランディングに取り組む。
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