カタログ制作における写真撮影。誰もが「良い」と思えて、かつ「売り」につながる仕上がりにするのは難しいかもしれません。しかし、共同印刷の自社スタジオである「播磨坂スタジオ」でカタログ撮影を担当するフォトグラファーの安 正孝はこう考えています。
「その“難しい仕上がり”を実現するのが自分の仕事。」
魅力的な表現で商品価値を訴求して、売り上げに貢献できる写真を撮るための秘訣とは? そして、お客さまの期待を超える写真撮影を実現するためのポイントとは?
そのヒントは「アスリート的」な発想や行動にあるようです。

〈ファシリテーター〉HintClip編集長 杉山 毅

■大型カタログにも対応する自社スタジオが強み

杉山:当社はカタログなどの販促ツールの撮影のために自社スタジオを保有し、フォトグラファーをはじめとする多くの撮影スタッフが社員として所属していますね。
安:撮影体制を設備面・人材面の両方から自前で確立できる広告代理店や総合印刷会社は、あまり多くありません。大きな強みだと思います。
杉山:安さんは主にどんな案件を担当していますか。
安:メディアで言えばカタログがメインですが、Webサイトや広告も担当しています。業種ではインテリア、美容・化粧品関連が多いですね。商品撮影もモデル撮影も、両方手掛けています。
杉山:当社は数ページのパンフレットから300ページ以上の大型カタログまで幅広く対応していますが、大型案件も担当しているのですか。
安:もちろんです。撮影点数が膨大になるため、複数のチームで担当します。そのうちの1チームで、私が撮るという体制ですね。

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■トップアスリートのごとく「準備」に全力を注ぐ

杉山:今回の記事では、「クオリティが高く、かつ“売り”につながる商品写真をどのように実現するのか」をテーマにしたいと思っています。安さんをはじめ撮影スタッフは、そのために大変な苦労をされていると思いますが、秘訣やポイントはありますか。
安:私は常に、商品撮影とはチームで動くスポーツのようなもので、私たちフォトグラファーはアスリートだと考えながら取り組んでいます。
杉山:撮影は感性だけではなく体力勝負なところがスポーツと似ていますが、そのほか撮影技術や心構えなどの面でも、類似点がありそうですね。
安:特に重視しているが、「撮影本番に向けて準備を万全にする」ということです。一流のアスリートは試合当日に向けて入念な準備をしますよね。フィジカル面の管理はもちろん、対戦相手を分析して戦略を練ったり、技術を高めたり。フォトグラファーも一緒で、その商品に対する理解を高め、お客さまがこの商品をどのようにアピールしたいのかを把握し、どうしたらそれを写真として高いレベルで表現できるか、その準備に力を注ぎます。
杉山:具体例を挙げることはできますか。
安:初夏の時期に、秋冬カタログの撮影をした際の例です。商品を窓辺に置いたカットを撮影するのですが、秋から冬にかけての、ちょっと空気が冷たく乾燥した感じを出したいというご要望がありました。
杉山:それを、夏の強い陽射しのなかで撮るわけですね。
安:冷たい空気感を出すために、少し青みがかった色調にしたり、陽射しの角度が低く感じられるようにしたり、窓外にわずかに枯れかかった感じの植物を置き、それがぼんやりと写るようにしたりと、さまざまな工夫を事前に計画し実行しました。期待された以上の仕上がりになったと思います。
杉山:お客さまからのそうしたご要望は、安さんが直接会ってお伺いするのですか?
安:そうですね。撮影会議には必ず出席し、お客さまとしっかりコミュニケーションします。商品も、可能な限り事前に実物をチェックします。自分で購入して試すこともありますよ。
杉山:事前にオリエン以上の商品価値を理解して、撮影イメージをつくる感じですね。
安:その通りです。ライティングなどあらゆる準備を万全にして、当日は、アスリート風に言えばプレイするだけ、つまりシャッターを切るだけの状態にするのが理想ですね。撮影本番では想定外のことが起こりがちなので、なかなか難しいですが(笑)。

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■お互いをフォローしあえる、理想のチームを実現する

杉山:撮影はディレクターやスタイリスト、ヘアメイクなどのチームで行いますよね。「チームワーク」についても話を聞かせてください。
安:個人的には、撮影に関わるすべてのスタッフに敬意を払っています。皆さんがクリエイターとしてプロフェッショナルであり、自分にはない感性や技術を身につけていらっしゃいます。お客さまのご要望に完璧に応えられる写真を撮るには、彼らの力が欠かせません。私一人では何もできない(笑)。だから全員にリスペクトする気持ちを忘れず撮影に臨んでいます。
杉山:チームとして撮影の指示系統はどうなっていますか。
安:私たちフォトグラファーは、サッカーで言えばフォワード。得点する役割です。
杉山:クリエイティブディレクターとのリレーションはどうでしょうか。
安:彼らはミッドフィールダー、つまりパスを回す役目だと思います。色々な立場のスタッフをつなぎ、取りまとめる立場ですから。そして、ほかのスタッフがディフェンダー。撮影の品質を守る役割です。
杉山:撮影の現場に限って言えば、フォトグラファーがディレクター的にチームを仕切ることもありますよね。
安:ディレクターがうまく動けないようであれば、フォトグラファーがその分動く。逆に、フォトグラファーやスタイリストなどに制約があれば、ディレクターがフォローに回る。お客さまの期待を超える撮影を実現するには、このように臨機応変に動けるチームが必要です。基本のフォーメーションがしっかりしていて、お互いをリスペクトしつつ、フォローしあえる。そんなチームなら、どんな撮影現場でも必ず勝てると思います。

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■チームワーク強化にもつながる「播磨坂スタジオ」

杉山:当社の「播磨坂スタジオ」についても話を聞かせてください。このスタジオにはどんな特徴がありますか?
安:まず、いわゆる「専門スタジオ」ではないという点ですね。多くの場合、撮影スタジオは人物専用だったり、物撮り専用だったり、料理専用だったりと目的に特化していることが多いのですが、播磨坂スタジオはさまざまな用途に柔軟に対応できる設計になっています。
杉山:そうですね。これだけ多用途に使える大型スタジオは珍しい。
安:ロケーションも大きな特徴だと思います。山手線の内側にこの規模のスタジオがあるのは大変貴重ですし、何よりも共同印刷の本社に隣接しています。つまり、撮影チームと本社の営業担当者やクリエイティブディレクター、プリプレス部門などのコミュニケーションが取りやすいのです。

■お客さまのビジネス視点で撮影ができる「フォトグラファー」へ

杉山:最後に、今後のビジョンをお聞かせください。
安:共同印刷という企業に所属するフォトグラファーとして、お客さまの、そして当社のビジネスを理解した上でシャッターを切り、チームを動かしていきたいと思います。
杉山:「カメラマン」と「フォトグラファー」の違いは何でしょうかね。
安:カメラや照明を扱う職人的な技術と体力があり、かつ表現者として優れたセンスを持ち、写真が掲載される媒体の役割や目標も理解している。それが私の考える「フォトグラファー」です。お客さまの期待以上の撮影を実現するためには、フォトグラファーであり続けなければと思っています。
杉山:話を伺っていると、安さんはクオリティ的にも商品の売り的にも「お客さまの期待を超える撮影」にこだわっていることが強く伝わってきます。
安:私は常にお客さまの期待値の100%以上の写真を撮って、お客さまのビジネスに貢献したいのです。そのために必ず、120%、150%の準備をするように心掛けています。
杉山:万全な準備により、単にシュートを決めるだけではなく、観客を魅了するファンタジスタをめざすということですかね。
安:そうですね。これからも、アスリート発想のフォトグラファーとして、お客さまの期待を超える撮影を続けていきたいと思います。

共同印刷株式会社 播磨坂スタジオ

共同印刷株式会社 播磨坂スタジオ フォトグラファー
安 正孝(ahn junghyo)

1978年 韓国ソウル生まれ。
2009年 日本大学芸術学部写真学科卒業
2009年 芸術学部長賞受賞作品
2009年 共同印刷播磨坂スタジオ入社
2017年 APA正会員
化粧品、家具、アパレル、家電、住設機器、食品など、幅広いジャンルの広告・販促物のフォトクリエイティブを担当。


播磨坂スタジオ

https://harimazakastudio.com

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