プロの編集者に聞く エンゲージメント向上のためのトップインタビュー成功術

自社の理念や価値などを経営者が自分の言葉で伝える「トップインタビュー」を、社員や顧客、投資家などのステークホルダーのエンゲージメント向上に生かしたいと考える企業が増えています。
そこで今回は、経営者を中心に700人以上のトップインタビュー実績を持つ編集者の米津香保里さんに、ご自身の方法論や広告・広報・販促などのプロモーション担当者が押さえるべきポイントについて語っていただきました。

ファシリテーター:HintClip編集長 杉山毅

■Purpose
自社の存在価値を、トップ自身の言葉で語ることが大切

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杉山:米津さんは、どんな経緯でトップインタビューをされるようになったのですか。
米津:もともと私は書籍編集者ですが、中でもビジネス書に携わる機会が多く、その縁で大規模な「ビジネス商談会」に参加したことがありました。そこで多くの日本企業を拝見し、「魅力的な商品を持っているのにアピール下手な会社が多い。日本企業は発信力に課題がある!」と気づきました。この経験をきっかけに、ビジネス書制作のスキルを使って企業のトップをインタビューしコンテンツ化する仕事に取り組むようになりました。
杉山:なるほど、トップの考えや想いを言語化・コンテンツ化するのが米津さんのお仕事というわけですね。米津さんは、トップインタビューにはどんな役割があるとお考えですか。
米津:トップは自社を代表し、全責任を負う存在。社会と企業をつなぐパイプのような役割を担えると思っています。
杉山:近年重視されている「パーパス経営」につながりますね。
米津:そうですね。その企業の存在意義を伝えることは非常に大切です。企業内でトップほどこれらを語るのにふさわしい人はいません。

パーパスを頂点とする企業理念の体系化・言語化が重要

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■Engagement
トップの「響く言葉」がエンゲージメント向上につながる

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杉山:トップインタビューをコンテンツ化する際、米津さんが特に重視していることを教えてください。
米津:トップの「響く言葉」を伝えることですね。近年「刺さる言葉」という言い方をよく耳にしますが、私は一時的にインパクトを持つ「刺さる言葉」より、発言する人の深いところから湧き上がり、受け取る人の深いところへ届く、そんな言葉のほうが場を動かすエネルギーになると思っています。
企業の社会的役割の大切さに気づき始めた時代、そうした本質的な言葉のほうが、ステークホルダーとの信頼関係を構築できるのではないでしょうか?

杉山:そうですね。サステナビリティ経営が広く社会に浸透し、企業には非財務情報の開示が多く求められるようになりましたが、この点においてもトップの声は重要…というより「必須」ですよね。
米津:だからこそ、どう発信するかが重要です。借り物の言葉ではエンゲージメントも高まらないと思います。

■Session
「質問」という道具で、企業の魅力を引き出す

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杉山:米津さんは外部の編集者・ライターとしてトップインタビューに関わるわけですが、その際の「心得」はありますか。
米津:「自慢話を引き出すこと」を意識して質問しています。先ほどお話したように、日本企業の多くは発信が苦手です。自分たちは何をめざしているのか、何を得意として、これまでどんなことをしてきたのか、そういった自社の強みをオープンに語っていただきたい。原稿化するときに「自慢話」と受け取られないよう調整しますし、私のような外部の人間のほうが、その点は話しやすいとも思います。
杉山:「質問」という道具を使って、トップの心の中にある、その企業の魅力や強みを見つけ出すのですね。
米津:そうですね。そのためには、トップがインタビュアーに心を開く必要があります。
杉山:どのようにして心を開かせるのですか。
米津:私は水準とノリを合わせるように意識しています。
杉山:「水準」とは?
米津:トップに「このインタビュアーは自分が話すに値する人間だ」と思っていただけるよう、その企業やトップについて予習して臨んでいます。
杉山:「ノリ」はどういう意味ですか。
米津:相手の人柄やその日の気分に合わせることです。ジャズの「セッション」のように相手と波長を合わせられれば最高ですね。
杉山:トップが気持ち良く話せる「場」を整えるわけですね。
米津:もう一つ、「キーワードに対してアンテナを立てること」も意識しています。頭をフル回転させて「その人ならでは」の言葉を見つけます。見出しに使いたくなるキーワードを発見できると、「面白い原稿をつくれる!」と確信できますね。

■Producer
プロモーション担当者は、トップのプロデューサー役

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杉山:トップインタビューを行う際、プロモーション担当者にはどんな役割があるでしょうか。
米津:「トップのプロデューサー」という役割意識をぜひ持っていただきたい。トップも人間ですから「この話は理解されるだろうか?誤解されないだろうか?」と内心迷いが生じています。どんな優秀な人でも自分のことを客観視するのは難しい。ですからプロモーション担当者はトップを支える意識で関わってほしいのです。
杉山:そのためにはどんな準備が必要ですか。
米津:最初に「外部人材選び」ですね。トップインタビューの経験が豊富で信頼できる編集者・ライターを選ぶことが大切です。
杉山:そうですね。会社のトップと直接お話しをするわけですから、担当者としては、発注する編集者・ライターの能力だけでなく、マナーやバランス感覚、柔軟性などもチェックしておきたいですね。他にはどんな準備がありますか。
米津:テーマに応じて資料や過去の記事、トップのための手元資料などを用意して、関連部署や編集者・ライターと打ち合わせをしておくと、良い記事に仕上がりやすくなります。
あと、日々の業務を通じてトップの考えを理解しておくと、想定外のインタビューになっても慌てずにすみますね。
杉山:私も、広報部門にいた頃にトップインタビューを何回も経験しました。そのときは、広報担当者とトップとの、日常的なコミュニケーションの蓄積がとても役立ちました。
米津:確かにそれも重要ですね!
杉山:日頃から「社長語録」を頭に入れておけば、「響く言葉」や「キーワード」を聞き出す際に、良い助言ができると思います。

■Consistency
トップの言葉に必要なのは「一貫性」

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杉山:最後に、米津さんがトップインタビューの目的や、掲載する媒体ごとに配慮しているポイントがあれば教えてください。例えば、目的は「自社ブランディング」「販売促進」「リクルーティング」などがあると思いますが。
米津:もちろん目的ごと・媒体ごとの原稿の作り方は重要ですが、「一貫性」はもっと重要です。ブレた言葉では、ステークホルダーに伝わりません。どの記事も同じ本質が見えるのが理想です。
杉山:なるほど。自社のパーパス、ビジョン、ミッション、バリューなどを言語化・体系化しておくことが大切ですね。
米津:そうですね。日頃から社内で自社の価値観を共有しておくと、トップの言葉のエネルギーも高くなります。経営哲学などトップ自身の価値観も含めて整理できているとどんな媒体でも話しやすくなります。
杉山:米津さんのお話を伺っていると、トップが抱いている想いや誇り、そして情熱を大切にされていると感じますね。そして、とても楽しそうです。
米津:トップをインタビューしていると、どんなにシンドイ課題をお持ちでも皆さん話しているうちに生き生きしてくる。そうした姿から私自身も力をいただいてきました。
杉山:そうすることで、人間性も引き出すわけですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

トップインタビューの主な目的と活用媒体

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米津 香保里

株式会社スターダイバー代表取締役
米津 香保里
書籍編集者 兼 出版プロデューサー 兼 経営者の担当編集者。ビジネス書や自己啓発書を中心に出版プロデュースに従事。手がけた書籍は約200点、ロングインタビューを実施した経営者は700人以上。「経営者の担当編集者」として、経営者の言葉をブランディングの要に変換する新しい広報モデルを展開している。

共同印刷株式会社

共同印刷株式会社 ビジネスマーケテイング部
Hint Clip 編集長 杉山 毅
1982年共同印刷株式会社入社。商業印刷部門の企画営業を経て、1987年よりセールスプロモーション部門でクライアントの事業戦略・マーケティング戦略のプランニングから、広告・広報・販促の各種ツール・メディアのクリエイティブ・ディレクションを担当。2008年からコーポレートコミュニケーション部門にて広報、IR・総会、サステナビリティなどを部門長として担当。2017年の自社の創立120周年では、CIとコーポレートブランド再構築を含む周年事業を統括管理。2020年4月から現職。

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