「AIを積極的に業務に活用しよう!」と言われること、最近増えてきていませんか?
でも実際のところ、「活用できているのかな」「活用しきれていないんだよね」というのが多くの方の実感ではないでしょうか。今回は、「販促」あるいは「販促支援」といったビジネスシーンにおいて、業務やサービスの価値向上につながるAI活用とはどのようなものかを考察してみたいと思います。
ひと口に「販促にAIを活用」と言ってもその業務は多岐にわたるので、「社内業務」「クライアント業務」「消費者向けサービス」の3つの領域に分類して見ていきましょう。
社内業務の効率化(ミーティング資料作成やリサーチなど)

プロモーション企画や販促施策立案では、「ゼロから考える」「情報を整理する」といった業務に多くの時間が費やされますが、例えば以下のような業務の作業効率は、対話型AIの力を借りることでかなり向上します。俗に「壁打ち」と呼ばれていますが、自分のアイデアや疑問をAIに投げかけ、返ってきた意見や逆質問をもとに考えや情報を整理していく手法です。
- ・ 企画テーマや切り口を広げるためのアイデア出し
- ・ 市場動向や競合事例を短時間にリサーチして情報を整理
- ・ 提案内容を体系的に整理した企画書作成
- ・ コピー素案やデザインラフなどのドラフト案作成
もちろんAIの回答をそのまま利用するわけではありません。
AIは、事実と異なる情報をもっともらしく提示する「ハルシネーション(*1)」を起こすことがあります。また、良くも悪くも平均点レベルの回答にとどまりがちです。企画にオリジナリティを持たせるためには、提案者ならではのアイデアや視点を付加することも大切ですし、自社のブランドポリシーやガバナンスと整合しているかなど、最終的な品質判断は人間がしなければいけません。「完成品を作るツール」としてではなく、「優秀なアシスタント」として利用するのが適切でしょう。
*1 ハルシネーション
十分な情報が無い場合でも、存在しない本や論文、架空の統計データなどを「それらしい答え」としてAIが生成してしまう現象。回避するためには、公式サイトや公的資料など複数の情報と照らし合わせるなどの対策が必要。
クライアント業務の価値向上(企画制作サービスの品質向上)

AIは、自社内の業務だけでなく、クライアントに提供するサービスにも変化をもたらしています。
以下は、私たち共同印刷がAIを導入(または導入予定)しているサービス例です。
画像・動画生成AI
デザインのパーツや素材として広告ビジュアルや販促ツールに利用するだけでなく、クライアントに成果物として提供することもできます。
- ・静止画に動きを加えて動画化
- ・食品や料理の写真にシズル感を演出
- ・モデルの着こなしを回転して見せる360度ビュー
- ・1枚の服の画像から人物が着用している画像を生成
- ・複数の静止画像をもとにショートドラマを生成

AIモデル(人物モデル)
AIモデルは、人間に代わって服や雑貨の着用イメージを再現したり、商品・サービスのガイド役を担ったりするバーチャルな人物モデル・人物キャラクターです。服装・髪型・ポーズ・背景・年齢・雰囲気など、ブランドの世界観や想定ターゲットにマッチした容姿を再現できます。
ただし、想定したクオリティのAIモデルを生成するには、一般的な画像生成AIに比べてやや高度なプロンプトテクニック(*2)が必要です。また商用利用では「消費者に誤認を与えないか」「著作権や肖像権をクリアしているか」などのチェック体制も不可欠です。
*2 プロンプトテクニック
AIに「何をしてほしいか」を伝えるための質問文や指示文をプロンプトと言います。入力内容によって回答が変わるため、プロンプトテクニックはAI活用に不可欠なスキルとされています。最近では、AIから望ましい回答を導き出す指示文を作るAI対話の専門職のことをプロンプトエンジニアと言います。

完全プライベート型ローカルLLM
ローカルLLM(大規模言語モデル)とは、外部に流出させたくない機密情報や社内ナレッジを安全に活用できる「自社環境(オンプレミスなど)に構築する」生成AIです。ローカル環境内に蓄積されたデータのみを参照するAIのため、ハルシネーションも起こしづらく、データが蓄積されるほど回答品質が向上していきます。営業資料作成支援や社内ナレッジ検索といった業務をサポートするツールとして、情報管理を重視する企業で活用が広がりつつあります。
共同印刷では、完全プライベート環境で動作するローカルLLMの実証実験を2025年にスタート。金融・製造・医療といった分野への自社専用ナレッジ共有システムとしての提供を視野に入れて開発を進めています。

AI-OCR
お客さま企業からお預かりした紙の請求書・申込用紙・アンケートなどの情報をデジタル化するサービスです。従来は人力作業でパンチ入力をしていましたが、AI-OCRによって自動化されたことで電子化コストが大幅に軽減。人手不足に左右されないスピーディかつ安定した品質でデータ納品が可能になり、事務局業務のアウトソーシング需要の拡大にもつながっています。
AIデジタル校正
従来の校正は、人が目視で行い、人の手で赤入れ(*3)するのが基本でしたが、校正担当者の経験・スキルによる校正品質のバラつきなど人力作業ならではの問題点も指摘されてきました。近年は、一定のルールに基づく差分や不備の自動検出を得意とするAIデジタル校正を導入することで、「赤字の抜け漏れ防止」「修正漏れの低減」を実現。人間が見落としやすい部分をAIに任せ、人が見ないと気付きにくい部分は「人の目」でチェック。すべてをAIに頼るのではなく、デジタルとアナログを「併用」することでコンテンツ品質を高めています。
*3 赤入れ
文章やデザインなどの間違いを直したり、改善したりするための指示を赤ペンで書き込む作業
このようにAIは、従来人手に頼っていた業務の効率や品質を飛躍的に向上させてくれますが、その一方で注意すべき点も当然あります。特に画像生成AIや文章生成AIで生成したコンテンツを利用する場合は、「第三者の著作権や商標権などを侵害していないか」「利用規約やライセンス条件を満たしているか」といった点を慎重に見極めなければなりません。AI活用を進める企業では、法務部門のリソース拡充、また社員のコンプライアンス教育の強化にも並行して取り組んでいく必要があるでしょう。
消費者向けサービスへの組み込み(新たな顧客体験の創出)

AIは、業務効率化だけでなく、消費者との接点そのものも変え始めています。
実際に社会実装されている例を見てみましょう。
AIレコメンド
AIがユーザーの行動や属性を分析し、「この人は今、これを必要としている可能性が高い」と予測して商品や情報を提案する仕組み。
従来ある「この商品を見た人はこれも見ています」のようなレコメンド機能よりも精度の高いパーソナライズ体験を提供。ユーザーの反応を学習し続けるため、使えば使うほど精度が向上する点が特徴です。

AIチャットボット
AIが顧客と対話しながら質問に答えたり、アドバイスしたりしながら買い物や各種手続きを進める仕組み。
従来のチャットボットは、あらかじめ用意されたシナリオやFAQに沿って応答するものが中心でした。LLM(大規模言語モデル)や自然言語処理技術が組み込まれたAIチャットボットは、ユーザーの質問の意図を理解して柔軟に回答したり、会話の流れに応じた適切な提案をしてくれたりします。

まだ仕事に活用できていないという方でも、このような消費者向けサービスを利用したことはあるのではないでしょうか。
AIは、2022年のChatGPT公開をきっかけに一気に注目されるようになり、近年は「AIをプロモーション戦略にどう生かすか」が企業にとって大きな課題になっています。しかし社会に浸透しつつあると言っても、企業がAIを商用利用するにはまだ実験的・挑戦的な面があることも事実です。AI活用の推進には、AIに精通しているだけではなく、「どのように活用すれば目的にかなった成果が得られるか」という視点。またそのための要件把握力と発想力を持つ人材が不可欠です。
例えば以下のWebサイトは、「訪問されたお客さまが自分ごと化できるようなウィッグ着用イメージの写真をできるだけ多く掲載したい」というご相談を受け、共同印刷が近年注力している画像生成AI技術を活用して制作した事例です。
このプロジェクトでは、フォトグラファーをプロンプトエンジニアとして起用。撮影・写真の専門知識を生かしたプロンプトを駆使してAIモデルを生成し、商用利用の要件を満たすプロダクト品質はもちろん、ウィッグ購入者のニーズにきめ細かく対応したクリエイティブ品質を実現しました。
ウィッグで叶える私のHair Style Collection(株式会社アデランスさま)
関連記事:【アデランスの画像生成AI活用】効率性×創造性で「顧客接点」を進化させる
https://hc.kyodoprinting.co.jp/article/3135/
まとめ:AI時代に求められるのは「使いこなす発想力」
AIは今後も急速に進化し続けるでしょう。しかしどれほど高性能なAIが登場しても、「どんな業務にどのように活用すれば価値を生み出せるか」を考えるのは人間の役割です。これからは、「AIを仕事のパートナーとしてどう活用するか」という発想力が、企業や個人の競争力を左右する時代になっていきます。
その発想力を身につける一番の近道は、実際にAIを使ってみることです。まずは「壁打ち」で頭の中を整理したり、ちょっとした調べ物をお願いしたりするなど、日々の業務のなかの小さなことから試してみてはいかがでしょう。実際に使ってコツをつかんでいくうちに、新しいアイデアや業務改善にきっとつながっていくはずです。「AIでこんなこともできるのでは?」という新たな発想のきっかけをつかんでいただけるとうれしいです。
共同印刷株式会社
プロモーションメディア事業部 販促企画部 チーフプランナー
菅田 賢司
テレビ局ディレクター、インターネットポータル会社の企画営業・Webディレクターを経て、2012年に共同印刷へ入社。以後、10年以上共同印刷のデジタルマーケティングを推進している。Web広告の運用だけではなくWebサイトやアプリ、動画の制作などもディレクション。紙媒体をはじめとしたリアル媒体とデジタルを融合したトータルプランニングも得意としている。
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