企業が発信する情報の信頼性を支えるのは、表現力だけではありません。共同印刷では、制作・品質管理・校正が緻密に連携し、クリエイティブの“品質管理”を徹底しています。ブランド価値を伝える優れたデザインやコピーなどと共に、精度の高い、間違えのないメディア・ツールを制作する体制の裏側には、どんな仕組みがあるのか。3名のプロフェッショナルに話を聞きました。

(ファシリテーター:HintClip編集長 杉山 毅)

立場によって異なる「役割」

杉山:皆さんの「役割」を教えてください。

寺田:私は品質管理ディレクターです。各案件の制作工程をチェックし、ミスを未然に防ぐために、誰が・いつ・どの情報を、どう確認するか設計します。品質管理を属人化させることなく、組織として維持・向上させるのが私の役割です。例えば「校正」では、修正の証跡を残せるようにします。

杉山:手掛けるのは紙媒体が多いのでしょうか?

寺田:Web、イベントの展示物やノベルティなども対応しています。立体製作物では、PL法(製造物責任法)など、安全性の確認が多いですね。

杉山:続いて香山さん、お願いします。

香山:私は制作ディレクターとして、主に通販カタログの制作を担当しています。品質管理面では、法令対応が多いですね。カタログ制作では景表法(不当景品類及び不当表示防止法)や薬機法(医薬品、医療機器などの品質、有効性および安全性の確保などに関する法律)などへの配慮が欠かせません。訴求力と法令遵守のバランスを取りながら、表現やデザインを調整します。もちろん、修正確認など「情報の正しさ」のチェックも重要です。

杉山:今回は、その「情報の正しさ」を担っている校正会社の方にも参加していただきました。

菅原:株式会社ゼロメガの菅原です。当社では、印刷会社や広告代理店、出版社から依頼を受け、カタログやチラシ、出版物、Webサイトなどの校正・校閲業務を行っています。

クリエイティブにおける「品質管理」とは

杉山:企業の情報メディア制作における「品質管理」とは、どんなことだと考えていますか?

寺田:「情報が狙い通り届くようにすること」だと考えています。例えば、用語の誤用や表記の不統一があると、情報が伝わりにくくなる場合があります。これらをなくすことで、読者・消費者に好ましい行動を取っていただけるようにするのが、品質管理だと思います。

杉山:制作ディレクターとしては、どうでしょうか?

香山:品質とは、「クライアントの目的を的確に反映し、意図通りに機能する制作物に仕上げること」だと思います。これを実現するには、デザインやコピーのクオリティ、販促効果の高さだけでなく、情報の「正しさ」の管理も重要です。また、クライアントの企業理念やコンセプトなど、ブランディング面の確認も必要になります。

杉山:校正者としては、「情報の正しさ」にフォーカスされているのでしょうか?

菅原:品質管理には「ネガティブチェック」と「ポジティブチェック」という2種類があると考えています。ネガティブチェックは、間違いをなくすこと。そしてポジティブチェックは、より良い表現になるようご提案をすることです。

杉山:ポジティブチェックは、寺田さんの発言にあった「読者・消費者に好ましい行動を取っていただけるようにすること」や、香山さんの「販促効果の高さ」に貢献できる可能性がありますね。

役割に応じた「準備」が必要

杉山:品質管理を行う際の「準備」について聞かせてください。品質管理ディレクターは、「事前準備」がメインの役割では?

寺田:その通りです。私たちの役割は、品質管理の仕組みの「設計」ですから。準備段階では、案件が動き出す際の「キックオフミーティング」に参加し、全工程を把握します。その上で、ミスやトラブルが起きそうな部分を洗い出し、具体的な対策を考えます。

杉山:例えば、どんな対策ですか?

寺田:「後割り(文字原稿を確定させてから割り付け)」の案件では、レイアウト前の段階で、校正会社に素読み校正を依頼します。

杉山:制作ディレクターはどんな準備をしますか?

香山:クライアントからのオリエンシートや、その案件のバックナンバーなどを準備します。また、リーフレットなどの派生ツールをつくる場合や、月刊誌で複数号が同時進行している場合、どこが関連しているかを事前に把握します。ブランド表現のガイドラインも事前に共有します。

杉山:表記ルールは、事前に作成しておくのですか?

香山:クライアントが規定した用字用語ルールがある場合は、それを使います。NG表現をまとめた資料を、事前にいただくことが多いですね。また、機能性表示食品を掲載する際や、キャンペーンを告知する際などの補足情報の記載方法も、事前にルール化しています。

杉山:校正会社として、事前に準備することはありますか?

菅原:その案件に関する情報とルールを把握することですね。全工程がわかるスケジュールや、オリエンシート、バックナンバー、ルール関連の資料などは、事前に目を通しておく必要があります。

品質管理フローの例(紙媒体・後割りの場合)

制作段階のチェック内容は、多岐にわたる

杉山:制作段階で実際に原稿をチェックする際は、何を重視していますか?

香山:品質管理ディレクターからは、「赤字・修正の証跡管理」の徹底を指示されます。

寺田:赤字の入手経路が、LINE、メール、クラウドなど、散逸しがちですからね。

香山:「基礎的な正確さ」「文脈の整合性」「読書体験の品質」を担保するようにも言われています。

杉山:「読書体験の品質」とは?

寺田:「読みづらさや、視覚の流れのわかりにくさを解消する」ということですね。

杉山:香山さんが、制作ディレクターとして重視していることはありますか?

香山:事前準備したルールを守れているか確認します。また、景表法や薬機法に反する表現がないかも、慎重にチェックします。

杉山:校正会社としてはいかがでしょうか。

菅原:校正では、著作権や表現上のリスクを避けると同時に、本文・表・写真・スペックの整合性を重視します。例えば、商品写真と数量表示が食い違うといったミスは見逃せませんね。さらに、「4つの視点」から内容を確認するよう心掛けています。

杉山:「4つの視点」とは?

菅原:制作会社・クライアント・消費者・社会です。制作会社視点は、制作ミスを防ぐこと。クライアント視点は、商品・サービスの情報を正しくすること。消費者視点は、誤認・誇大表現をなくし、アレルギーや原産地表記などを明記するなど、不利益をなくすこと。社会的視点は、社会倫理・社会正義に反する表現をなくすことです。

杉山:多視点で校正することが、品質向上につながるわけですね。

(※後編へ続く)


参考:制作段階の主なチェック項目

1. テキスト原稿のチェック項目

①誤字・脱字、文法・句読点などの誤り
②文章の一貫性と論理性
③用語の統一(専門用語や固有名詞の表記、言い回し)
④二重否定や回りくどい表現の洗練
⑤差別的な表現や偏見につながる表現の排除・言い換え
⑥著作権や肖像権の侵害がないこと
⑦法令・規制(景表法・薬機法・個人情報保護法など)や公序良俗・社会倫理への抵触がないこと
⑧事実関係の確認(正確さの確保)
⑨引用や参照の適切な表示
⑩文章のスタイルガイドラインや、文字数・行数制限などのフォーマット要件の遵守

2. デザイン・ビジュアルのチェック項目

①色とフォントの統一性(ブランドカラー、フォントサイズ、ウェイトなどの整合)
②レイアウトのバランス(余白、位置関係、視線誘導の自然さ)
③画像やイラストの品質(解像度・明るさ・著作権の確認)
④視覚的なヒエラルキー(見出しや写真、キャッチコピーの強弱)
⑤デザインと内容の一致(コピーや図版との整合、メッセージの一貫性)
⑥ターゲットへの適合性(読者層・目的に合ったデザイントーン)
⑦アクセシビリティの配慮(コントラスト・色覚バリアフリーなど)
⑧デバイス対応(スマホ・PCなど異なる環境での表示確認)
⑨アイコン・図版の一貫性(形状やスタイルが統一されているか)
⑩デザインガイドラインの遵守(企業やブランドのルールに沿っているか)

【写真左】

共同印刷株式会社

プロモーションメディア事業部 生産管理部 品質管理課

寺田 勇生

2001年に共同印刷へ新卒入社。製版部門に配属後、制作部門へ移動。
マーケティング、デザイン、ディレクション部門など、さまざまな役割からプロモーション業務に携わる。
紙、Web、空間デザイン・イベント運営と媒体を問わない経験をもとに、変化の時代に適応する品質管理体制の設計・運用に従事。

【写真中央】

共同印刷株式会社

プロモーションメディア事業部 生産管理部 品質管理課

香山 幸子

大手広告代理店での営業からキャリアをスタートし、その後はクリエイティブ業務へ。コピーライティングを中心に、企画立案からデザインまで幅広く携わる。
2012年に共同印刷へ入社後は、通販カタログを中心に情報誌・DM・リーフレットなど多様な媒体のクリエイティブを担当。現在は制作ディレクション業務を続けながら品質管理部門にて、校正校閲体制構築など制作プロセス全体の品質向上にも取り組んでいる。

【写真右】

株式会社ゼロメガ

代表取締役

菅原 秀宣

雑誌記者、ライター、校正者、校正会社役員を経て、2010年株式会社ゼロメガを設立。ゼロメガでは「日本の情報を、正しく。」を社是として、地方支社展開・多言語校正・BPO支援・校正隣接業務含むマルチタスク受注・AIの利活用による校正および文書生成など、従来の校正・校閲領域に加えて顧客課題の最前線での支援に取り組んでいる。

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