2024年9月に実施して好評だった、画像生成AIの活用ウェビナー。その内容を記事化しました。
画像生成AIの定義、活用メリット、課題、現在の活用方法、そして今後の可能性について、実際に撮影の現場で画像生成AIを活用しているフォトグラファーとディレクターが、わかりやすく解説します。

登壇者
●共同印刷株式会社 播磨坂スタジオ フォトグラファー・AIクリエイター 安 正孝
●共同印刷株式会社 播磨坂スタジオ プロデューサー・ディレクター 宮内亮
ファシリテーター
●共同印刷株式会社 ビジネスマーケテイング部 HintClip 編集長 杉山毅

画像生成AIとは

画像生成AIの定義

杉山:画像生成AIとは何か、簡単にご説明ください。

宮内:画像生成AIは深層学習や機械学習の手法を駆使して、人間が撮影や創作をしたようなデジタル画像を自動で生成する技術です。シンプルに表現するなら「AIの力を借りてビジュアルコンテンツを創り出す」と言えますね。

安:「Firefly」「DALL・E」「Midjourney」などさまざまなサービスが登場していて、多くはWebブラウザ上で利用できます。また、Adobe社の画像編集アプリ「Photoshop」にはAI機能が組み込まれています。

画像生成AIでできること

0から1を創り出す 例 「いろんな花が咲く野原の写真」

杉山:画像生成AIでは、具体的にどのようなことができるのでしょうか。

宮内:大きく分けると、二つの使い方があります。一つは「0から1を創り出す」使い方です。何もない状況から、新しい画像を生成します。例えば、画像生成AIサービスのWebサイトにアクセスして「いろんな花が咲く野原の写真」と入力すると、この例のように、言葉の内容にあった画像が生成されます。

1を100にする 例 横長の写真を縦長に変える

安:そしてもう一つが「1を100にする」使い方です。すでにある画像に、AIの力を借りて何かを加えるなどして、イメージ通りの画像に仕上げます。例えばこのサンプルのように、横長の画像に天地を加えて縦長にする、といった使い方ができます。

杉山:撮影した写真に対して行う「レタッチ」と「画像生成AI」は、何が違うのでしょうか。

宮内:「1を100にする」使い方は、色調調整や不要物の除去、足りない要素の追加など、写真や画像に手を加える「レタッチ」と非常に似ています。

安:これまでレタッチは、レタッチャーやフォトグラファーなどの「人」が、自身の経験や知識、感性などに基づいて画像編集アプリを用いて手作業で行っていました。しかし、画像生成AIでもレタッチを行うことが可能です。プロンプトで作業ができるので、画像初心者でも扱いやすいですね。

宮内:ちなみに、共同印刷では画像生成AIと人、両方を組み合わせてレタッチを行っています。

「レタッチ」とは「修整」

画像生成AIのメリットと課題

画像生成AIの活用状況

杉山:「どのような媒体で」「どのように使うのか」といった、画像生成AIのリアルな活用状況を教えてください。

宮内:クリエイティブの現場で画像生成AIを活用するケースは、増えていますね。

安:例えば共同印刷では、インテリアや化粧品のカタログを制作する際に、背景の生成や商品写真・モデル写真の修正などに活用しています。私たちプロのフォトグラファーが撮影した写真データを、AIで加工する「1を100に」の使い方がメインです。また、お客さまにプレゼンする際に画像生成AIで仮のイメージを生成するなど、企画段階での活用も増えていますね。

杉山:なるほど。やはり「自動生成AI」の使用機会は増えているわけですね。

画像生成AIの活用メリット

杉山:画像生成AIを活用すると、お客さまにはどんなメリットがありますか?

安:まず挙げられるのが、時間短縮・効率化です。制作段階で、「背景のイメージが微妙に違う」などの修正依頼に画像生成AIで対応することが増えています。再撮影するより効率化が期待できますね。ただしイメージ通りの画像を生成するには、ある程度の時間とコストが必要です。

杉山:他にはどんなメリットがあるでしょうか。

安:企画段階でアイデアの別案を増やすなど、提案内容を充実させやすいですね。

宮内:従来の手法では出てこないアイデアが生まれることもあります。お客さまとのイメージのすり合わせもしやすくなるのも、大きな利点ですね。

画像生成AIの課題

杉山:画像生成AIを活用する上での課題はありますか?

宮内:当社が特に注意しているのが、クオリティの低下ですね。効率化を過度に重視したり、「AIありき」で発想したり…を繰り返すと、写真の質に対するこだわりが低下してしまう懸念があります。

安:この点にはいつも気を付けています。

画像生成AIと法律・倫理(+利用ガイドライン)

杉山:さまざまなメディアで、画像生成AIが著作権や肖像権に抵触するリスクについて注意喚起しています。法的・倫理的には、どんな配慮が必要と考えていますか。

宮内:当社では社内チェック体制を構築し、問題発生の事前防止に努めています。しかし予想外の問題が発生する可能性もあるので、お客さまには事前にリスクなどを説明し、ご理解いただいてから活用するようにしています。また、当社では法務関連部門と連携してスタッフへの教育を徹底し、権利問題だけでなく、感情問題やセキュリティにも配慮できるようにしています。

杉山:画像生成AIを問題なく活用するための「ガイドライン」のようなものは存在するのでしょうか。

宮内:社会全体の動きとしては、一般社団法人 日本ディープラーニング協会が『生成AIの利用ガイドライン』を公開しています。その内容を、企業がテンプレートとして活用できます。

画像生成AIとフォトクリエイティブの可能性

フォトグラファーが使うことで可能性がさらに拡がる

杉山:プロンプトは、誰が書いても同じ結果になるのでしょうか。それとも、ある程度撮影に詳しい人が書いたほうが効果的なのでしょうか。

安:画像生成AIは誰でも使えるサービスですが、フォトグラファーが使ってこそ、可能性をフルに引き出すことができると当社では考えています。

宮内:さまざまな知見や経験、技術、感性を持つフォトグラファーが、それらを生かして「実際に撮影したら」という視点から、仕上がりイメージを細部まで思い描いたプロンプトを書くことで、撮影レベルのクオリティで、狙い通りの画像を生成できます。

安:これを当社では「PHOTOリアル」などと呼んでいます。フィルム感度やライティングの仕方など、実際の撮影用語でプロンプトを入力することもあります。

杉山:プロンプトの入力に、写真撮影に必要な知見が使われているのですね。

画像生成AIにおける共同印刷の強み

杉山:画像生成AIにおける共同印刷の強みとは、一体何でしょうか?

安:先ほども述べたように、フォトグラファーがプロンプトを書くことにより「PHOTOリアル」を追求できる点にあると思います。

宮内:画像生成AIで作成した画像はWebやデジタル系のコンテンツで使われることが多いようですが、当社では印刷会社としてのノウハウを生かし、印刷でも使用できる高解像度の画像も、生成や活用ができるようにしています。

杉山:印刷会社としてのノウハウが生かされるわけですね。

フォトクリエイティブの現場の未来

杉山:画像生成AIによって、フォトクリエイティブの現場はどう進化していくと思いますか?

安:技術の向上や活用ノウハウの蓄積によって、画像生成AIはフォトクリエイティブの現場では不可欠のツールになっていくと思います。

宮内:当社としては、進化したAIを安易に使うのではなく、AIの活用を否定するのでもなく、あくまで撮影を基本に据えつつ、用途や目的に応じてうまく使いこなしていくことが重要と考えています。画像生成AIはあくまで道具です。人が適切に使うことで、求めている通りの画像をアウトプットできます。この考え方を守り、他の技術や手法とも効果的に組み合わせながら、当社のフォトクリエイティブをさらに高めていきたいですね。

共同印刷株式会社

コミュニケーションデザインセンター コンテンツプロデュース部 播磨坂スタジオ フォトグラファー・AIクリエイター

安 正孝

2009年に共同印刷入社。播磨坂スタジオに配属される。本広告写真家協会、正会員。化粧品、家具、アパレル、家電、住設機器、食品など、幅広いジャンルの広告・販促物のフォトクリエイティブを担当。最先端デジタル技術の活用に取り組んでおり、近年は画像生成AIを積極的に制作実務に取り入れている。

共同印刷株式会社

コミュニケーションデザインセンター コンテンツプロデュース部 播磨坂スタジオ プロデューサー・ディレクター

宮内 亮

出版社の編集部を経て、2005年共同印刷株式会社に入社。クリエイティブ部門でカタログ、情報誌、カレンダー、年史、Webなどの制作・撮影案件のディレクションを担当し、各種メディアにまたがる複合的な企画制作のプロデューサー、プロジェクトマネージャーを経験。2020年からは、播磨坂スタジオをマネージメントし、撮影を軸としたビジュアルコンテンツ制作を推進している。

共同印刷株式会社

ビジネスマーケテイング部 HintClip編集長

杉山 毅

1982年共同印刷株式会社入社。商業印刷部門の企画営業を経て、1987年よりセールスプロモーション部門でクライアントの事業戦略・マーケティング戦略のプランニングから、広告・広報・販促の各種ツール・メディアのクリエイティブ・ディレクションを担当。2008年からコーポレートコミュニケーション部門にて広報、IR・総会、サステナビリティなどを部門長として担当。2017年の自社の創立120周年では、CIとコーポレートブランド再構築を含む周年事業を統括管理。2020年4月から共同印刷のオウンドメディア「HintClip」の編集長。

画像生成AIを使ったデモンストレーションを動画で視聴できるウェビナーのアーカイブをご用意しました。以下からどうぞ。

アーカイブ動画視聴:HintClipウェビナー 「画像生成AIで変わるフォトクリエイティブ」

私たちがお役に立てること 撮影「播磨坂スタジオ」 多目的スタジオと自然光スタジオ、キッチンスタジオを備えた「播磨坂スタジオ」はクリエイティブ環境を重視した、お客さまやクリエイターが撮影に集中できるように配慮した造りです。 詳細はこちら

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