AI技術の進化により、フォトクリエイティブの領域でも革命的な変化が起こっています。
フォトグラファーやデザイナーが画像生成AIを活用することで、新たな視点や斬新なアイデアが生まれ、クリエイティブ表現が大きく広がっているようです。
この記事では、AIによる画像生成のプロセスを、実際の写真を使って解説し、その可能性について理解を高めていただきます。
原稿執筆: 共同印刷株式会社 播磨坂スタジオ 安正孝(フォトグラファー/AIクリエイター)
画像生成AIとは
「画像生成AI」とは、自分が思い描くイメージを、AIが画像として自動で生成する技術です。例えば「いろんな花が咲く野原の写真」と言葉(プロンプト)で入力すれば、AIが膨大なビッグデータを活用して、オリジナルで画像をつくってくれます。
Webサービスとして提供されることが多く、代表的なものにAdobe社のFireflyなどがあります。
Adobe Photoshopなど一部の画像編集アプリにも「画像編集AI」が組み込まれていますが、基本的にはフォトグラファーが撮影した画像などを編集・加工するために使用します。
一方、画像生成AIはゼロから画像をつくり出すことができます。
また、すでにある写真のデータをアップロードし、それを出発点にして異なる画像を生成することも可能です。ロケハンや建て込み、大道具・小道具の準備やライティングの設定といった作業の大半を省略できるため、個人的には生産性が2倍以上になると感じています。
画像で見る「画像生成AIでできること」
画像生成AIの活用例をご紹介します。
この画像はフォトグラファーである私が既存の化粧品ボトルを使って屋外で実際に撮影したものですが、もっと背景の「抜け感」が欲しいと思いました。
また、きらきらと輝くイメージや、うるおい感を象徴する雨滴のようなものがあると面白いのではないかと考え、画像生成AIを使ってみることにしました。
オリジナル画像(私が実際に撮影)
オリジナル画像をAdobe Fireflyにアップロードし、AIにこの画像を出発点にして画像生成するよう指示します。以下のようなキーワードを用いたプロンプトを入力しました。
- ・ねじれた枝
- ・輝くクリスタル
- ・繊細な葉
- ・雄大な切り株、大木
- ・化粧品ボトルの質感、輝き
- ・雨滴
- ・光の効果
などなど。
全体の構図、雰囲気、光の加減や明るさ、雨滴の落ち具合や量などがイメージに近づくまで、プロンプト(AIへの文章での指示)の内容を調整・変更しながら入力を繰り返し、何度も画像を生成させます。
実際にはもっと多くの画像が出力されましたが、そのうち初期段階から最終に近い段階のものまで、4つをピックアップしてみました。
途中画像1(画像生成AIを使用)
途中画像2(画像生成AIを使用)
途中画像3(画像生成AIを使用)
途中画像4(画像生成AIを使用)
そして最終的にたどり着いたのが、この画像です。最終的に、背景に抜け感があり、全体に陰影があり、雨滴は減らしつつ、しっとりとした感覚のある画像に仕上がりました。元画像の撮影以外の作業はプロンプトの入力のみで、作業時間は約1日です。
最終画像(画像生成AIを使用)
フォトグラファーがプロンプトを書くのが理想的
AI画像生成において最も大切なのはプロンプトです。
プロンプトには、実際の撮影においてディレクターがスタイリストやヘアメイク、大道具・小道具などのスタッフに、写真の最終イメージを伝え、それぞれに作業指示を出すのと同じ役割があります。つまりプロンプトの内容を通じて写実性をしっかり追求することが重要です。
プロンプトは、フォトグラファー自身が書くのが理想的です。その理由は、アングルやライティングといった、撮影技術の基本がわかっているから。
例えば知識も技術もまったくない人が寿司を握ったら、どんなによい素材を使っても美味しくなりません。しかし熟練の寿司職人なら、変わった素材を使っても、その素材を生かした美味しい寿司を握ることができます。
画像生成AIもこれと同じ。プロが使ってこそ本領を発揮できるのです。
画像生成AIにおける共同印刷の強み
共同印刷・播磨坂スタジオでは、画像生成AIの活用に力を入れています。私のような画像生成AIを使いこなせるフォトグラファーが、カタログやパンフレットのイメージ画像作成や商品写真の修正などに活用しはじめています。
また、当社は企画・デザイン・撮影・印刷あるいはWebなどでの公開までをワンストップで対応することが可能です。
画像生成AIは一般的にはWebやSNSのコンテンツに活用することが多いようですが、当社の場合、A4パンフレットの見開き印刷でも十分な解像度での画像生成に対応しています。
画像生成AIとフォトクリエイティブの今後
今後、画像生成AIはイメージ画像制作における重要なツールの一つとして広く使われることになると思います。目的や予算などによって、実際に撮影するか、AIを使うかを判断する時代がまもなくやって来るでしょう。
この新しい時代にクリエイターとしてクオリティの高いものをつくり続けるには、写真だけでなく、画像生成AI、動画、3D、ARなどのすべてに精通し、トータルに対応できるゼネラリスト的な能力が求められるようになるはずです。
私の場合、フォトグラファーとしてのスキルはずっと守りたいですが、AI技術や他のデジタル技術も使いこなすことで、クライアントのご要望により高いレベルで応えられるようになりたいと思います。そうすることで、自分のフォトグラファーとしての能力も向上するはずです。
画像に限らず生成AIは、私たちに時折「意外な発想」や「変わった視点」を提供してくれることがあります。
これによって、今後は新たな表現が続々と誕生するのではないでしょうか。クライアントのマーケティング活動、そしてクリエイターの仕事の双方をより豊かにしてくれるものとして、画像生成AIのさらなる進化に期待しています。

共同印刷株式会社
播磨坂スタジオ フォトグラファー/AIクリエイター
安 正孝(ahn junghyo)
1978年 韓国ソウル生まれ。/2009年 共同印刷播磨坂スタジオ入社/2017年 APA正会員/化粧品、家具、アパレル、家電、住設機器、食品など、幅広いジャンルの広告・販促物のフォトクリエイティブを担当。
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