店頭販促に関わる皆さま向けに、店頭販促ツールの企画制作から構造・素材・納品までの基礎知識が学べるコンテンツを3回にわたって連載します。
第2回目の「製造・素材編」は、共同印刷株式会社コミュニケーションデザインセンターSPメディア部の福澤真治が解説します。
クリエイティブ編の手法で考案されたアイデアを、当社ではどのように具体化しているか、そして店頭ツールにはどのような種類があり、どのように展開・活用するのが良いかを簡潔に説明します。
■Part 1. クリエイティブと製造の関係性
店頭ツールは一般的な印刷物よりも製造工程が複雑で、クリエイティブとの関係がより深いため、当社では制作・製造の「一元管理」を行っています。ここではその理由を説明します。
●企画制作から製造まで一元管理が望ましい
店頭ツールは、複雑な工程を経て作られます。特に重要なのが、「仕様・素材の検討」「構造設計」「試作確認」です。クリエイティブ部門が考案したデザインを、どのような素材で、どのようにつくるかが非常に重要になるため、クリエイティブ部門のスタッフも製造工程を理解し、製造部門と連携して進めていく必要があります。
●「グラフィックデザイン」×「プロダクトデザイン」
店頭ツールのディレクターには、多様な素材で立体的構造物をデザインすることから、「グラフィックデザイン」に加えて「プロダクトデザイン」の思考が求められます。
そして、この2つの思考によるクリエイティブと製造の連携が重要です。
- ① グラフィックデザイン
主として平面上に表示される文字や画像、配色などを使用し、情報やメッセージを伝達する手段として制作されたデザインのこと。ポスター、雑誌広告、新聞広告、映画・コンサート・演劇・展覧会などのフライヤー、商品のパッケージデザイン、ロゴタイプなど、多岐にわたる。 - ② プロダクトデザイン
工業デザイン全般のこと。製品の大量生産を目的とするだけでなく、構造、機能、材料や材質、コストなどをじっくりと考慮して企業の売り上げに貢献できる製品をデザインすること。
●クリエイティブと製造を一元管理する理由=切り分けが難しいため
ポスターなどの一般的な印刷物では、クリエイティブ部門が制作したデザインデータを製造部門に渡せば、意図通りの印刷物が比較的容易に完成します。部門同士の濃密な連携はあまり必要ありません。
一方、プロダクトデザインの側面も持つ店頭ツールの場合、形状のイメージを製造部門に伝え、図面や展開データを設計してもらう必要があります。素材や色も、クリエイティブ部門と製造部門の双方で検討することになります。両部門のやりとりが非常に多く切り分けが難しいため、当社では店頭ツールの制作から製造までをディレクターが一元管理しています。
■Part 2. 店頭ツールの種類
店頭ツールにはさまざまな種類が存在します。「役割・機能」と「設置場所・形態」で分類すると、実際のツール展開をイメージしやすくなります。また、使用する素材や仕様・構造も決めやすくなります。
●「役割・機能」での分類
店頭ツールにはさまざまな種類が存在しますが、店頭販促における役割や機能で見ると、大きく6つに分類できます。
- ①告知POP…商品やキャンペーンに関する情報を伝達する。
- ②販売・陳列POP…商品を並べる什器の役割をしつつ、商品の訴求や世界観の表現を行う。
- ③演出POP…商品やブランドの世界観を演出する。あるいは商品を魅力的に装飾する。
- ④実証・体験体感POP…商品を実際に触ったり試したりできるようにする。
- ⑤アテンションPOP…陳列した商品のすぐそばで、購買の決め手となるポイントを強く簡潔に訴求する。
- ⑥大陳キットPOP…店舗の特設コーナーやエンドスペースなどで、一つの商品あるいは同一メーカーの商品群を大量に陳列する。
●「設置場所・形態」での分類
店頭ツールは「どこに設置されるか」も重要。店頭のスペースを有効活用するために、さまざまな形状が存在します。一般的には以下の6つに分類できます。
- ①シーリングPOP…天井や壁に吊り下げる。
- ②ハンガー・ウォールPOP…壁や窓、什器のサイドなどに吊り下げる。商品を陳列できるものもある。
- ③フロアPOP、フロア什器…特設コーナーやエンドスペースなどの床に直置きする。
- ④カウンターPOP…什器の最上段やカウンターに設置する。
- ⑤ショーカードPOP…陳列棚や他の店頭ツールに貼り付ける。
- ⑥店外サインPOP…店舗の入り口近くに設置する。
■Part 3. ツール展開の考え方
店頭ツールの展開方法にも、3つの基本的な考え方があります。これには、店頭ツールの種類と店内の設置位置・ゾーニングが深く関わります。
●考え方(1) 店内の「場所」に適したツールを選ぶ
売り場は「どの場所で何をどう売るか」がある程度決まっており、基本的には以下の2つに大別できます。
- ①定番売り場、定番棚…カテゴリーごとに商品が整然と並べられているスペース。設置できるツールは限られるため、小型で訴求力のあるものが中心。
- ②定番外売り場、アウト展開…定番以外の売り場。主に、以下の種類がある。
・店前/平台/特設コーナー…新商品プロモーションになどのために特設される売り場。大きなツールや、複数のツールを使用できる。
・エンド…売り場のカテゴリーの中でも、新商品や店舗イチオシ商品、季節商品などが置かれる売り場。強い訴求や演出がしやすいツールが適しているが、大きさの制約がある。
・レジ前…会計前の「ついで買い」を狙う商品を扱う売り場。コンパクトで邪魔にならないツールが適している。
●考え方(2) 消費者・購入者の意識や行動に合ったツールを選ぶ
売り場の種類によって、消費者・購買者の行動や意識は大きく異なります。
- ①定番売り場、定番棚…買いたいものが決まっているため、消費者は店頭ツールを見ることなく、売り場へ直行する。
- ②定番外売り場、アウト展開…何を買うか決めていない人や、たまたま通りかかった人などが目にする。したがって、店頭ツールを活用して商品やブランドの存在を気付かせる必要がある。
●考え方(3) 「消費者の意識・行動」×「場所」で最適なツールを
図のように、消費者の意識・行動を基本としつつ売り場の特性を考慮した店頭ツールを計画すれば、高い効果を期待できます。
また、役割と位置が決まれば、訴求内容や演出・デザインを考案しやすくなります。
共同印刷株式会社
コミュニケーションデザインセンター SPメディア部 店頭メディア第二課
福澤 真治
1996年日本写真印刷株式会社(現NISSHA株式会社)に入社。商業印刷部門の営業として大手化粧品会社の店頭販促物を担当。その経験を生かして2009年に店頭販促の制作ディレクターとして企画制作部門へ異動する。2019年NISSHAグループから共同印刷への事業譲渡により、共同印刷グループへ移籍。現在も化粧品や医薬品、文具などの店頭販促のクリエイティブディレクションを行っている。
日本プロモーショナル・マーケティング協会ショー委員会委員。プロモーショナル・マーケター。
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