株式会社東武百貨店が運営する池袋駅西口地下街「東武ホープセンター」と、共同印刷はサイネージ一体型のPop-upストア「BRIGHT marche(ブライトマルシェ)」※を活用してOMOの実証実験を行っています。
HintClipでは、東武ホープセンターを管理されている山田さまと、共同印刷 販促企画部の中野との対談を前後編でお届けします。前編では「BRIGHT marche」導入の経緯や実証実験の評価などについて、後編ではOMOのビジョンや可能性について語り合いました。

〈ファシリテーター〉HintClip編集長 杉山 毅

※サイネージ一体型OMO Pop-up ストア 「BRIGHT marche」とは
大型サイネージ動画とショーケースでのリアル展示の両方で、商品をハイブリットに訴求します。アプリのダウンロードが不要で、スマホでQRコードから手軽に商品チェックが可能に。さらにダイレクトにECに誘引できるので、オンラインとオフラインを融合する新しい売り場を実現します。

>前編のBRIGHT marcheやOMOの評価・分析についての対談はこちら。

商業施設という役割だけではなく池袋という地域を盛り上げる


東武ホープセンターが挑戦するOMOは@DINEでも紹介されました。
https://dime.jp/genre/1579393/

杉山:OMOやBRIGHT marche(ブライトマルシェ 以下BM)の今後の可能性についてもお話いただけますか。

中野:池袋は土地、街としても注目度が高く、芸術やまんが・アニメなどカルチャーの発信地でもあるので、そういったコンセプトを生かした使い方をしていきたいです。例えば、ラーメンやキャラクターなどさまざまなコンセプト化された通路がある「東京駅一番街」のようなブランディングの方向性も考えられますね。BMなどのサイネージを生かして、百貨店としての情報に限定せず、そのコンセプトに沿った新しい情報を発信し、出会いがある場所になれば、池袋西口の活性化にもつながると思います。

山田:先日地域の会議に参加した際に、池袋は地方都市から注目されているというお話を伺いました。その理由は、都市部は再開発事業によって素晴らしい発展をしている反面、長年の歴史ある文化が減少していますが、池袋には再開発計画はあるものの、西のアニメ、東の芸術という文化が存在しているからです。

中野:地域の文化がはっきりと存在し、それを残していくというのは大切な取り組みです。当社は地方創生を支援するビジネスも展開していて、多くの地域のブランディングに関わっています。
百貨店だけでなく、地域を巻き込むという動きが重要です。特に池袋という街は今転換期を迎えていますからね。
OMOというのもあくまで手段の一つです。百貨店を盛り上げる、池袋という地域を盛り上げる、というところまで当社のリソースを活用しながら一緒にめざしていきたいと思っています。

リアル店舗のお客さまにも楽しんでいただけるチャレンジが必要

杉山:百貨店のお客さまというと購買力のある50代、60代などが主体となるイメージがあります。
コンセプト化された場所に集まる人たちを取り込むことができれば、百貨店としても若年層などの新たな顧客層の獲得につながりそうですね。

山田:東武百貨店や東武ホープセンターも、リアル店舗でお買物を楽しんでいただいているお客さまが多くいらっしゃいます。これからもこれが本業であることは変わりありません。
どのような新しい取り組みであれば、新しいお客さまが興味を持ち継続してご来店いただけるのか、また今ご来店いただいているお客さまにも興味を持っていただけるかが課題です。
共同印刷さまに期待しているのは、キャラクターなどの版権ビジネスやEC、デジタルデバイスなど、当社が今後強化していきたい分野ですので、引き続きご協力いただきたいと考えています。

中野:新しい領域に取り組みたい場合、外部の力を効果的に使うというのはとても大切なことです。当社も自分たちだけではできないことをパートナーとの協力関係の中で作り上げています。

山田:まさに今お話いただいたように、共同印刷さまの強みは、自社だけで完結できない領域をパートナーとの協力関係で広げていく企業力だと感じています。
その一方で、販売に関する企画、知識、手法、販売場所は当社の主力領域かと思っています。両社が協力することで補完性、相乗効果があるのではないかなと期待しています。

杉山:東武百貨店さまは、鉄道や不動産などの多様な事業を束ねたグループ力や、池袋というロケーションに強みをお持ちです。その反面、弱みと感じられているのはどういった点でしょうか。

山田:最近「百貨店とは?」と聞かれることがあります。
百貨店とはその名のとおり「百貨を取り扱うお店」です。百貨店の多くは衣・食・住に関連する商品を幅広く取り扱っています。
多くの商品を取り扱っていることがおもしろいという方もいれば、人気商品だけを厳選して取り扱ってほしいと思う方もいます。また、お店を広くしてほしい方もいれば、コンパクトな方が買いやすいという方もいます。
ビジネスの観点からみると、需要への対応と効率化は必ずしも両立するわけではありません。安全安心かつ需要に合った提案をすることを大切にしてきました。
しかし、昨今の新しい時流では、改めて自分の生活を見つめ直すことで、趣味・遊び・仕事への関心が高まりました。
このような新しい分野の知識はまだまだ足りていないと感じています。
今後、より多くのお客さまにご提案するためには、BMのようなリアル店舗とECをコネクトするOMOの仕掛けがますます重要になると感じています。

中野:かつては、大きな商業施設は買い物だけではなく、食堂や、屋上にはペット売り場やゲームコーナー、小さい遊園地などがあって家族連れが1日楽しむことができました。それが来店理由のひとつになっていましたね。私も子どもの頃、デパートの屋上は大好きな場所でした。今は子ども向けのショーなどもあまりやってらっしゃらないのですか。

山田:減ってきていますよね。そのなかでも当社は多い方で、夏にはアンパンマンショーをやりましたが、多くの問い合わせが寄せられていると聞きました。
百貨店に行く理由が「買い物をする」「ハレの日の食事をする」「良いものが欲しい」ということも大事ですが、「楽しみたい、遊びたい、気持ちを盛り上げたい」という要素の必要性は、昨年のサッカーW杯、3月のWBCの盛り上がりをみて、痛感しました。皆さん熱くなる機会を求めていて、感動的な体験への需要は間違いなく大きいのだと思います。

お客さまが百貨店にご来店いただく理由を再び作り出す

杉山:最後に今後のビジョンについてお聞かせください。

山田:今日お話させていただいたことや今取り組んでいることの中にも、今後のヒントがたくさん含まれていると感じています。
現在行っている取り組みと、今日お話した内容にある「ギャップ」。それを突き詰めていった先に、本当に取り組まなければならないテーマがあると思います。
その「ギャップ」は商品や価格かもしれませんし、演出かもしれません。あるいは池袋という街やカルチャーの話かもしれません。その「ギャップ」をヒントにした取り組みを開発して、推進していきたいです。

杉山:その事業の核になるものはどういったものでしょうか。

山田:今日のテーマでもあるので、OMOと言いたいところではありますが、中野さんもおっしゃったようにOMOは手法の一つ。
今は課題と検証結果を集め、すり合わせ、最も有力な仮説を出す時期だと認識しています。OMOやそのためのBMが本当に正解に近い仮説なのかはまだわかりません。
先程、過去の商業施設の屋上のお話をさせていただきましたが、当施設にご来店いただく、「買い物」以外の目的、理由を作ることも狙いになってくると感じています。

中野:一日過ごす場所という役割は、大手SCなどに奪われてしまっているのかもしれません。専門店やクリニック、映画館などもあり、年配の方、家族連れ、学生と世代を問わず過ごせる複合的施設になっていて、まさに来る理由の塊ですよね。

山田: 需要と効率のバランスは難しいですね。
私は買い物をするうえで「気づいたらこんなに買っちゃった」というのが一番幸せな買い物の形だと思っています。必要に迫られて買うのではなく、予定以外のものでも「あ!これかわいいから買っちゃった」という出会いの買い物ですね。そのためにはお客さまと商品の出会いのきっかけが多くなければなりません。
当施設にご来店いただく機会を増やし、買い物やそれ以外の時間も店内で楽しんでいただきたい。
その過程ではBMの情報発信メディアとしての役割への期待は大きくあります。
そういった取り組みが、ひいては池袋駅の地下街や街の活性化にもつながっていく取り組みになれば素晴らしいなと思います。

ブライトマルシェ媒体資料

株式会社東武百貨店

池袋店 ホープセンター事業部 営業課 課長

山田 純士

2005年株式会社東武百貨店入社後、リビング用品、紳士服インポートカジュアル、ゴルフ売り場の販売および仕入れを担当。その後、グループの東武鉄道株式会社にて賃貸業(商業)に携わり、現在は池袋西口地下街「東武ホープセンター」の運営管理業務を担当。

共同印刷株式会社

情報コミュニケーション事業本部 事業企画部 みらい創造戦略プロジェクト チーフプロデューサー

中野 秀治

1994年共同印刷入社後、商業印刷の営業として、数多くの得意先の販促支援を担当。マーケティング、クリエイティブ領域の強みを武器に、主にメーカーさまを得意先として、店頭販促の什器やPOP、キャンペーンなど案件を多く手掛けたのち、クリエイティブ部門の部長、プロモーションメディア事業部の販促企画部長(取材当時)などを歴任。2023年4月より、情報コミュニケーション事業本部「みらい創造戦略プロジェクト」のリーダーを務めている。

共同印刷株式会社

ビジネスマーケテイング部 HintClip編集長

杉山 毅

1982年共同印刷株式会社入社。商業印刷部門の企画営業を経て、1987年よりセールスプロモーション部門でクライアントの事業戦略・マーケティング戦略のプランニングから、広告・広報・販促の各種ツール・メディアのクリエイティブ・ディレクションを担当。2008年からコーポレートコミュニケーション部門にて広報、IR・総会、サステナビリティなどを部門長として担当。2017年の自社の創立120周年では、CIとコーポレートブランド再構築を含む周年事業を統括管理。2020年4月から現職。

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