好評連載「プロモーション法務入門」、第3回のテーマは「表現」です。商品やサービスをより魅力的に伝えるための表現手段や素材についても、さまざまな法規制や権利があります。今回は特に注意すべき著作権、商標権、肖像権、そしてパブリシティ権の概要と、注意すべきポイントを紹介します。

※本コンテンツは、2023年6月現在の情報をもとに、当編集部が独自の観点からまとめたものです。
※当社は本稿に関して一切の法的責任を負いません。記載内容については必ず貴社や取引先などの法務部門や顧問弁護士などにご確認ください。

(1)著作権

著作権法(昭和45年法律第48号)は、著作者がもつ権利を保護するとともに、著作物の公正な利用を確保することで、文化の発展に貢献することを目的とした法律です。
イラスト、キャラクター、写真、レポート、動画、コンピュータプログラム、楽曲といった、思想または感情を創作的に表現したもので、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものが「著作物」とされ、著作権法によって守られます。単に事実やデータを記載したものは、思想や感情が含まれていないため著作物とはいえず、理論そのものやアイデアは、それが具体的に表現されていないと著作物になりません。
著作権は登録などの手続きをしなくても著作者が著作物を創作したときに発生し、素人でも文章を書いたりイラストを描いたりしたりすればすべて著作物として扱われ保護されます。

著作権の内容は、財産権としての著作権と著作者人格権の二つに大きく分かれます。
前者は、著作権者が著作物の利用を許可してその使用料を得ることができる権利です。
後者は、著作物を通して表現されている著作者の人格を守るための権利です。
著作権(財産権)は他人に一部または全部を譲り渡すことができますが、著作者人格権は、その性質から著作者だけが持つことができる権利であり、譲り渡したりすることはできません。もっとも、著作者人格権の行使によるトラブルを避けるため、著作者から著作権人格権行使しないと合意を得ることは可能です。

広告や販促物の制作にあたっては、第三者の著作権侵害とならないようにする必要があります。著作権侵害は、一般的に、以下の三つの要件を満たした場合に成立します。

  1. ①依拠性…創作にあたり他人の著作物を参考にしたことを意味します。偶然全く同じ著作物を創作したとしても著作権侵害にはなりません。
  2. ②類似性…参考にした著作物と創作物が似ていることを意味します。単に、既存の著作物と似ているから類似性が認められるわけではなく、著作物の本質的特徴を直接感得することができる(作品の個性を示す独自的な表現が同じまたは似ている)場合に類似性が認められます。
  3. ③利用者が著作物利用について正当な権原を有していないこと…例えば、著作権者から利用の許諾を得ていない場合や出版権の設定を受けていない場合を意味します。
    なお、著作権の保護期間は国によって異なります。日本の場合は原則として、著作者の生存期間およびその死後70年間です。保護期間を経過した後は権利が消滅し、パブリック・ドメイン(社会全体の共有財産)として誰でも著作物を使用できるようになります。

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(2)商標権

商標法(昭和34年法律第127号)は、自己(自社)の商品・サービスと他人(他社)の商品・サービスとを区別するために使用するロゴやマーク(商標)を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用維持を図るための法律です。
登録された商標の権利を持つ者は、出願の際に指定した商品・サービスの当該商標を独占的に使用する権利を有します。また、商標権の範囲は同一の商標だけでなく、類似のものにまで及びます。
この保護を受けるためには商標登録出願を行い、登録を受ける必要があります。
現行の商標法では、文字、図形、記号、立体的形状、色彩やこれらを組み合わせたもののほか、音も登録できます。商標登録を受けるための主な要件は以下のとおりです。

  • ●要件1:自己の業務に係る商品・サービスについて使用するものであること
  • ●要件2:自他商品・サービスの識別力があること(普通名称による商標に当たらないこと、慣用されている商標ではないことなど)
  • ●要件3:公益的理由および私益的理由から登録を受けることができない商標に当たらないこと(国旗、勲章、紋章、赤十字などと同一・類似の商標ではないこと、他人の登録商標と紛らわしい商標ではないことなど)

商標登録を受けるためには、特許庁に出願をします。商標登録出願をする際は、出願する商標を使用する商品・サービスを指定する必要があります。
また、商標権は「類似群コード」と呼ばれる分類の範囲内で保護されます。商標権の存続期間は登録日から10年間ですが、申請することで何度でも繰り返し更新できます。

商品の名称、ロゴ、広告、販促物などを制作する際は、商標権侵害を防ぐため、類似する登録商標の有無を事前にチェックする必要があります。
他人が登録した商標やそれと類似する商標を、正当な理由がないのに、他人の商標権が及ぶ分野について使用する場合は商標権侵害になり得ます。
特許情報プラットフォーム『J-Plat Pat』では、出願中の商標や登録済みの商標の情報を無料で確認できます。
似た商標がある場合、実際に商標権を侵害しているかどうかの判断には高度な知識が必要とされるため、専門家である弁護士・弁理士に相談すると安心です。
なお、商標が商品やサービスを識別できるものとして周知され著名になっている場合は、商標登録をしていなくても、不正競争防止法による保護を受けることは可能です(第2回をご参照ください)。

▶特許情報プラットフォーム『J-Plat Pat』 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/

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(3)肖像権

肖像権とは、他人から無断で容姿などの写真を撮られたり、撮られた写真が無断で公表されたり利用されたりすることがないように主張できる権利です。
法律上明文化された権利ではありませんが、裁判例により確立されてきた権利であり、侵害することのないよう十分な配慮が必要です。

広告や販促物に使用した写真に人物が映り込んでいる場合、肖像権の侵害になる可能性があります。広告や販促物に他人の肖像を使用する場合は、原則として本人(未成年者の場合は親権者)の承諾が必要です。社員の肖像であっても自由に公開してよいわけではないため注意が必要です。

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(4)パブリシティ権

著名人の肖像などのもつ顧客誘引力から生じる経済的な利益・価値を排他的に利用する権利をパブリシティ権といいます。
現行法上、パブリシティ権を認める明文規定はありませんが、最高裁判決はパブリシティ権を承認しています。

例えば、企業の公式Twitterで、著名人には無断で「○○さんおすすめ!」と商品を紹介することは、パブリシティ権の侵害となり得ます。
なお、判例上は、物や動物のパブリシティ権は否定されているものの、これらのパブリシティ権を理由とするクレーム自体は生じる可能性がありますので、広告で使用する際には注意が必要です。

まとめ:「表現」についても必ず事前チェックを!

広告や販促物に写真やイラストを使う場合や新たに商品名やキャッチコピーといった新しい「表現」を開発する場合は、それらが他者の権利を侵害していないか確認しましょう。
逆に、あなたの会社が保有する権利が侵害される可能性もあります。
「権利侵害しているかも…」あるいは「権利侵害されているかも…」と感じたら、専門家に相談することをお勧めします。

▶本文:HintClip編集部
▶監修:池田・染谷法律事務所 弁護士 染谷隆明/弁護士 李明媛
https://www.ikedasomeya.com/

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