新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を受け、消費者意識に変化が生じています。その変化を具体的に解説するとともに、その変化に有効な通販・ECにおける売上アップ策をご紹介します。

■コロナ禍で変化した消費者意識

コロナ禍により消費者意識にはさまざまな変化がもたらされ、消費傾向も変化しました。日本国内では、2020年4~5月に緊急事態宣言が発令され、解除後はやや落ち着いたように見えましたが、年末には再び感染が拡大しました。年末までの期間にどのような変化が起きたのか、いくつかのデータから知ることができます。

●EC消費額が伸びる

総務省「家計消費状況調査」の「ネットショッピングの状況について(二人以上の世帯)-2020年(令和2年)11月分結果」によると、支出額は2020年が19,090円で、2019年の14,335円より4,755円伸びていました。
ネットショッピング利用世帯の割合は、2020年は51.8%で、2019年の43.1%より8.7ポイント伸びていました。
ネットショッピング支出額の対前年名目増減率に寄与した主な項目は、「食料」が73.4%でトップ、次いで「家電」70.6%、「衣類・履物」33.2%と続いています。

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出典:総務省「家計消費状況調査(2020年11月分)」
https://www.stat.go.jp/data/joukyou/pdf/n_joukyo.pdf

●ECで売れるようになったもの~巣ごもり需要

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外出自粛により「巣ごもり需要」が生まれました。ECではどのようなものが売れるようになったのでしょうか。

Nint(ECモール内の販売データを集計したり分析したりするツール)による楽天市場、Yahoo!ショッピング(PayPayモール含む)、Amazonの3モールにおける2019年と2020年3月~4月の上位各20商品(全60商品)の月次売上の合計データ(独自のアルゴリズムによる推計値)からは、特徴的な傾向がわかります。

・室内遊具
室内遊具の3月売上は前年比で約3.7倍と大幅に増加しました。例えばトランポリンや鉄棒、フラフープ、ジャングルジム、滑り台、サッカーゴールなどです。

・在宅勤務グッズ
3月売上は前年比約2.3倍に急増。例えば、中古ノートPC、ダイニングチェア、座椅子、オフィスチェア、パソコンデスク、ウェブカメラなどです。

出典:EC Data Lab「巣ごもり消費でEC市場が拡大!? 子供は遊具、大人は自宅をオフィス化に!」
https://ecdatalab.nint.jp/2020/05/08/stay-home-goods-2020/

・ガーデニング市場
「ガーデニング・花」のジャンルも、2019年1月から2020年7月まで大きな伸びを見せました。
昨対比の伸長率は、2020年1月は108%、2月は108%、3月は124%と上昇傾向にあり、緊急事態宣言が出された4月以降6月までは平均で159%でした。平均売上も65億円と市場が大きく伸長し、特徴的なジャンルとなりました。

出典:EC Data Lab「外出自粛でガーデニング市場が急成長!? 「#おうち時間」な趣味が今後はスタンダードに!」
https://ecdatalab.nint.jp/2020/08/19/gardening/

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●コロナ禍に小売店で売れた商品、売れなくなった商品ランキング

では、実店舗で売れるようになった商品、反対に売れなくなった商品にはどのようなものがあるでしょうか。

インテージが、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグストア、専門店などの全国約4,000店舗より収集している小売店販売データSRIによると、新型コロナの感染拡大以降に売れた商品、売れなくなった商品ランキングの10位までは次の結果でした。

●2020年1~10月までの販売金額の前年比のランキング(カッコ内は金額前年比)

1位:マスク(425%)
2位:殺菌消毒剤(302%)
3位:体温計(249%)
4位:うがい薬(220%)
5位:ぬれティッシュ(179%)
6位:玩具メーカー菓子(153%)
7位:せっけん(143%)
8位:プロテイン粉末(139%)
9位:冷凍水産(137%)
10位:プレミックス(136%)

出典:「インテージ 知る Gallery」2020年12月7日公開記事
https://www.intage.co.jp/gallery/2020ranking/

上位は感染対策となる衛生製品が並びます。

6位の玩具メーカー菓子は、玩具メーカーのおもちゃ付き菓子のことで、大ブームとなった「鬼滅の刃」作品関連の商品が原動力となったとされています。

8位のプロテイン粉末は、外出自粛による運動機会の減少に伴う美容健康ニーズの高まりを受け、特に女性を中心に購入する人が大きく増加しました。種類も大豆が主原料のソイプロテインが伸長しています。

9位の冷凍水産には、家庭で手軽に魚貝類を摂取できる健康ニーズや時短ニーズが現れています。プレミックスはホットケーキやクッキーなどの材料となるもので、食事料理を楽しみながら自宅での食事をより一層楽しむという傾向が現れています。

●2020年1~10月までの販売金額の前年比の下位ランキング(カッコ内は金額前年比)

1位:口紅(44%)
2位:鎮暈剤(54%)
3位:強心剤(63%)
4位:ほほべに(66%)
5位:ファンデーション(68%)
6位:化粧下地(72%)
7位:おしろい(79%)
8位:鎮咳去痰剤(79%)
9位:総合感冒薬(79%)
10位:ビタミンB1剤(81%)

出典:「インテージ 知る Gallery」2020年12月15日公開記事
https://www.intage.co.jp/gallery/2020ranking-2/

このように、外出自粛で化粧需要が落ちたことから、化粧品類が減っているのが目立ちます。鎮暈剤は酔い止めのことで、旅行自粛により使用機会が大きく減少したことが要因と考えられます。

●美容とライフスタイルに関して

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では、美容関連とライフスタイルには、どのような傾向が現れているのでしょうか。

株式会社アイスタイルが運営するコスメ・化粧品・美容の総合情報サイト「@cosme」のプロデュースメンバーである15~69歳の女性6,732名を対象に、2020年10月に実施した「美容とライフスタイルに関するアンケート」の結果からは、主に次の傾向がわかり?ます。

・スキンケア需要の高まり
外出自粛が続くなかでベースメイクをする機会が減り、鏡で自分の素肌を目にする機会が増えたことなどから、「時間に余裕のあるこの機会に素肌を整えよう」と、スキンケアを主としたおうち美容への意識が高まりました。

・長引くマスク生活に“マスク肌荒れ”を気にする人が増加
外へ出る機会が増え、マスクをする時間がさらに長くなったためか、「マスクによる肌荒れ」を気にする人は5月調査よりも10月調査のほうが約9ポイント増加しています。

出典:株式会社アイスタイル「美容とライフスタイルに関するアンケート」調査結果
https://www.istyle.co.jp/news/info/2020/11/1110.html

■コロナ禍を受けたECの売上アップのポイント

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このように、消費者の消費傾向や意識は特徴的に変化しています。コロナ禍により、多くの企業がECに取り組んでいることでしょうが、こうした状況を受け、ECの販促・マーケティングの考え方を刷新する必要があると考えられます。そこで、コロナ禍におけるECの売上を伸ばすポイントを探ってみました。

●実店舗の代わりになる顧客体験の提供

EC需要の高まりや、顧客が実店舗に行くのを控えたり、避けたりする傾向があるなか、実店舗からECに転じたアパレルショップが、オンライン接客やスタッフによるコーデ紹介を静止画・動画で提供するなど、実店舗に代わる顧客体験を提供しています。実店舗での購入メリットをいかにECで再現するかが重要といえます。

●コロナ禍を前提とした訴求

マスク生活や在宅勤務など、コロナ禍を前提とした訴求を行うことも一つの方法です。
例えば、ファンデーションの訴求であれば「マスクにつきにくい」、椅子の訴求であれば「テレワークで疲れにくい椅子」などのキャッチフレーズも有効といえます。

●動画配信・ライブコマースの活用

動画による商品紹介や商品販売で顧客の不安を払拭して理解を促し、購入意欲を高めることができるため、売上アップが期待できます。また、動画による引きがあるため、より多くの顧客の流入が見込めます。集客力アップにつながる上、他社との差別化やブランド構築にも役立ち、ブランディングにもつながります。

●SNSや自社アプリで認知を高める

コロナ禍以前はテレビCMや雑誌、実店舗でブランド認知や興味関心を獲得していたブランドも、自宅滞在が増えるなか、SNSや自社アプリ経由での認知獲得にシフトしているケースもあります。SNSでの情報発信や顧客とのコミュニケーション、自社アプリの提供を通じて顧客との接点を増やすことで認知を高めることも一つの方法です。

まとめ

コロナ禍により、消費傾向は大きく変化しました。このようななか、消費者にとってより有益となり、魅力的かつストレスのない販売方法を模索していきたいものです。2021年は、二度目の緊急事態宣言が発令されたことで、さらに別の変化が起きている可能性もあります。引き続き消費者意識や消費傾向の変化をとらえ、通販・ECの売上アップを狙っていきましょう。

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