統合報告書をつくろう <中級編> [Chapter.1] 2年目の課題。どうすればよりレベルの高い開示ができるのか

「はじめての統合報告書をとにかく全力で制作したけれど、2年目はもう少しレベルアップを図らないと…」そのような声をよく耳にします。今回はレベルアップに必要な2年目以降の編集実務のポイントについて、全2回で解説していきます。


[Chapter.1] 2年目の課題。どうすればよりレベルの高い開示ができるのか
・財務情報と非財務情報の統合の進め方
・単なる情報の網羅ではなく、自社らしさを表現したレポートにしたい
・実際の制作プロセス、情報収集の注意点はココだ

[Chapter.2] 統合報告書の重要コンテンツを抑えて、さらにスパイラルアップ
・統合報告書の重要コンテンツの制作、注意点はココだ
・スパイラルアップを図るため、レポートアワードを活用
・Webページとレポートの両方のツールをうまく使い分け


財務情報と非財務情報の統合の進め方

前回の初級編では、はじめての統合報告書をつくる際の製作現場のギモンやお困りごとについて解説しましたが、今回は企業の現場で2年目以降によく突き当たる課題についてです。
まず、よくあるのが「気づいたらアニュアルレポートとCSRレポートの単なる合本になってしまった…」というケースです。このようなお悩みが生じるのはある意味で必然です。そもそも企業は財務的な指標を目安に事業を行っており、組織では財務的価値を生み出すための仕組みができあがっているため、非財務的活動はそれとは違った別の管理フローによって営まれている場合がほとんどだからです。結果として、一般的な企業が素直にレポートを制作すると、どうしても財務情報と非財務情報が分断されたままの状態になってしまいます。しかし、本来「統合=Integrate」とは、単なる合体、並列を意味するのではなく、複数の物事を一つのまとまった働きをもったものにすること。報告書でいえば財務的な側面からの企業価値だけでなく、社会・環境活動やガバナンスなどによる非財務的な自社の価値を統合的に示し、企業が今後も中長期的に持続的に成長する力を持っていることをステークホルダーに伝えることが統合報告書の本来の目的なのです。

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つまり、「当社は社会の未来のために○○○○のような価値を提供する会社として今後も持続的に成長していきたい。だから、財務、非財務の統合的な思考をもって中長期の目標を立てている。そして、それらの財務・非財務目標に対し、全社で達成に取り組んでいる」ということを示す必要があります。統合報告書の制作・編集で最も苦労するのはこの点であり、かつ難易度も高いのですが、レベルアップするには避けて通れない道ともいえるでしょう。
そして、このよう統合的な思考を伝える要となるコンテンツが「トップメッセージ」「価値創造ストーリー」「価値創造モデル」です。これらを抑え、しっかりと統合的思考になっていれば、“アニュアルとCSRの合本”というところからは抜け出せるともいえます。

単なる情報の網羅ではなく、自社らしさを表現したレポートにしたい

次によく聞くのが「必要な情報は網羅されているが、自社らしさがあまり表れていない」という課題です。制作の過程で、専門業者から開示項目のアドバイスをもらうなどして、自社の経営リスクと関連がある項目、国内外の社会的関心事にまつわる項目を挙げていくと結果的に非常に多くピックアップされることになります。そこから、マストな項目を抑えることに懸命になって制作したはいいが、でき上がったものが何か物足りない、自社らしさがあまり見えてこない…といった課題を制作担当者自らが感じたり、役員や社長から指摘されたりすることがあります。
統合報告書は、社外の人やステークホルダーがそれを閲覧することで、他社や海外の会社と比較して評価できるということが重要な目的の一つです。IIRCの統合報告フレームワークや国際ガイドラインに沿った開示が望まれているため、コンテンツ(目次)やデータページはどの企業もある程度、同じようになるのは免れません。しかし、中身のつくり方は実はかなり自由度があります。良い統合報告書をつくりたいと思ったら、制作する際に「自社の強みは何か」「自社の重要課題は何か」「自社がめざすところは何か」をよく考えることが重要です。

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そして、それらを中心に「価値創造モデル」を描いたり「特集ページ」を設けたりして、自社の強みや特徴をしっかりと伝えることで、「自社らしさ」を表現することが可能になります。

実際の制作プロセス、情報収集の注意点はココだ

さて、ここからは、統合報告書のレベルアップと自社らしさ強調を成功させるための制作プロセスのポイントを挙げてみたいと思います。

●情報収集のポイント①部門ヒアリング

会社にはそれぞれほかにはない強みや実力があります。しかし、社内にいる人がそのことに気づいていないケースもあります。多くの場合、統合報告書の制作者はまず、その会社がどのような取り組みをしているかについて、現状を各部門にヒアリングします。(Webミーティングやヒアリングシートを活用することもある)。そこで、会社がどのような目標をもってどの方向に進んでいるのか、他社にはない強みは何なのかを探り、それらを知ったうえで会社の統合的な価値を伝えるためのコンテンツづくりに着手します。

●情報収集のポイント②取材・撮影・インタビュー

ページ構成とコンテンツの企画ができ上がると、いよいよ素材集めです。「トップメッセージ」「特集記事」「対談」「ダイアログ」など、人物が登場して語る重要パートは、取材、撮影、インタビューを設定します。新たな事業や技術、製品、マテリアリティやサステナビリティビジョンなどが関わるページについても、既存の資料が整っていない場合が多いのでしっかり取材を行います。取材をすることによって、会社の個性や良さがしっかりと伝わる記事作成が可能になります。

[Chapter.1] のまとめ

2年目の課題。財務情報と非財務情報の統合をどうするか
→アニュアル、CSRレポートの単なる合本はNG。統合的な思考で全社の目標に取り組む姿を表わす。

自社らしさが表れたレポートをつくりたい
→コンテンツの中身のつくり方は自由。「自社の強みは何か」「自社の重要課題は何か」。「自社がめざすところは何か」をよくよく考えることが重要。

情報収集のポイント①部門ヒアリング
→会社全体の強みや取り組みは、社員には見えていない。全部門ヒアリングをしてみる。

情報収集のポイント②取材・撮影・インタビュー
→重要コンテンツ、新コンテンツは取材・撮影・インタビューが望ましい。

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