企業にとって「周年事業」とは、自社のブランド価値向上やステークホルダーとの関係強化といった経営課題・事業課題を解決する絶好の機会です。今回は、創業60周年記念式典・祝賀会を通じてこれらを実現したカネマサ流通グループの代表取締役社長・金澤向志さまと式典プロジェクトのリーダーを務めた株式会社マルマサフード・営業企画室長の石黒靖恵さまに、準備段階のプロセスや重要なポイント、パートナーとしてサポートした当社に対する評価などをお伺いしました。

ファシリテーター:HintClip編集長 杉山毅

経営理念「革新と挑戦」のもと、青果仲卸から新領域へ

杉山:60周年記念式典・祝賀会(以降、式典)について伺う前に、カネマサ流通グループの企業概要について教えてください。

金澤:当グループは1964年、大阪市東部中央卸売市場に仲卸として金正青果(株)を設立したのが始まりです。1976年には外食向け販売会社として(株)マルマサフードを設立し、約30年前からはカット野菜の製造分野に進出し、某大手ファストフードチェーンさまとも取り引きをしています。また、2017年には(株)マルマサフード物流サービスをグループ化しました。

石黒:卸売業、カット野菜などの製造業、そして物流業という3本柱で事業を展開しています。

また、当グループは小売業にも進出しており、今まで手がけてこなかった青果の小売業を2024年から新たに開始し、商業施設内への出店も行っています。創業60周年を機に、2025年2月にはフルーツギフトのECサイト「アグリセレクト」もスタートさせました。

金澤:当社は「革新と挑戦」を経営理念に掲げています。小売り事業もEC事業も新たな挑戦です。

杉山:まさに「革新と挑戦」の60年だったのですね。

式典の目的は「お取引先さまへの感謝」

杉山:60周年事業では、具体的にどのような施策を展開されたか、お話しください。

金澤:「記念式典・祝賀会」に集中しようという考えでした。50周年の際も記念式典・祝賀会のみを行っており、それを踏襲した形です。

杉山:式典の目的を教えてください。

金澤:「お取引先さまへの感謝」です。当社が事業を展開できるのは、卸売市場や生産者さまの支えがあってこそ。60周年を機に、感謝の気持ちをしっかり伝えようと考えました。
また、私は2019年11月に社長に就任したのですが、その直後にコロナ禍となり、お取引先の皆さまには直接お会いしてご挨拶する機会をなかなかつくれませんでした。そのような事情から、この式典はグループのトップとしての「就任挨拶」という意味合いもありました。

石黒:お取引先さまへのメッセージであると同時に、社員にとっても、社長の考えやこれからの方向性に触れられる機会となりました。コロナ禍で社長と接する機会が減るなか、その想いを知りたいという声が社員の間でも多くありました。

2年前から準備開始。社内にプロジェクトチームを結成

杉山:式典は2024年の11月に実施されましたが、プロジェクトはいつ頃スタートされましたか?

金澤:2024年7月が60周年、式典は同年11月頃に行いたいと考え、約2年前の2022年末頃、コロナ禍のなかでスタートしました。

杉山:体制づくりについてもお聞かせください。主管部門はどのように決めましたか?

石黒:50周年の時と同じく総務人事部が担うことになりましたが、人手が足りなくなるだろうということで、私が所属する営業企画室も加わり、プロジェクトを結成しました。

金澤:役員1名がプロジェクトリーダーとなり、実務を総務人事部と営業企画室が担当する、という感じですね。ほかの部署にもその都度協力を仰いでいます。

企画段階は「合意形成」がカギ

杉山:プロジェクト運営において大変だったことや工夫したことはありますか?

金澤:社長・役員・事務局の意向がうまく揃わないことはありました。もちろん会議で議論はし尽くすのですが、結論を出せずに時間切れ…ということは少なくなかったですね。

石黒:そんな場合は、事務局が取りまとめた方針やアイデアなどを、役員一人ひとりに、対面で丁寧に説明をして合意を得ることが多かったですね。議論の場では意見が出なくても、個別の対面では不思議と理解を得られました。これを積み重ねていった感じです。

杉山:根回しあっての合意形成が、成功の鍵というわけですね。

石黒:そうですね。当社は大阪に本社がありまして、役員の大半は大阪にいるため、個別の合意形成は大阪のメンバーが率先して動いてくれました。私が東京にいる分、現地の動きは非常に心強かったです。

「架け橋」をコンセプトに詳細を決定

杉山:式典の具体的な内容について教えてください。「架け橋」をコンセプトにされたようですね。

石黒:当グループの基盤とも言える「感謝と挑戦」を基本に据え、2023年度にスタートした中期経営計画における基本方針「生産者と生活者を繋ぐ価値ある架け橋となる」をコンセプトに設定しました。60周年記念ロゴマークは、60という数字と共に金色の架け橋をあしらっています。

60th ANNIVERSARY

杉山:式典内でのコンテンツについても、お話しください。

石黒:第二部の祝賀会では、書道家・青柳美扇先生によるライブパフォーマンスで、「感謝」の文字を巨大なパネルに揮毫していただきました。
このパフォーマンスには、当社にかかわるすべての皆さまへの感謝の気持ちを込めており、作品は現在、大阪本社に展示しています。

※揮毫(きごう)とは、毛筆で文字や絵を書くこと。特に、著名人や書家が依頼されて書くこと。

杉山:インナーブランディングの機会としても活用されていましたね。

石黒:はい。グループ各社はそれぞれ異なる業種を担っており、「価値ある架け橋」となるための答えも人それぞれです。だからこそ、社員一人ひとりにとっての「わたしの価値ある架け橋とは」というメッセージを考えてもらい、それをスライドにまとめて式典で上映しました。

この取り組みは、インナーブランディングとしても非常に意味のあるもので、式典後にはWeb社内報でも社員向けに公開しています。

私の価値ある架け橋とは

社長自ら、想いを伝える

杉山:式典での社長のご挨拶で、伝えられた想いについて、お聞かせください。

金澤:さまざまな状況から、今回の式典では、社長である私自身の言葉で、しっかりと想いをお伝えする必要があると強く感じていました。ご挨拶では、創業から現在に至るまで、三代にわたって事業を続けてこられたこと、そして何よりその歩みを支えてくださった皆さまへの感謝の気持ちを、心を込めてお伝えしました。

また、コロナ禍による厳しい時期を経て、お取引先や仕入れ先の皆さまのご支援のおかげで黒字回復を果たすことができたこと、その感謝も改めてお伝えし、そして、これからの未来に向けて、引き続き皆さまと共に活躍の場を広げ、躍進していきたいという想いを込めました。少しでも安心して今後もお取り引きを継続していただき、より良い未来を一緒に築いていければと願っています。

杉山:グループの新たな挑戦についても、語られましたね。

金澤:当社の歴史は、「感謝」と「挑戦」に支えられてきました。そしてその精神は、今も確実に受け継がれています。式典では、その想いに触れながら、小売事業やEC事業などの新たな挑戦に挑んでいること。そしてこれからも変化を恐れず進んでいく姿勢についてお話ししました。

式典の主な内容

  • ●オープニングアタック映像
  • ●ご挨拶(名誉顧問・社長)
  • ●60周年記念映像
  • ●本部長紹介(仕入・製造・物流)
  • ●ご祝辞
  • ●鏡開き
  • ●エンタテインメント(芸妓・舞妓による演舞、弦楽三重奏、書道パフォーマンス)
  • ●社員の「価値ある架け橋」メッセージ
  • ●お食事(自社調達の野菜を使用)

お取引先さまや社員とのエンゲージメントを高める

杉山:式典を実施することで、どんな効果が得られましたか?

金澤:私が自らメッセージをお伝えしたことで、理念やビジョン、業績だけでなく、「カネマサ流通グループはどんな会社なのか」という、人柄的な部分も伝えることができました。取引先の皆さまからは「よく伝わった」「安心できた」「最高だった」といったご評価をいただき、当社への信頼感が高まったと思います。本当にやってよかったですね。

杉山:社内に対しては、いかがでしょうか?

石黒:社長の考え方だけでなく、熱意もしっかり受けとめてもらえたと思います。感動していましたね(笑)。特に東京など関東の拠点にいるメンバーは社長に会う機会が少ないため、よい機会になったと思います。

60年目の新たな挑戦、EC事業「アグリセレクト」

杉山:式典で発表された新規事業について、ご説明ください。

金澤:はい。新たにスタートしたのは、BtoBのギフト需要に対応するフルーツギフトのECサイト「アグリセレクト」です。これは、フルーツの取り扱いを強化するという当社の方針のもと、ギフト加工機能に力を入れながら展開している新規事業です。

お中元やお歳暮といった季節の催事に合わせて贈られることの多い果物ですが、私たちはそれを“贈り物”にとどめず、全国各地の本当においしい旬の果物を、もっと多くの方に“味わっていただく機会”として広げていきたいと思っています。仲卸のプロによるたしかな目利きと、業界トップクラスの調達力を生かしながら、四季折々の果実を通じて、「おいしい」という感動をお届けできるよう、取り組んでいます。

石黒:式典では、本サイトのソーシャルギフト機能を活用し、お客さまへのお土産としてご利用いただきました。会場では、二次元コード入りのギフトカードをお渡しし、そこからお好きなフルーツを選んでいただくと、後日ご自宅へ配送される仕組みです。

これにより、会場での鮮度管理やお土産の準備が不要となり、運営側の負担も軽減されました。招待者の皆さまにとっても、大きな荷物を持ち帰る必要がなく、スマートにお楽しみいただけたと思います。

「家に帰って家族と一緒に選んだ」「どれにするか悩む時間も楽しかった」といった声も多く寄せられ、皆さまの笑顔がとても印象的でした。

金澤:おかげさまで、サイトのユニークユーザー数やページビューは順調に伸びてきています。さらに最近では、ほかのギフト事業者さまや食品通販サイトさまなどからも、出店や商品提供のお声がけをいただくようになりました。

少しずつではありますが、私たちの取り組みに共感いただける広がりを感じており、今後への手応えを感じています。

杉山:新たな挑戦がビジネスの拡大につながっているわけですね。

アグリセレクト

アグリセレクト

アグリセレクト

共同印刷は「理解度の高いパートナー」

杉山:最後に、今回の式典の企画・進行パートナーだった共同印刷に対する評価をお願いします。

金澤:共同印刷とは一般社団法人全国スーパーマーケット協会での活動を通じて知り合い、そのご縁で式典についても相談し、パートナーとしての参加を依頼しました。

石黒:特に高く評価しているのが、当社を深く理解しようとする姿勢です。企画初期の段階で、役員に「どんな式典を理想と考えているか」「どんな点を課題と感じているか」など、詳細なヒアリング調査を行い、そこから課題を整理し、基本方針案を提案してくれました。

金澤:このプロセスがあったことで、当社と共同印刷とが同じ方向を向き、同じゴールをめざしてプロジェクトを進めることができました。

杉山:「顧客理解」は当社の企画制作部門の大きな特長です。70周年の際も、ぜひ当社にご相談いただければと思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました。

※スーパーマーケットに関する調査・研究を行う団体。展示会「スーパーマーケット・トレードショー」「デリカテッセン・トレードショー」を主催している。

カネマサ流通グループ

グループ代表

金澤 向志(かなざわ ひさし)

2007年菱食 (現:三菱食品) 入社。2010年マルマサフード入社、2016年同社社長就任。2019年よりカネマサ流通グループ代表。ホールディングス体制の確立や拠点展開を推進し、青果卸売・小売・製造・物流・ECなど多様な事業を統合的にマネジメント。「価値ある架け橋」の実現をめざす。

株式会社マルマサフード

営業企画室 室長

石黒 靖恵(いしぐろ やすえ)

2015年マルマサフード入社。営業企画室長として、商品開発・提案企画・販促企画・通販事業・SNS発信など幅広く担当。EC事業「アグリセレクト」や情報誌「カネマサマガジン」の運営を通じ、グループの価値向上に取り組む。室内には開発チームも抱え、未来志向の情報発信を模索中。

カネマサ流通グループ

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