「広報部門での自社の周年事業の統括責任者」と「企画制作部門でのお客さまの周年事業のディレクション」の両方を経験した筆者だから書ける、事業計画書を作成するための心構えと実務のポイントをまとめたコンテンツの後編です。前編「戦略編」に続き、具体的な施策・メディア・ツールなどを策定するための「戦術」をまとめました。
また、本稿とは別に、詳細な実務の考え方や手順をまとめたハンドブックを用意しています。こちらもぜひダウンロードしてください。

HintClip 編集長 杉山 毅

戦術立案で押さえるべき「5つのポイント」

下図は、周年事業計画の後半部分となる「戦術立案業務フロー」です。後編ではこの図の流れに沿って、戦術立案で押さえるべき「6つのポイント」を説明します。

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[ポイント1] 戦術の方向性は、思い切って絞り込む!

戦略立案段階で絞り込んだ目的・ターゲット・コンセプトから、戦術立案段階での軸となる方向性を導き出します。目的やターゲットを複数設定すると方向性も必然的に複数になりますが、多くなり過ぎると論理性に矛盾が生じやすくなるため、お勧めできません。5~6件以内にまとめると、わかりやすい事業計画に仕上がります。
なお、ダウンロード資料では、方向性を4つにした場合について解説しています。

[ポイント2] 施策・メディア・ツールの決定は論理的に!

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絞り込んだ方向性ごとに、具体的な施策・メディア・ツールを決定します。ロジカルに考えることがポイントです。事業計画が論理的に整理されていれば、円滑に決裁されやすくなります。
具体的な例として、ダウンロード資料で提示している4つの方向性のうち、「市場機会の創出」について説明しましょう。この方向性は、話題を拡散しやすい周年を機に、新たなビジョンの発信や新規事業の立ち上げ、新製品の発売などを行うことを目的としています。ターゲットは、お客さま、見込み客、一般生活者です。したがって、施策は広告活動や販促活動が中心に。それに適したメディアの活用やツールの制作・配付などを行うことになります。
他の方向性についても、同様の考え方で策定しましょう。

[ポイント3] 式典は「ニューノーマル」の視点からも検討を!

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新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより定着したビジネス上の新たな価値観や習慣は、収束後も「ニューノーマル」として定着し、新たな常識になっていくと思われます。当然ながら、この傾向は周年事業にも影響を及ぼします。特に大きな影響を受けるのが式典・イベントです。今後はイベントホールなどに多人数が集まるスタイルが見直され、オンライン化が進むと予想されます。
オンライン開催のメリットは、「移動」をなくせることです。国内外の各地から本社所在地へ、社員が出張して集まる「時間」と「コスト」を抑制できます。また、オンラインでのライブ中継は5Gなどの新しい通信技術により品質向上や低コスト化が進んでいるため、以前より活用しやすくなっています。
一方、オンライン開催には「一体感」「臨場感」が感じにくくなるという欠点も…。そこでお勧めしたいのが、オンラインとオフラインを併用する「ハイブリッド形式」での開催です。開催目的や参加対象者などを勘案しながら検討しましょう。

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[ポイント4] スケジュールの読み違いは取り返しがつかない!

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企業の周年は創立日を起点に10年・20年と定期的に訪れるため、長期スケジュールを立案しやすいはずなのですが、実際にはなかなか着手できないことも…。この傾向は、周年事業の「あるある」かもしれません。
しかし、周年事業はスケジューリングが非常に重要です。式典・イベントの開催日、社史の配付日、広告の出稿期間、キャンペーンの実施期間などは、多くの場合「創立記念日」を中心に実施されるため、基本的に遅延や延期ができません。一方で、個々の施策やツールは準備に長い期間を要します。例えば、社史の編纂やコーポレートブランドの再構築には、一般的に2~3年が必要です。また、式典の会場は早めに確保する必要があります。したがって、事業計画を時間軸に落とし込む作業は可能な限り早めに行いましょう。
スケジュールは、まず「マスタースケジュール」を作成してから、個々の施策のスケジュールに着手すると、事業全体も個々の施策も流れを把握しやすくなります。マスタースケジュールづくりで重要なのは、時間の配分です。下図では、どのフェーズも1年を目安としてほぼ同程度の時間を割り当てています。例えば①企画フェーズや②準備フェーズでは、基本方針や体制構築などの「基盤づくり」にしっかり時間をかけられるようにしています。他のフェーズも同様に、十分な時間が必要です。
スケジュールは作成だけでなく、「進捗管理」も重要です。周年事業では多くのプロジェクトが同時に動き、状況は常に変化します。スケジュールを読み違えて「気付いたときには手遅れ」とならないよう、定期的に進捗会議を開催しましょう。

マスタースケジュールのフェーズごとの実施内容と作成のポイント

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※詳しい説明は、記事末から「周年事業計画立案ハンドブック」をダウンロードしてお読みください。

[ポイント5] 周年事業計画は、予算で始まり予算で終わる!

少し大げさな見出しをつけましたが、総予算が決裁されれば、周年事業計画の立案は終わったも同然。登山でいえば山頂に到達した段階です。とはいえ、油断は禁物。最終予算案がまとまったら、基本方針や方向性に基づいて適正なバランスの予算配分ができているかを、必ずもう一度見直してください。
予算を策定するだけでなく、実際の費用を予算内に納められるようにするのも、事務局の重要な役割の一つです。各施策の進行中における予算管理もしっかり行いましょう。周年事業は準備期間が長いため、各施策が進行途中で仕様や規模、期間など、さまざまな面で変更が生じやすくなります。各プロジェクトリーダーには、変更が発生したら速やかに再見積もりを取るよう指示してください。

[まとめ] 周年事業は、企業風土を変えて事業を成長させる好機!

前編・後編の2回にわたって、周年事業計画立案の心構えと実務のポイントを説明してきました。
実施段階では、社員の意識を変えて企業の成長につなげることを目標にしましょう。そのためには、社員全員を「巻き込む」こと、そして周年事業を各社員の「自分事」にするのが大切です。社員アンケートやコミュニケーションツールなどをうまく活用してください。また、早期の段階から専門性の高い制作会社に協力を仰ぐことを忘れないでください。

周年事業計画立案のために、詳細な実務の考え方や手順をまとめたハンドブックを用意しました。事業を推進する中心メンバーと共有して、事業計画書づくりにお役立てください。

共同印刷株式会社

トータルソリューションオフィス ディレクター

杉山 毅

1982年共同印刷株式会社入社。商業印刷部門の企画営業を経て、1987年よりセールスプロモーション部門でクライアントの事業戦略・マーケティング戦略のプランニングから、広告・広報・販促の各種ツール・メディアのクリエイティブ・ディレクションを担当。2008年からコーポレートコミュニケーション部門にて広報、IR・総会、CSRなどを部長として担当。2017年の自社の創立120周年では、CIとコーポレートブランド構築を含む周年事業の全体を統括管理。2020年から4月から現職。

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