食品・日雑品などの値上げは2022年1月からはじまり、現在(2025年7月)もまだ続いています。また、2025年の値上げは1月から10月までの累計で1万6,224品目、前年同時期で約3割増と予想されています。これらの値上げは、原材料価格の高騰・人手不足・光熱費の上昇などが要因とされています。

これからの時代、メーカー企業は小売りとの商談において、常に商品の値上げが前提の商談となります。

私は毎年6月に「合宿」と題して、小売りやそこに携わる皆さんと小売りのなかにある課題やその対策・解決策について膝を突き合わせて話し合い、解決案や施策を考える行事を行っています。

そのなかで上位に挙がるテーマに「値上げが止まらない時代に小売りとメーカー企業は売り場で何を行うべきか?」という難題があります。

今回のコラムでは、このテーマをメーカー企業の視点で考え、今後の小売りへの提案活動に役立つであろう4つのヒントをご紹介します。

株式会社リテイルインサイト 代表取締役 倉林武也

2022年から売り場で行われていること

値上げの時期を見てみると2022年から4月・6月・10月と特定の月に値上げが集中していることがわかりました。

値上げの対象になる商品の部門(カテゴリー)においては、値上げの前の月や週になると「商品値上げの直前セール!」や「まとめ買いの訴求」が行われてきました。

ビールやお酒などの嗜好品の値上げの直前では、こうした取り組みや販促が顕著に展開されていました。

また、調味料や加工品など保存期間の長いものは、必要以上の数をまとめ買いをされる姿もあり、販売をする小売りにおいても留意する展開でした。

今年2025年は、2022年の値上げラッシュに匹敵する規模となる指摘がされています。特に2025年春頃からは米不足による米の価格高騰とも重なり、人々の生活は一層逼迫したものになっています。

現在、政府による米の流通対策が行われていますが、小売りの店頭や売り場を見る限りでは、まだ価格・量ともに安定した供給がされているようには感じられません。

こうした時代において小売りが考えること

小売りの使命は「足もとの商圏の生活を豊かにすること」であり、安定した価格による商品の提供が欠かせません。

値上げが続くなかでも、少しでも販売価格への転嫁を押さえたり、PB商品の推奨やお米など高騰する商品の代替品の提案を行ったりしています。

NB製品に比べて利益の獲れるPB商品は、小売りにとっては〈新しい戦略商品〉として積極的な開発や販売の姿が見られます。

このテーマについては前回のHintClip(7月掲載)の記事でも取り上げました。小売りに取り組むメーカー企業は、このPB商品と対峙することなく、NB製品との共存を考えるなど以前にはなかった発想や姿勢が求められています。

では、メーカー企業はどのようなテーマで小売りに取り組むか

メーカー企業もこの数年は自社の製品の値上げやその説明など難しい交渉が続いており、「なんとかこの状況を突破したい」「値上げ以外の話がしたい」など、この気持ちは小売り側においても同様です。

そこで、多くの企業が値上げによる価格条件による交渉が中心になるなかで、新しい切り口や伝え方についていくつかポイントを挙げてみました。

原料の仕入れ・製造コスト・人件費・物流費などメーカー企業が自社で行える工夫を前提にしたものですが、今後のヒントや小売りへの取り組みの改善につながればと思います。

(1)自社の製品のこだわりやブランドストーリーを掘り下げる。

原材料や人件費の値上がりから、同一カテゴリーにおける他の企業の製品も横一線の値上げが行われています。

そのようななかでも自社製品のブランドコンセプトや、品質など、“値上げの時代だからこそ伝えたいこと“に目を向けてみます。

「価格」ではない「価値」をアピールすることは簡単なことではありませんが、そこに注力している企業もあります。

たとえば、星のマークをあしらったパッケージで知られるビールメーカーの事例を挙げてみます。星のマークには、もともと「開拓者精神や、人々に輝きを提供する」というブランドの想いが込められています。

同社では、改めて「周りを気にして丸くならずに、自分らしく生きて、星のように輝こう」というメッセージをデザインした缶ビールを発売しました。このメッセージが、お客さまから支持をされています。

製品へのこだわりや、ブランドストーリーがそれを見る人に共感を持たせる発想です。

食品、飲料から化粧品、日雑品、家電などすべてのカテゴリーに共通して活用できる施策といえます。

(2)商品や製品が値上げされるなか、自社の製品で生活者の暮らしを応援する。

値上げは決して食品や飲料などに限ったことではありません。

電気料金やガス料金、水道料金も既に値上がりしています。

食品保存や包材を扱うメーカー企業、シリアル食品・菓子のメーカーは、電気やガスを使わない食品の保存方法や食べ方を自社の製品で提案しました。

保存や包材のメーカー企業は、自社の製品を使って食品の保存を行うことから、買い物による出費を抑えて貯金につながる「冷凍貯金」を提案しました。

また、シリアル食品・菓子のメーカー企業の行う「節電朝食」は、シリアルによる朝食習慣(メニュー)により、節電につながることを小売りの売り場やWebサイトを使って啓蒙しました。これは現在でも売り場における訴求として見ることができます。

(3)暑さ寒さも厳しい時代に、自社の製品で対策(解決)する。

この数年、夏は猛暑酷暑など厳しい暑さが続き、また冬は一変して厳しい寒さが到来するなど、世界的な気象変化や異常気象が起こっています。

暑い夏や寒い冬にスタミナをつけるメニューの提案は小売りにおいては昔から行われる企画ですが、最近は自社の製品に糀を使用したメーカー企業が「夏のカラダケア」として健康や美容への糀の効果を伝えています。

一方で寒い季節になるとメーカー企業の製品に「温活効果」があると、寒さや冷え性の対策として同じようにアピールする展開を目にします。

自社の製品を使って生活者(買い物客)のどのような厄介な課題を解決するか。皆さんの製品でも考えてみてください。 

(4)SDGsや環境保護に取り組む活動を見直す。

多くの企業の活動においてはSDGsや環境保護に関する取り組みが見られます。

小売りにおいてもこれらは常に関心が高いテーマであり、生活者(買い物客)との接点としても活用されています。

メーカー企業が取り組むこうした活動を、小売りへの販促活動のテーマとして取り上げ、イベントや催しにつなげて展開することも、価格政策(値段に関する交渉の領域)から切り替えるひとつの方法です。

まとめ

今回、値上げの時代にメーカー企業が小売り業へ提案・取り組むための4つのアイデアを紹介しました。メーカー企業の皆さんも小売りのビジネスに携わる身であると共に、一人の生活者でもあります。

残念ではありますが、まだまだこうした値上げの時代はしばらく続くものと考えられます。小売り業に提案活動を行う際でも、視点を変えることや情報を駆使して「自分たちの製品が小売りや生活者にどのように向き合うか。」「そこにある課題を解決することに自社の製品はどのように役立つか。」を考える必要があります。

この時の唯一の“コツ”は、常に相手の視座(立場)でモノゴトや課題を捉えようとする考え方を持てるか否かかと思います。ぜひ試してみてください。

株式会社リテイルインサイト

代表取締役

倉林 武也

2018 年に流通小売業やメーカー・事業会社のマーケティング領域におけるコンサルティング業務を担う会社として起業。営業戦略や販売の支援、社内組織の活性化や社員の育成(ナレッジや Teams や LINE などプラットフォームを使用した活動支援)を行う。近年、広告・コミュニケーションや販売促進のあり方が大きく変わるなか、リアルな「場」(チャネル)や商談における課題をインサイトの抽出やデジタルを含む方法で最適解や将来に向けてのあるべき姿を追求。JPM(日本プロモーショナルマーケティング協会)アワード最終審査員 宣伝会議「ビジネスプロデュース力養成講座」「行動デザイン講座」ほかに登壇

私たちがお役に立てること 売り上げに直結する店頭販促サービス これまでの店頭販促のノウハウに加え、「累積店舗データベース420万件」と「28万人の人材ネットワーク」からお客さまの課題に合った店頭販促・店舗運営サービスを提供。 詳細はこちら

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