通販メディアの生産性をアップするには、前編のテーマである顧客理解に加えて、メディア戦略の再構築、そしてメディア全体のワークフローの見直しが必要です。
後編では、顧客とのタッチポイントの中核をなすカタログとWebサイトを中心に、クリエイティブの効率化について解説します。鍵となるのは「商品基軸」という視点です。
原稿執筆:共同印刷株式会社 コミュニケーションデザインセンター コンテンツプロデュース部第二部第三課 課長 牛久 敦
オンラインとオフラインの役割明確化が売り上げ増につながる
(1)消費者の購入行動における情報源と購入先
消費者は商品を購入する際、年代に関わらずWebサイトやSNSなどのオンライン媒体を情報源とするのが一般的です。その流れをシンプルにまとめると、以下のようになります。
この図からわかるように、現在は情報収集にはWebサイトやSNS、カタログなどさまざまなメディアが使われています。一方で、購入にはECやリアル店舗が使われます。
カタログだけで情報収集から購入までが完結するスタイルは減っているようです。
(2)媒体の活性化・充実化と役割分担
これらの傾向においては、以下の2点が重要になります。
①オンライン媒体の活性化
ECをはじめとするオンライン媒体を活性化させることが重要です。この「活性化」には、商品訴求の表現、検索・購入機能の充実化、情報の即時性、顧客コミュニケーション、そしてMD(商品政策)などが含まれます。次に説明する②を意識することも重要です。
②カタログとECの役割分担
通販ビジネスにおいては特に媒体利用率が高い「Webサイト」と「紙のカタログ(以下『カタログ』)」という二大媒体の、役割を明確に分担する必要があります。それぞれの内容や機能を、役割に応じて充実させることが売り上げ拡大の鍵となります。
「発行サイクル」という課題
(1)なぜ「発行サイクル」が問題を引き起こすのか
一般的に、通販事業者におけるカタログの発行サイクルは年4回が多いようです。一方、ECなどのオンライン媒体は毎月あるいは毎週更新が一般的。新商品の発売と同時にECにも登録するのが当然となっています。
つまりオフライン媒体とオンライン媒体では、発行サイクルが異なっています。これにより、さまざまな問題が生じるようになりました。
(2)「発行サイクル」の違いが引き起こす問題
①MDの複雑化
カタログが通販におけるメインのメディア(売り場)だった時代は、多くの事業者がカタログ発行サイクルに合わせてMDを展開していました。しかしメディアが多様化した結果、「MDのプロセスが複雑化・煩雑化した」と感じる事業者が多いようです。
②制作フローの複雑化
カタログ制作用に撮影を行ったものの、カタログ発行前に掲載情報をECで使う…といったケースが増えた結果、原稿制作管理および原稿自体の管理が複雑化しています。
③業務負荷の増大
①②により、カタログやECの担当者の業務負荷は増加傾向に。部門間での原稿の共有や連携にも問題が生じています。
④販売機会の損失
MD同様、多くの事業者がこれまでメインのメディアだったカタログの発行予定に合わせて商品撮影を行っていました。
しかし、発行サイクルの長いカタログに撮影を合わせてしまうと、カタログ発行までその商品の写真がないという事態が発生。カタログに先行してECで販売を開始できなくなります。これが最大の問題かもしれません。
「商品基軸」で課題解決
(1)スキーム改革の必要性
オンライン媒体の情報を充実化し、発行サイクルの違いによって生じる「販売機会の損失」などの問題を解決するには、オンラインとオフラインが併用される現在のメディア設計に合わせて、制作スキームを改革する必要があります。
これを実現するための手法として共同印刷がお客さまにお勧めしているのが、「商品基軸のワークフロー」の構築です。
(2)「商品基軸」とは
「商品基軸」とは、メディアの発行ありきではなく、商品を基軸にして、つまり「商品を売ること」を優先してワークフローを設計するという考え方です。
前述のように、これまで商品撮影をはじめとするクリエイティブ作業は、メディア(特にカタログ)の発行予定に合わせてスケジューリングされがちでした。
これを商品基軸にすることで、複数のメディアを常に展開する現在の通販スタイルに最適化したワークフローを確立します。実現できれば、ある特定の媒体の制作スケジュールに縛られることなく、より自由に、さまざまな売り場やタッチポイントでの商品訴求が可能になります。
(3)商品基軸を実現するためのポイント
①「売るために必要な要素」という視点で考え、まとめる
商品ごとの特長を消費者に伝えるために必要な要素に関するオリエンを行います。この際、情報を効率的にまとめるために専用の手法やフォーマットを用います。これにより、汎用性の高いオリエンを実現します。
②カタログ・Webサイトの両方を踏まえた撮影管理・素材制作管理
「媒体ごとの撮影」を行うのではなく、商品の特長を消費者に伝えるための「商品訴求に必要な撮影」を実施します。
また、撮影した素材写真は媒体を問わず使用できるよう「共有・管理」する制作フローにすることで、撮影管理・素材管理の業務負荷を軽減できます。
③スピーディーな運用と安定した品質管理
各素材のファイル名ルールを汎用性があるものにすることで、大量の画像・素材ファイルの管理を効率よく行うことができます。
商品基軸の実現に不可欠な「CMSフォーマット」
(1)「CMSフォーマット」とは
「CMSフォーマット」は、カタログ用の撮影ラフを作成せずに、商品訴求に必要な撮影写真・コピー・スペックなど、制作に必要な商品情報を一括管理するための情報共有ツールです。
《フォーマットのイメージ》
(2)CMSフォーマットの運用方法
CMSフォーマットは以下の流れで運用します。
商品情報を適切に入力することで、制作フローが飛躍的に効率化します。
商品基軸ワークフローのスケジューリング
毎月決まったタイミングで定期的に撮影を行うことで、スピーディーかつ効率的なメディア制作を実現します。
具体的には、撮影が完了したらデータをCMSに登録し、速やかにWebサイトに情報をアップできることを念頭に置き撮影を行います。
カタログ制作の際は、定期撮影での写真データをCMSから取り出して活用します。また、必要な場合には追加の撮影を行います。
商品撮影とメディア制作のスケジュールの組み方
商品基軸ワークフローのスケジュールのイメージは以下のようになります。
Webサイトが毎月更新で、カタログが年4回発行の場合の案です。
まとめ
Webサイトやカタログなどさまざまなメディアを活用する通販事業者では、「商品基軸」によるワークフローを確立することで、効率化や販売機会の損失防止を実現できます。すでにいくつかの事業者が、このワークフローで課題解決を実現しています。
共同印刷には、今回ご紹介したワークフローのような、オンライン・オフラインで展開する複数のメディアを一括して企画制作するノウハウがあります。貴社の状況や課題に最適な提案を行うことが可能です。気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。

共同印刷株式会社
コミュニケーションデザインセンター コンテンツプロデュース部第二部第三課 課長
牛久 敦
化粧品メーカー、デザイン制作会社を経て、2007年共同印刷入社。企画制作部門で通販カタログを中心に、カタログ・情報誌・DMなどの紙媒体のディレクションを担当。近年はマネージャーとして、コンテンツ制作の強みを生かし、紙媒体とデジタルの融合をテーマに取り組みを行っている。
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