近年のデジタルマーケティングにおいて、顧客の広告回避行動、サードパーティークッキーの規制*、広告費の増加などの要因により、自社で管理するオウンドメディアの重要性が高まっているといわれています。

この記事では、オウンドメディアの定義から、運用目的、運用方法までを解説します。
オウンドメディアについて改めて認識を固めたいマーケ・販促担当の皆さまにお薦めの入ガイドです。

HintClip編集長 杉山 毅

*サードパーティークッキーの規制:アクセスしたWebサイトのドメインから発行させるファーストパーティーとは別の、第三者のドメインが発行するクッキーのこと。アクセスしたWebサイトに広告を掲載している広告代理店などが、この第三者となります。ドメインをまたいだ広告出稿などの目的で発行されています。近年はユーザーのプライバシー保護の視点から問題視されています。

オウンドメディアとは

オウンドメディア(Owned Media)とは、企業が自ら所有し運営するメディアのことを指します。具体的には、コーポレートサイトやブログ、コンテンツメディア、アプリ、SNSの公式アカウント、メルマガなどが該当します。

デジタルマーケティングの領域で語られることの多いオウンドメディアですが、企業が発行する会報誌やカタログ・パンフレット、イベントやセミナーといったオフラインのツール・イベントもオウンドメディアといえます。

オウンドメディアに「ペイドメディア(Paid Media)=企業が広告費を払って行う情報発信」「アーンドメディア(Earned Media)=広告費を支払わない第三者による情報発信」の2つを加えた、「トリプルメディア」という3つのメディアを効果的に組み合わせてマーケティングを設計するのが一般的です。

《トリプルメディア》

オウンドメディア ペイドメディア アーンドメディア

しかし、冒頭に述べたように、近年のユーザーの広告回避やサードパーティークッキーの規制により、ペイドメディアでの顧客コミュニケーションが難しくなっている点や、自社コントロールによる適切な情報発信、蓄積し資産化したコンテンツによるSEO強化、顧客の詳細な行動データ・ニーズ分析の観点からも、オウンドメディアの重要性が高まり各社が取り組みを進めています。

オウンドメディアに取り組むメリットを再整理すると以下のようになります。

継続によるコストメリット

広告に比べ初期費用はまとまった額になりますが、長期的にはコンテンツの蓄積によるオーガニックでの獲得により、広告費用の削減が期待できます。

適切な情報発信

コンテンツの内容やタイミングを自社でコントロールでき、広告のような直接的なアクションに特化させる必要の無いコミュニケーションも可能なため、ユーザーに届けたい情報を適切に届けることができます。

顧客データの活用

メディア上でのユーザー行動やコンテンツを通したニーズの把握により、購買データだけのケースよりも幅広く、深いターゲット分析が可能です。

オウンドメディアの目的

企業によってオウンドメディアを活用する目的は異なりますが、主に下記を目的として運用されるケースが多くなります。

ブランド、商品認知の向上(SEO強化)

直接的な情報だけでなく、ブランドや商品と親和性の高い関連情報を効果的に発信することで、潜在顧客である新規顧客をオーガニックで獲得することが期待できます。

一定期間限定でコンテンツを使用するペイドメディアと異なり、メディアとしてコンテンツを蓄積(コンテンツの資産化)することがSEOの強化につながります。

コンセプト・商品の理解・興味の向上

認知の先にある理解向上につながるコミュニケーションが可能です。
既存顧客向けのメディア(メルマガや会報誌など)ではこちらの役割がメインとなります。

顧客とのエンゲージメント強化(ファン化)

顧客にとって有益な情報や共感・感心を得られるコンテンツを提供することで、顧客のエンゲージメントを高めることができ、既存顧客のファン化につながる接点とすることが可能です。

このようにさまざまな目的で運用されるオウンドメディアですが、ひとつのメディアですべての目的を達成しようとすると、対象ターゲットが広がりすぎ訴求力が弱まってしまいます。
そのため、明確なターゲット設定とそのターゲットに向けた情報設計が重要となります。

オウンドメディアの運用方法

オウンドメディアの成功には継続した運用が重要ですが、まずは設計段階から適切な計画を立てることが不可欠です。

ここでは、代表的なオウンドメディアであるWebメディアについて、設計段階から、実際に運用して顧客を育成するまでの流れを、簡単にご紹介します。

設計

最初のステップとなるWebメディアの設計段階で検討する内容です。

  1. 1.目的設定:自社のマーケティング課題を考慮し、オウンドメディアの目的を明確に定めます。
  2. 2.ターゲット設定:目的に合わせて、その目的を果たすターゲットを的確にセグメント。単純な属性の設定だけでなく、ペルソナの作成などを通してターゲットのニーズや関心事を想定します。
  3. 3.コンテンツ戦略:ターゲットの深掘りから、どのようなコンテンツを発信するかを検討。コンテンツの内容だけでなく、形式(テキストコンテンツのほか、画像や動画など)、発信方法、頻度などを計画します。
  4. 4.プラットフォーム選定:自社サイト内で発信を行う、独自サイトを構築する、SNSアカウントを活用するなど、情報発信の主軸となるメディアを決定します。

構築

次は、実際にWebメディアを構築するステップです。

  1. 1.サイト設計と開発:継続したコンテンツコミュニケーションを行うメディアとなるため、デザイン性だけでなくユーザビリティの高さが重要になります。
  2. 2.CMS導入:継続的にコンテンツ制作を続ける際に、運用コストを抑える仕組みは必須となり、比較的簡易にコンテンツ制作ができるCMSの導入が一般的です。運用体制(CMSを利用する人員のリテラシーなど)やCMSを設置するサーバの仕様などを検討し、導入するCMSを検討・決定します。
  3. 3.コンテンツ制作:設計時の計画に応じて初期コンテンツを制作。特にサイト立ち上げ時はある程度のボリュームのコンテンツを用意することで、初めて訪れたユーザーにがっかり感を抱かせないことが重要です。

運用

メディアの枠組みや運用の仕組みが完成したら、ついに運用スタートです。

  1. 1.定期的なコンテンツ更新:継続的に新しいコンテンツを発信し、定期的なユーザー接点を生み出し続けます。
  2. 2.他メディア連携:Webメディアでコンテンツ配信を行った際には、SNSやメルマガなどでも情報発信し、より広いターゲットに情報をリーチしサイト訪問を促します。
  3. 3.運用の改善:実際に運用をスタートすると、想定通りにはいかないケースが発生します。より効率的な運用に向けて、体制やフローの調整を行います。

分析・改善

Webメディアの運用で得られたデータを分析し、メディアの改善を進めます。

  1. 1.アクセス分析:分析ツールを使用して、PV、セッション、回遊率、リピート率などのメディア全体の分析に加え、スクロール率や直帰率、コンバージョン率などコンテンツ個別の分析も行います。
  2. 2.コンバージョン分析:商品購入の場合はオウンドメディア経由での購買数や率、会員登録の場合は会員獲得数など、サイトに設定した目的に対する成果を分析します。
  3. 3.改善:分析結果をもとに、コンテンツ戦略やサイト設計の見直し・改善を行います。オウンドメディアは継続的な運用を行うという性質上、この分析・改善を通じてメディアを育成するという観点が重要になります。

オンラインとオフラインの統合型コミュニケーション

例としてWebメディアを取り上げましたが、冒頭でもご紹介した通りオウンドメディアはオンラインに限定されるものではありません。オンライン・オフライン双方のメディアのメリット・デメリットを把握するのが第一歩です。

《オンラインとオフラインのメリット・デメリット》

オンラインとオフラインのメリット・デメリット

実施に関わる最小コストはオンライン施策の方が低いケースが多くなりますが、費用対効果が常にオンライン施策の方が高いとは限りません。

一般的にも新規顧客との接点獲得や育成にはオンライン、コア顧客のエンゲージメント向上にはオフラインが有効と言われています。

オンライン・オフラインを効果的に組み合わせる統合型のコミュニケーションが、よりよい成果につながります。

まとめ

オウンドメディアの概念から運用までの全体像を一度にご紹介したため、取り組む課題やタスクが膨大に感じられたかもしれません。

まずは、自社や顧客にとってオウンドメディアが有効か? オンライン・オフラインどのようなメディアとの親和性が高いか? といった小さなステップから検討を始めてみてはいかがでしょうか。

共同印刷ではオンライン・オフライン問わず、オウンドメディアの立ち上げからコンテンツ制作、分析・改善まで、豊富な実績があります。ぜひお気軽にご相談ください。

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