化粧品メーカーKOSÉインタビュー! KOSÉの事例から見るCSRブランディングとは?

市販の化粧品のなかには、売上の一部を環境保護活動に役立てるなどして社会貢献につなげている事例があります。こうした、物販をCSR活動につなげているケースは近年少なくありません。
KOSÉ(以下、コーセー)が2008年にスキンケアブランド「雪肌精」で始めた「SAVE theBLUEプロジェクト」は、その代表的な例の一つです。CSRは一般的にブランディングに影響を与えるといわれています。今回は、コーセーの取り組み事例を通して、CSRとブランディングの関係性を探ります。

CSRとは

CSRはCorporate Social Responsibilityの略称で、「企業の社会的責任」を意味します。企業は規模が大きくなるにつれて、収益を上げることや法令遵守以外に、利害関係者であるステークホルダーや社会全体に対して負う責任が増していきます。ステークホルダーや社会からの要望に適切に対応するため、次のような活動が必要になってきます。

  • ・人権を尊重した適正な雇用・労働条件・職場環境
  • ・消費者への誠実な対応
  • ・企業統治と積極的な情報開示
  • ・地球環境への配慮
  • ・地域社会貢献
  • ・公正かつ倫理的で誠実な事業活動

CSRとブランディングの関係性

CSRには、企業価値を高めて信頼される企業になること(企業価値創造)、そうした企業であり続ける(持続可能性)という目的があります。CSRには企業価値やブランドの価値を高める「ブランディング」としての意味合いがあることが分かります。
CSRによってブランディングを行う形は各社さまざまです。例えば以下のようなものがあります。

・企業イメージの確立

最も典型的なものが、CSRの取り組みによって企業イメージを確立し、企業ブランディング、もしくはブランドのブランディングを実現することです。例えば、地域のボランティア活動に企業として参加することで「地域社会に優しい企業」としての企業ブランド確立をめざすなどが当たります。

・戦略的ブランディング

CSR活動を戦略的に実施し、ブランディングを行う企業もあります。例えば、複数の飲料メーカーでは、自らペットボトルのリサイクルの仕組みを考案してゴミを減らす取り組みを進め、海洋汚染を防ぐ環境保全につなげています。環境保全に取り組むプラスイメージを強固にするだけでなく、消費者を啓蒙するためのPR活動も積極的に行うなど、戦略的なブランディングを行っています。

化粧品メーカーのCSR取り組み事例
~KOSÉ「雪肌精“SAVE the BLUE”プロジェクト」

CSRによるブランディング手法には、他にもまだまだ種類があります。例えば、プロモーションとうまく連動させることで、作り手の思いを伝え、顧客との関係をよくする効果を生み出すことも可能です。そうした効果を生み出している活動の一つが、コーセーの雪肌精“SAVE the BLUE”プロジェクトです。

コーセーのCSR担当者は、このプロジェクトについて次のように説明します。

「雪肌精“SAVE the BLUE”プロジェクトは、『あなたが美しくなると地球も美しくなる』というメッセージのもと、沖縄でのサンゴ礁保全のほか、アジアを中心に商品のキャンペーンと連動した地球環境保全活動を実施するプロジェクトです。購入いただいた金額の一部を寄付する形をとっており、多くのお客さまにきれいになっていただくのと同時に、このSAVE the BLUE活動を通して、美しい地球を守るための環境保全活動を行っています」

このプロジェクトが始まったのは2009年の夏。それ以降、コーセーはスキンケアブランド「雪肌精」の売上の一部を寄付して、サンゴの保全に協力するなどの環境保全を行っています。サンゴには温暖化の原因となる二酸化炭素の吸収機能もあることから、海洋環境を守るだけでなく、地球温暖化への貢献にもつながっています。
また2011年からは活動をアジア各国に広げました。2018年には中国・台湾・香港・韓国・タイ・シンガポール・マレーシア・インドネシア・アメリカ・日本で活動を展開しています。

このような取り組みを始めたのには、どのようなきっかけや背景があったのでしょうか。

「きっかけは、天然植物エキスという自然の恩恵を配合して作られた雪肌精ブランドを通じて、ボトルカラーと同じ青い海を中心に自然への恩返しをしたいと弊社メンバーが考えたことです。また、地球環境がよい状態を保っていることは女性が美しさを保つための重要なファクターである、という考えも込めています」

■CSRの目的はロイヤリティー向上

一口でCSRと言っても、企業によってさまざまな位置づけがあります。コーセーでは、CSRの活動をどのように位置づけているのでしょうか。

「お客さまのベネフィットは、あくまでも使い心地のよさや、透明感のある美しい肌になれる期待ですので、雪肌精ブランドの商品づくりはそれを実現するために進めています。CSRの活動としては、コーセーの代表的なブランドとして自然保護活動への取り組みを続けることで、お客さまによりロイヤリティーを感じていただければありがたいと思います。また、商品を通じて、お客さまが気軽に自然保護に関わる機会にを提供できれば、とも考えています」

コーセーが行う本プロジェクトでは、ロイヤリティー向上と、自然保護に対する啓蒙が一番に考えられています。

■「CSR×プロモーション」で作り手の思いを伝える

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CSRを通じて、ブランディングを意識している面はあるのでしょうか。

「CSRの取り組み自体が直接売り上げにつながっているとは、正直あまり思いません。しかし、プロモーションと連動させることで、短期的な売上貢献とは別の視点で、環境に対するブランドや作り手の思いを、多くのお客さまにお伝えする機会を得ることができています。今後もこうした機会を増やすことで、このロングセラーブランドへのお客さまの共感や、長期視点でのブランド価値向上につなげることができればと考えています」

コーセーはCSRの活動をプロモーションと連動させることで、ブランドおよび作り手のメッセージをより多くの顧客に伝える機会にしています。ブランディングは本来の目的ではないものの、消費者が企業姿勢に共感し評価することで、ブランド価値の向上にもつながっているのです。

■アジア女性は環境問題への意識が高い?化粧品CSRの可能性

株式会社クロスボーダーエイジが2018年8月に発表した、中華圏と日本の女性消費者を対象に実施した基礎化粧品・化粧品の利用状況や環境・リサイクル等に関するインターネット調査結果によると、中華圏では、環境問題への関心が日本に比べて非常に高いことが分かります。
コーセーの雪肌精“SAVE the BLUE”プロジェクトは、中国・台湾・香港・韓国・タイ・シンガポール・マレーシア・インドネシアといったアジア圏で強化されていますが、特に、アジア向けブランディングを重要視しているのでしょうか。 

「雪肌精は、おかげさまで中国をはじめとして中華圏の方々にも支持いただいています。クロスボーダーで日本への買い回りも起こっており、アジア向けのブランディングは非常に重要です。また、近年、日本のお客さまも中華圏のお客さまも、環境問題への意識が高くなっていると感じます。その意味でも、活動の輪を中華圏、アジアのみならず、世界に広げていきたいと思っています」

今回のインタビューを通じて、CSR視点でのブランディングは、現代ニーズや時流に合った企業ブランドの確立と、中長期的に消費者の信頼を得られる取り組みであることがわかりました。製品・サービスを通じて社会にどのような価値を提供できるのか、というCSRの企業価値創造という考え方は、ブランド構築のプロセスと近しいものといえるのかもしれません。

【取材協力】株式会社コーセー
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https://www.kose.co.jp/jp/ja/index.html

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