既存のビジネスに風穴をあけるどころか、それらを根底から覆し、破壊し続けるアメリカのスタートアップ企業群。彼らの市場参入は決して容易なものばかりではありません。インターネットですぐに商品の比較が簡単にできる今、マーケティングでの競争環境は厳しくなっています。企業間の競争が起こると安易に価格競争になり、売上げが上がっても利益が上がらない悪循環が起こりがちです。そのような悪循環を断ち切るため「ブランドコミュニケーション」が重要視されています。

ブランドコミュニケーションとは、企業が伝えたいメッセージを消費者に届け、企業のイメージを高める活動を指します。ブランドのストーリーを人々に伝え、ファンになってもらい、継続的に購入してもらう仕組みをどのように作っていけばいいのでしょうか? 今アメリカで大注目されている靴メーカーの「Rothy’s」とアイスクリームの「Halo Top Creamery」に焦点を当て、そのブランドコミュニケーションの成功秘訣に迫ります!

「おしゃれ」×「最高の履き心地」×「エコ」でブランディングに成功した「Rothy’s」

Rothy’sは2016年に創業したサンフランシスコ発のスタートアップ。ペットボトルをリサイクルして作られた繊維で編みこまれたフラットシューズが若い女性を中心に大人気です。「忙しい現代の女性へスタイリッシュで履き心地の良い靴を作る、それも製造過程でごみがあまり出ない、地球に優しい素材で。」このミッションのもとに作られたのがRothy’sなのです。

ペットボトルのリサイクル以外に3Dニッティングプロセスという技術を使い、製作過程で出るごみの量を大幅に減少させることへ成功しました。また汚くなった靴は洗濯機で洗え、古くなったRothy’sの靴は無料でリサイクルに出し、新しい靴に生まれ変わるプログラムも好評です。

フラットシューズは一足$125ドルと決して安いとはいえない価格ですが、一時期は黒のフラットに人気が出すぎて生産が間に合わないと嬉しい悲鳴を上げるまでに。そこまで急成長した訳とはは何でしょうか?

今まで履き心地がよく、おしゃれな靴は市場に出回っていましたが、Rothy’sはそこに「リサイクルペットボトルで作られた繊維」というエコの要素を取り入れ、“ユニークな付加価値”を出したことがブランドの強みになりました。

コロラド州の広告代理店Ascendの記事では、75%ものミレニアル世代の消費者は、単に利益だけを追求する企業ではなく、なんらかの形で“社会貢献をしている企業”が商品やブランドを選ぶ基準として大切にされていることが明らかになっています。Rothy’sのブランドストーリーは「かわいくて履き心地のいい靴がなかなか見つからなかった」という個人の問題を解決する以外に、「その靴を履くことで地球環境を助けている」という、もっと大きな問題に対し一緒に解決できることを明確にし、消費者とブランド間の関係性強化に成功しました。

1年で売上が2500%上昇! ハーゲンダッツを超え“米国売上No. 1”のアイスクリーム「Halo Top」のブランディング戦略とは?

「低糖質、高タンパク質」のアイスクリームで、健康に気をつかうミレニアル世代の心を掴んで離さないロサンゼルスのスタートアップ企業「Halo Top Creamery」。2012年に元弁護士のJustin Woolverton氏が開発した、240~360カロリーの食べても罪悪感が残りにくいクリーミーなアイスクリームです。

近年の低糖質ダイエットブームが追い風となり、2015~2016年で売上が一気に2500%上昇。Inc.の記事によると、老舗のベン&ジェリーズやハーゲンダッツを押しのけ、2017年の夏には「全米で一番売れているアイスクリームブランド」に急成長しました。

まさにスタートアップ企業にとって夢のような急成長を果たしたHalo Top。熱狂的なフォロワーを持つこのブランドには、どのようなカラクリが隠されているのでしょうか。

「イギリスのマーケティングアイランド」という業界サイトでは、この成功を以下のように分析しています。

まず初めは、差別化のポイントを消費者に対し明確にしていることです。例えば、従来であればパッケージ裏面に記載されている栄養成分表ですが、差別化ポイントである「低糖質、高タンパク質」をより強調するために、パッケージの表に大きく記載されています。

また、徹底的にターゲット層を分析、その嗜好に合う「パッケージデザイン」や「マーケティング活動」を行っています。Halo Topはミレニアル世代を意識したカラフルでポップなパッケージで、モダンだけれども誰でも手に取りやすいブランド作りを意識していることが伺えます。またプロモーション費用の90%をデジタル広告に使っているのも特徴です。

Digidayのインタビュー記事の中でCEOのJustin Woolverton氏はこのように語っています。「メッセージを多く詰め込んだイメージを使うのではなく、アイスクリームとそのパッケージが引き立つようなクリーンなイメージを使うことを意識しています」。この手法により、10ヶ月でソーシャルメディアのフォロワーを160%増やしました。

また、同インタビューでWoolverton氏は“世間の健康志向トレンドと、あえて企業っぽいメッセージ使わなかったことがブランドの成長に繋がったのではないか”と分析しています。「私たちは消費者と同じリアルな人間であることを常に意識して、ブランドの声を発信しています。それは大企業のスーツを着たエグゼクティブがフォーカスグループで導き出した消費者行動とは違うように。」

「Venture Accelerator Partners」の記事では、スタートアップ企業における“ブランドストーリー5つの要素”を下記に挙げていますが、Rothy’sとHalo Topもすべての要素がブランドストーリーに入っていることがわかります。御社のブランディングについて一度チェックしてみてはいかがでしょうか?

  • 1.人をインスパイアさせる:御社のブランドストーリーはそれを聞いた人をインスパイアすることができますか?
  • 2.ブランド・または社会との関係性を作る:御社のブランドストーリーは個人の問題解決だけでなく、それよりも大きい社会問題を解決することはできますか?
  • 3.ターゲットが絞られている:御社のブランドストーリーはターゲットが絞られていますか?
  • 4.パーソナル:御社のブランドストーリーは消費者と同じ目線で発信されていますか?上から目線ではありませんか?
  • 5.拡散しやすい:御社のブランドストーリーは端的で短く、覚えやすく、そしてSNSや口コミで拡散させやすく加工されていますか?

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