顧客獲得に向けたビジネス戦略の一つとして、「ブランディング」を重要視する企業が増えています。例えば、スマートフォンであればiPhone、高級時計といえばロレックスといったように、限定分野で「アイコン的存在」になることは、価値や認知度を高め、大がかりな宣伝も必要なく顧客を取り込むことが可能になります。
商品やサービスのブランディングが多い中、「企業ブランディング」に注力したのは飲料業界のリーダーである「コカ・コーラ社」。サスティナビリティーに取り組み、さらに「社会貢献企業」としての知名度を上げ大手飲料会社という認識から大きく変化した、同社におけるCSR視点(企業の社会的責任)のブランディングをご紹介していきます。
「廃棄物のない世界へ」コカ・コーラ社が取り組む環境問題とは?
飲料業界を先導するコカ・コーラ社は、今後数年間で数多くの企業や団体と提携し、2030年までに販売する飲料のペットボトルや缶を回収し、100%リサイクルする計画を発表。容器のデザインから製造・回収・再利用まで、パッケージのライフサイクルに焦点を当て、全体的な見直しを目指しています。
環境と開発を考慮したこのサスティナビリティーへの取り組みは、コスト削減を狙った戦略ではありません。むしろ、世界中のインフラが整っていない地域での回収には時間も費用もかかり、多大な投資になることでしょう。
そして、それを個人や地域社会にまで範囲を広げることは、グローバルとローカルの目標2つを掲げることになります。特にローカルにおいては、地域のニーズに応える活動やパートナーシップの支援、地域問題の解決においても貢献していく必要があります。
これは一見すると、企業利益には到底結び付かないように見えるかもしれません。しかし実は、このような取り組みはCSR活動と密接に結びついています。そして、自社製品の細部まで責任を持ち、環境への配慮や社会貢献をすることは、ステークホルダーの信頼度やイメージの向上にもつながります。同社はこの取り組みを、長期的には利益を生み出す「企業ブランディング」戦略の一つとして捉えたのです。
このように飲料会社としての認知から大きくイメージを変える「リブランディング戦略」を図り、同社は世間からの注目を集めました。
イメージアップがブランディングの最大目的
ブランディングにおける最大の目的は、前述にもあるように商品または、企業のイメージや認知度の向上であり、 もちろんその先に長期的な利益の拡大も見込んでいます。
コカ・コーラ社も利用するペットボトルは、「1時間で990トン蓄積する」といわれる海洋ごみの一つで、海洋生物だけではなく人間社会にも危険をもたらすものとして問題視されています。現在、世界的な環境への懸念が広がる中で、この問題へ積極的に取り組む企業や団体も増えてきました。そこで、環境汚染につながる製品を取り扱う企業としてのイメージを払拭し、問題に正面から取り組む「エコ企業」としての姿を消費者にアピールしていく計画なのです。
しかも近年、世界的な健康ブームが進み、先進国では「清涼飲料水離れ」が進んでいます。こうした背景も企業全体のイメージ変革を推進するもう一つの大きな要因だったといえるでしょう。
一般的にブランディングは、利益につながるまでのプロセスが長いものの、好感度や認知度が上がることで、将来的に大きな利益を生み出す「マーケティング手法」の一つとして考えられるのです。
ブランディング成功のカギを握る専門家との連携
ブランディングの目標を掲げるのはたやすいですが、達成できなければ企業としての評判や信頼は低下してしまいます。そのためにも、インパクトのある目標と達成可能な数字が交わるポイントを正確に導き出す必要があり、専門家との連携で綿密な調査や情報収集は欠かせません。
コカ・コーラ社は今後13年間で容器のリサイクル率100%を達成するために、「世界自然保護基金(WWF)」、「エレンマッカーサー財団(EMF)」、「オーシャン・コンサーバンシーのトラッシュ・フリー・シーズ・アライアンス」、「国連環境計画」、「世界経済フォーラム(WEF)」の5団体とグローバルパートナーとして連携。消費者や顧客・株主・規制当局など、すべてのニーズを考慮した高水準の計画を打ち出しています。
目標設定のみに留まらず、開始後も目標とするスケジュール通りに計画が進んでいるか、問題が発生していないかなど、常に専門家と連携を取っていくことが最終的な目標達成につながる鍵となるでしょう。
成功から得られるものとは?
ブランディングはロゴなどのような形あるものではありません。消費者など、対象者へ向けられた感情の取り込み、いわゆる「お気に入り戦略」です。強い感情移入を引き続き得られる場合、その企業は他社との価格競争などに巻き込まれることもなくなり、定価であったとしても、消費者が長期にわたり買い求めてくれるようになるのです。
消費者や対象者に良い意味での特別な感情を持たせ、「お気に入り」に加わるようなブランディング戦略の構築こそが、将来のビジネス成長を左右する大きな「ターニングポイント」になることでしょう。