10月25日(木)に開催した株式会社東洋経済新報社とのセミナー「業務効率化を実現する物流オペレーション改革~「自動認識技術」の活用で変わる物品・在庫管理業務などの最適化~」のなかで行われた、パネルディスカッションを紹介します。

▼パネリスト
株式会社LIXILインテリア事業部 インテリア製造部 主査 佐々木泰三氏
共同印刷株式会社トータルソリューションオフィス 担当課長 齋藤智仁

▼モデレーター
株式会社流通研究社 代表取締役社長、月刊マテリアルフロー 編集長、一般社団法人 日本マテリアルフロー研究センター 常務理事 菊田一郎氏

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■FullScanCode(フルスキャンコード)導入において苦労した点

流通研究社 菊田氏:LIXILが実施した共同印刷の画像認識コード「FullScanCode(フルスキャンコード)」導入プロジェクトは結果として、時間削減が達成されました。導入に際し、苦労した点はありますか。

LIXIL 佐々木氏:FullScanCodeのラベルは9.5mm×19mmというとても小さいサイズで、当初はコードに80桁入れていたのですが、iPhoneでスムーズに読み取ることができませんでした。共同印刷さん、サトーさんの技術協力をいただきながら調整を重ね、最終的に40桁・縦横比1:9で、9.5×19mmという小さいサイズのままスムーズに読み取れるようになりました。
また、これはつい最近あった話なのですが、先月まではなかったホコリ防止シートが製品棚に付けられており、このビニールシートに天井のライトが反射することで読みづらくなってしまいました。現在はビニールシートをめくって読むことで、工数は大して変わらずできていますが、やはり『現場は生き物だ』と感じた瞬間です。ライトの反射で読みづらくなることはありますが、汚れや折れ曲がるといった程度であれば問題なく読み取れる点は、FullScanCodeの良さだと思いました。

共同印刷 齋藤:25%程度の汚れであれば、マジック等でコードが隠れてしまったり、重なっていたりしても読めるのがFullScanCodeの特長です。
また、暗いとコードが認識できませんが、上からライトを当てるなどきちんと白黒が分かる状況のライティングを作れば、ボケていても読みとれます。

■RFIDとの違いやコスト優位性

流通研究社 菊田氏:FullScanCodeは、RFIDと比べた場合、コストのほか、個体管理ができる、一括読み取りができる特長を踏まえた優位性はあるのでしょうか。

共同印刷 齋藤:RFIDは、コストだけでなく認識装置などすべてを変えなくてはいけないため管理がシステム変更や機器の入れ替えが発生する可能性があります。
FullScanCodeの開発においては、優位性として、今のインフラを活用しながら、置き替えられるようにと考えました。また、一次元バーコードの情報量を増やすこと、ネットワークを使うことによって個体管理をする必要があると考えていました。しかし、それらをやろうとするとRFIDだとコストや時間、考え方などがまだ尚早と思います。 FullScanCodeに替えることによる「既存管理+スマートフォン」の優位性があるのではないでしょうか。
これにより、一概にコスト全体が下がるとはいえないものの、すべてRFIDに変えるより安い価格でできるのではないかというのが私個人の考えで、それをもとに実行しているというのが今の状況です。

■FullScanCodeが生み出す付加価値

流通研究社 菊田氏:FullScanCodeは従来のバーコード管理と比べて「個体管理できるコード」という意味では付加価値を生む部分もあるのではないでしょうか。

共同印刷 齋藤:すでに“誰にも読まれたくないコード”として使われている事例もあります。例えば、LIXIL社が同じコードを物流会社と連携したいのであれば、IDを共有化することで展開できるし、反対にクローズ的な使い方で、セキュリティ性を活用した利用もできます。

流通研究社 菊田氏:拠点間、つまり一工場のみならず、同じ会社の中の他工場、本社、営業所間でデータをクラウドで共有できるという意味ですね。

共同印刷 齋藤:クラウドから管理し、ID管理をしてきちんとした書き込みを実証していけば、次のフェーズとして実現可能ではないかと思っています。コードIDの管理と、既存管理を組み合わせるには、コード体系全体を考えなくてはなりません。個別IDと全体設計においてはまだ課題はあります。

流通研究社 菊田氏:FullScanCode の読み取りにはiPhoneを使用していますが、物流現場では耐久性・堅牢性が求められるので気になっています。

LIXIL佐々木氏:耐久性はとても心配しており、今はiPhoneを首からかけるようにしています。しかし、落として壊れたら・・・という心配はずっとあります。

共同印刷 齋藤:FullScanCodeは一般的な業務用ターミナルと現時点では相性がよくありません。業務用ターミナルは、一次元バーコードやQRコードを1個ずつ正しく読むという要請から生まれたため、カメラが小さく、1個や2個しか読めないことが分かっています。複数一括認識を最大限に生かすには、いまのところ、iPhoneが一番能力を発揮してくれるカメラです。

■今後の展望と課題

流通研究社 菊田氏:FullScanCodeの今後の展望、課題についてお聞かせください。

●他工場やサプライチェーンへの展開について
LIXIL 佐々木氏:他工場やサプライチェーンへの展開は現在進めており、今は入出庫の仕組みを検証中です。FullScanCodeの得意な分野である「個体管理・一括読取」を活用して入出庫の生産性UPを狙っています。
サプライチェーン、社内の物流センターとの連携の展望についてですが、他の配送センターの人も、興味は持ってくれています。しかしまだ「FullScanCodeって何?」という人も多いため、今回の成功事例を用いて、これからどんどん広めていきたいと思っています。

流通研究社 菊田氏:FullScanCodeは色々な可能性、幅がある技術ではないかと思っています。今後は、情報共有、つまり拠点間・企業間における連携の可能性について期待しています。そして、「コネクト、シェア、データ条件、標準化、共通キーを持ってお互いが連携できること」がキーワードとなり、追求されていくのではと思っています。

●賞味期限・消費期限管理
流通研究社 菊田氏:食品系では、賞味期限、消費期限管理など、日付が見えるコードが義務付けられていますが、賞味期限情報も入ったコードとして使っていくことは可能でしょうか。

共同印刷 齋藤:コードのなかに何を入れるかについての考え方は、今までと一緒です。数を増やそうと思えば、LIXIL社のように40桁も可能ですし、日付を入れてしまえば、スタンドアローンでローカルでも使用できます。クラウド通信をして、通信端末で情報を落とし、それと照合することも可能です。組み合わせをうまくやれば実現可能だと考えています。

●物流のIT化に伴い必要とされる人材
流通研究社 菊田氏:IT化に伴い、物流の現場では今後IT化に対応したアイデアを出せる、管理できる人材がますます必要になっていくのではないかと思っています。その点についてどうお考えでしょうか。

LIXIL佐々木氏:現在、なかなか現場にそういった人材がおらず、上層部にそうした人材を採ってくださいと伝え、取り組んでいるところです。
現場でできる内容であればなるべく現場でやる事で現場の人のスキル向上を狙い、IT人材の裾野を広げていきたいと思っています。
また、取説を読まなくても誰でも直感的に操作できる仕組みにすることも重要です。

共同印刷 齋藤:スタッフに対して「ちゃんと勉強して使って」と言わなければならないものよりは、マニュアルを読まずとも、直感で操作できるものを技術屋として作っていきたいと思っています。

流通研究社 菊田氏:FullScanCodeはUI(ユーザーインターフェース)に、ガイドなしでも、子どもであっても使えるiPhoneを活用しているのが大きな特長だと思います。またガラケーしか使ったことのない人には慣れが必要ですが、スマホで高度な管理ができたり、データの管理や個体管理ができるなど、さまざまな可能性があると思います。
今後、ますます磨き上げていけるのではないかと期待しています。

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