イギリスで注目の的といえば、ウィリアム王子ファミリーをはじめとする王室。キャサリン妃やシャーロット王女、ジョージ王子が身につけた洋服が即座に完売するなど、その人気は絶大です。そして、もちろん忘れてはならないのが、国を代表するエリザベス女王。この4月に90歳を迎え、その祝賀イベントが数カ月にわたり予定されるなど、今、イギリス中がお祝いムードに湧いています。The Daily Mailの調査によると、イギリス人が考える国章であるべきものベスト3として、紅茶、ビッグベンについでエリザベス女王の肖像が挙げられ、国民の中での女王の存在の大きさが伺えます。

今回は、イギリス最長の在位期間を誇り、国民に愛され続けるエリザベス女王の90歳祝賀イベントやその関連商品を紹介しながら、国民に愛されるイギリス王室の魅力とその経済効果、イギリス人の気質や好みを考察し、そこからプロモーションのヒントを探りたいと思います。

数カ月にわたり、女王の90回目の誕生日を祝福

エリザベス女王が90歳の誕生日を迎えた4月21日、イギリス中の幼稚園や小学校でも、紙の王冠を被った子どもたちが女王の誕生日を祝いました。ロンドンの居城であるウィンザー城の周辺では、沿道で祝福する国民からの花束やカードのプレゼントを、女王自らにこやかに受け取り、パレードに出発する姿が一日中ニュースで流されました。BBCの特別番組『Elizabeth at 90 – A Family Tribute』では、エリザベス女王の幼少時や戴冠式の様子、王室一家のホリデーの未公開映像などを、ご本人とチャールズ皇太子、ウィリアム王子、ハリー王子がリラックスした雰囲気で鑑賞しながら、その感想を述べるなど、王室としては画期的な番組も放送されました。

女王の祝賀イベントはこれにとどまらず、引き続き5月と6月にも予定されています。5月に行われるバッキンガム宮殿でのイベントでは、イギリス人オペラ歌手のキャサリン・ジェンキンズ、イギリスヒットチャートNo.1シンガーソングライターのジェス・グリンに加え、同じくシンガーソングライターで女優のカイリー・ミノーグの出演が決定。
6月11日には、「 Trooping the Colours(軍旗敬礼分列式)」というパレードと航空ショーが行われる予定で、女王を始めロイヤルファミリーが、バッキンガム宮殿のバルコニーから手を振ることになっています。また、翌日6月12日には、バッキンガム宮殿に続くThe Mallという大通りで、ブリティッシュロイヤルリージョン(英国の退役軍人の会)主催の巨大な「ストリートパーティー」も開催されます。ストリートパーティーとは、文字通り、ご近所同士が自宅前の通りにテーブルを並べて軽食やドリンクを楽しむ、イギリス伝統の野外パーティーのこと。この10,000枚のチケットのほとんどはパトロンの手に渡りますが、1,000枚は3月末に一般向けに150ポンドで抽選販売されました。当日は、それに波及してイギリス各地で地元主導のストリートパーティーが開かれる模様です。

高いデザイン性の身近な祝賀関連商品

バラエティ豊かな祝賀イベント関連商品も登場しています。イギリス国有郵便会社は、エリザベス女王がジョージ王子を含む王位継承者3人と並んだ記念切手を発行、王室の公式サイトでは記念硬貨や記念缶入りビスケット、陶器などが販売されています。また、一般のスーパーやデパート、メーカー、小売店などでも、関連オリジナルグッズがラインアップされています。
大手スーパーのマークス&スペンサーからは、王冠の絵柄のついた缶入りのお菓子、王室御用達の紅茶メーカーであるトワイニングは、ロイヤルブルー缶に90thのロゴが入った紅茶、ハロッズからはキャンバス生地の記念バッグ、キャス・キッドソンは女王へのお祝いメッセージ入り布巾、エマ・ブリッジウォーターからは記念マグカップなど。高いデザイン性もさることながら気軽に買える関連グッズは、消費者の購買意欲をかきたて、イギリス人はもとより海外からも人気を集めそうです。

イギリス人の気質と好みとは?

富裕層向け旅行会社Sovereignが今回の祝賀イベントに先駆けて行った調査では、イギリス国民の85%が自国に誇りを持ち、半数以上は王室に対して忠誠心を持っていると回答しました。また別の調査では、イギリス人の特徴として、紅茶の淹れ方にこだわりをもち、日が少しでも差してくると半袖になって芝生で日光浴 をする、天気の話が好き、我慢強く列に並ぶ、物事に動じないのが美徳などあげられています。

天気の話は挨拶代わりで、行列や暗い冬にもじっと耐えるという国民性のイギリス人。日照時間が長くなる春から夏にかけては、とにかく屋外でできるだけ日光を浴びることで、心なしか笑顔の人々が多くなるようです。特に、5月、6月はバラなどの花々が咲き乱れ、外で快適に過ごせるため、イギリス人が大好きなストリートパーティーやピクニックをするのには絶好の季節。イギリス人にとってワクワクするような気候も、エリザベス女王の祝賀イベントを盛り上げるのに一役買いそうです。

英国王室の経済効果は約2,300億円!!

Brand Financeの調査によると、2015年のイギリス王室による経済利益の合計は、14億1200万ポンド(約2300億円)。諸コストを差し引くと、そのイギリス経済への貢献は11億5500万ポンド(約1860億円)といわれています。経済利益の内訳として、キャサリン妃効果が1億5200万ポンド(約245億円)、シャーロット王女効果が1億100万ポンド(約163億円)、ジョージ王子効果が7600万ポンド(約122億円)、王室御用達商品で1億3400万ポンド(約216億円)など。これらの数字から、英国王室の「記念行事マーケット」と「王室効果」の規模をうかがい知ることができます。

エリザベス女王が愛される理由

英国王室とエリザベス女王がこのような経済効果をもたらし、イギリス国民から支持されるその秘密はどこにあるのでしょう?エリザベス女王というと、最長在位期間である64年もの間、イギリスを守り続ける揺るぎない存在感、公務で見られる普遍のファッション、シンボルとも言える愛犬コーギーなどがまず思い浮かびますが、全国紙テレグラフが発表した「女王が愛される25の理由」として、一番に挙げられているのはエリザベス女王のユーモアのセンスです。それを裏付ける、ロンドン五輪の開会式 での007のジェームス・ボンドとの共演は有名です。これはまさに、ユーモアあふれる女王の新しいものに対する好奇心、国民に親しまれる開かれた王室、そしてそれを支持するイギリス人の気質を象徴しています。

<参考動画URL>
https://www.youtube.com/watch?v=1AS-dCdYZbo

お祝いムードと関連商品が消費を刺激

このように、多くの国民に愛されるエリザベス女王の90歳を祝うために、数ヶ月にわたって盛大に行われる関連イベントによって、こういったお祝いムードがイギリス全体に広まり、今年は国全体で消費の促進と観光客の増加が期待されます。また、イベントに華を添える、高いデザイン性かつ身近な関連商品も人々の購買意欲をそそり、パーティー用品や食材、アルコール飲料などの売り上げアップも必至です。王室を愛する国民性と女王の90歳を盛大に祝う一連のイベントの相乗効果で、ますます盛り上がりを見せる今年のイギリス。この千載一遇の売れるチャンスを、プロモーションに活かさない手はなさそうです!

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