企業サイトで動画を配信する際に計測・解析される数値として、動画再生回数があります。動画再生回数の多さは閲覧数の多さと考えられるため、どれだけの人が動画にリーチしたかの目安となる数値です。動画の総合的な効果を高めるには、再生回数、リーチ回数共に高めることが必要ですが、どうすればこれらを伸ばせるのでしょうか。
今回は、共同日本写真印刷株式会社のパーソナライズド動画ソリューション「OneDouga」のチームリーダー磯野周司が、企業サイトにおける動画再生回数と動画リーチ数を伸ばすポイントを、動画サービスの事例などを交えて解説します。
OneDougaチームリーダー
磯野 周司
横浜国立大学 工学部卒。在学中は、ヨットと変動風解析がライフワーク。卒業後、大手広告会社、住宅関連の事業会社、外資系Webサービス会社を経て、現職に至る。2015年2月よりパーソナライズド動画を研究。同年、OneDougaを立ち上げ。2019年1月より共同印刷グループで活動中。
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■「配信方法」と「再生手段」が動画再生回数を伸ばすカギ!
企業サイトで配信する動画は、告知配信の方法、つまりユーザーに動画の存在を知らせ、視聴してもらう方法を変えることで、多くの人にリーチし、再生回数を上げることが可能です。
また、再生手段、例えばユーザーに再生ボタンを押してもらうのか、自動再生なのかによっても再生回数は変わってきます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.配信方法
EmailとSMS(ショートメッセージサービス)にフォーカスし、再生回数の違いを紹介します。
EmailとSMSの再生回数の比較
OneDouga調べ
昨今、企業の情報配信手段として増えているSMSは、Emailと比べて視聴率が高い傾向があります。
理由の一つに、EmailよりSMSの方が到着率・開封率共に高いことが挙げられます。携帯電話番号をキーにするSMSは、確実にメッセージを送信することができるためです。また、ナンバーポータビリティ制度が導入されたことで、携帯キャリアを変えても同じ携帯電話番号を使用できるようになり、不達が少なくなったことも関係しています。Emailはアドレス自体を使わなくなったり、多くのメールがくるため一つひとつをチェックしないことが多く、開封や視聴につながりにくい面があります。
しかし通信費などを含めたトータルコストではPCメールや携帯メールのほうがよいのも事実です。目的に応じてどちらが効果的なのか検討が必要でしょう。
●事例
OneDouga調べ
事例として、当社の動画配信ソリューション「OneDouga」において、顧客に同じ動画のURLをEメールとSMSの両方で配信した結果を紹介します。視聴率(再生回数÷アクセス)はSMS経由が23%、Email経由が8%となり、SMS経由のほうが15pt上回りました。企業の担当者さまから「SMS経由だとユーザーがパケットを気にして動画視聴しないのでは」という質問をいただくことがありますが、実際は「SMSからの動画視聴」はごく普通のユーザー行動だと分かります。
ただし、視聴維持率(視聴をした長さの割合。最初から最後まで視聴した場合が100%)は、Email経由の方がSMS経由よりも約4pt高くなっています。動画の長さについて制作時に意識する必要があります。
●オプトイン・オプトアウトは必須
SMSやEmailで情報を配信する場合、ユーザーに対し「特定電子メール法」で定められた事前承諾を得ることが必須です。特定電子メールとは、「営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人」である送信者が「自己又は他人の営業につき広告又は宣伝を行うための手段として送信する電子メール」のことです。このメールに該当する場合は、「あらかじめ特定電子メールの送信をするように求める旨、または送信をすることに同意する旨を、送信者または送信委託者に対し通知した者以外には送信してはいけない」という規定があります。そのため、送り先のユーザーはオプトイン、つまり送信の事前承諾を得た上で、ユーザーが不要と判断すれば受信を中止できるオプトアウトも簡単にできるようにする必要があります。
●デバイス別比較
視聴率は動画の「入口手段」と「配信内容」によっても変わります。入口手段は、パソコンとスマートフォンのどちらで視聴するのかという「デバイス」、配信内容は「コンテンツ」を意味します。
以下の表は、デバイスごとに再生回数や視聴率などを比較したものです。
OneDouga調べ
視聴率は、スマートフォンが65.0%、パソコンが95.1%で、パソコンのほうが約30pt上回りました。
再生回数についても、スマートフォンの方が比較的低い結果となりました。再生回数が伸びにくい理由として「コンテンツ、再生手段、誘導方法、UI(ユーザーインターフェース)」など複数の原因が考えられます。なかでも再生手段やUIの改善は特に重要です。まずはユーザーに「再生してもらう」ことを念頭に置いて制作することが大切です。
2.再生手段
再生手段によっても、動画再生回数は変わります。再生手段にはどのようなものがあるのか、そしてその種類と効果を確認していきましょう。
(1)自動再生
再生ボタンの有無にかかわらず、自動的に再生される形式です。ユーザーが動画再生ボタンを押すハードルがなくなるため、CVR(コンバージョン率)や単価を高めることに貢献します。近年、BtoCサイトのみでなく、企業サイトでも多く使われています。
(2)スクロール再生
自動再生の一種で、ブラウザ上で一定以上表示されることで再生を開始します。例えば、ページにアクセスした時点では動画は自動再生されませんが、下にスクロールしていくと動画が現れ、自動再生が始まる仕組みです。これもCVRや単価を高めることに貢献します。
(3)フローティング再生
再生プレーヤーがブラウザ内の一定箇所に固定され、再生される形式です。スクロールしても動画の位置が移動しないため、常にユーザーの視界に入り、自然と視聴されます。
●再生プレーヤーの置き場所によっても視聴率が変わる(Wistia社調査より)
再生プレーヤーをWebサイト上に埋め込み、ユーザーが再生ボタンをクリックすることで再生される形式が一般的です。
この場合、再生プレーヤーをどこに置くか(埋め込むか)によっても、視聴率が変わってくるというデータがあります。
企業向けの動画マーケティングプラットフォームを提供する米国企業Wistia社の調査では、再生プレーヤーの配置により視聴率が最大で約3倍異なるという注目すべき結果がでています。これは、再生プレーヤーが設置されている95,000ページのなかから、再生プレーヤーが埋め込まれたページだけを調査対象としたものです(自動再生やフローティング再生は除く)。
PCブラウザ上において、ページ最上部から縦250ピクセルごとにゾーン1、ゾーン2…ゾーン7まで、領域を7つに分けて、再生ボタンがどの領域に表示されているかで視聴率を比較しています。
最も高い視聴率はファーストビューに完全に含まれるゾーン1の56%で、最下位はゾーン7の18%と、約3倍の開きが出ました。これは想像にたやすいでしょう。
気になるのは、最も視聴率が落ち込むゾーンです。それはゾーン3(ページ最上部から500~750ピクセル)とゾーン4(ページ最上部から750~1,000ピクセル)の間でした。ゾーン3の視聴率は46%、ゾーン4の視聴率は27%となり、19ptダウンしています。
実は、再生プレーヤーは、ゾーン3ではファーストビュー内で一部表示されますが、ゾーン4までいくとまったく表示されません。これが視聴率へ影響する原因ではないかと推測されています。
この調査結果から、ページ内に再生プレーヤーを埋め込む場合は、配置により再生回数が大きく変わることが分かります。そして、一部であってもファーストビューに入る位置に置くことが視聴率をアップさせるポイントといえるかもしれません。
参照:Wistia Blog「Increase Your Play Rate: Optimize Your Video Position and Size」
まとめ
企業サイトにおける動画は、配信方法や再生手段、再生のしやすさ、再生プレーヤーの配置の改善により、再生回数が伸び、視聴率が上がります。動画活用は使い方によってもその効果が大きく異なってきます。
当社では、自動再生、タイムライン再生をはじめ、さまざまな種類の動画ソリューションをとりそろえています。動画活用でお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
●参考
共同印刷の動画ソリューションとYouTube・他社配信サービスの比較表
パーソナライズド動画ソリューション「OneDouga」 https://www.onedouga.jp/