近年、多くの企業が「動画」をさまざまなシーンで活用しはじめています。担当者であれば、“動画の効果を最大限にしたい!”と思うのはみな同じではないでしょうか。今回は、動画の効果を最大限にするコツの1つである、動画の「尺」と「タイミング」について、共同日本写真印刷株式会社のパーソナライズド動画ソリューション「OneDouga」のチームリーダー磯野周司が解説します。

■プロフィール
OneDougaチームリーダー  磯野 周司
横浜国立大学 工学部卒。在学中は、ヨットと変動風解析がライフワーク。
卒業後、大手広告会社、住宅関連の事業会社、外資系Webサービス会社を経て、現職に至る。2015年2月よりパーソナライズド動画を研究。同年、OneDougaを立ち上げ。
2019年1月より共同印刷グループで活動中。


【磯野周司の他のインタビュー記事はこちら】
動画視聴時間が平均40秒伸びる!? 触れる動画「インタラクティブ動画」とは?
実例紹介! 営業支援、マーケティングでのパーソナライズド動画活用最前線

企業系動画の“尺”による、エンゲージメントの違い

一般的に、Web上の動画は「尺」が長いものでも視聴されています。特にエンタメ系やスポーツ関連の動画は長尺の傾向があり、1時間超は当たり前となっています。
では、企業系の動画になるとどうなるのでしょうか。

企業向け動画関連サービスを提供する米国のWistiaのデータによると、企業動画は視聴時間が2分を超えるとエンゲージメントがぐんと落ちています。また、4分を超えると2回目の谷があり、また落ちます。つまり、企業動画は、最初の1~2分がエンゲージメントのポイントということです。非常に短い時間のコンテンツが重要であることが分かります。

グラフ①.jpg
出典:https://wistia.com/learn/marketing/optimal-video-length

“尺”によって、視聴者の反応はどう変わる?

続いて、動画の尺によって、視聴者の反応はどのように変化するのかをみていきましょう。

SNS動画広告は1~2分で離脱が増加!

企業がマーケティングで動画を活用するシーンで多いのがSNSにおける動画広告です。この動画広告における尺によって、視聴者の反応はどう変化するのでしょうか。

Wistiaのデータでは、SNS上の動画は10秒で視聴者を惹きつけられますが、30秒経つと33%、1分経つと45%、2分経つと60%が離脱しています。

これにより、「Attention span(アテンション スパン)」はとても短いことが分かります。
Attention spanとは、集中して視聴される時間、もしくはオンライン動画にユーザーが注目し続けられる時間のことです。

このデータから、SNSの動画広告はその時間がとても短いことが分かります。確かに実際にネットを見ている間、SNS上のバナー広告などの動画は、見たことは覚えてはいても、その内容はほとんど記憶していないものです。つまり、SNSの動画広告の尺は、基本的に短いほうがいいということです。

グラフ②.jpg
出典:https://sociallysorted.com.au/ideal-video-length-social-video/

目的によって視聴者の視聴時間は変化する!

SNSの動画といっても、企業が配信する動画広告とFacebookのタイムラインに流れる友達の動画とを比べれば、友達の動画のほうが長く視聴したくなります。

つまり視聴者が動画視聴に「目的」を持っていれば、Attention spanは長くなり、視聴時間が延びると考えられます。

その点、SNS動画広告などのマーケティングの場合は、視聴者が自発的に見るというより、視聴者のcookieやDMPの情報からレコメンドされる動画なので、潜在ニーズに対するコンテンツとなり、長く視聴してもらえる期待値は低いといえます。

視聴者が目的をもってサーチしている動画に比べ、SNS動画広告は受動的であるため、より短尺の必要があります。

動画でアプローチする適切なタイミングとは?

もちろん、視聴時間は、視聴者のモチベーションにもよります。カスタマージャーニーの情報収集段階なのか、それとも比較検討段階なのか、購買後なのか、というタイミングによっても変わってくるということです。

では、動画でアプローチする適切なタイミングはいつなのでしょうか。

結論から言えば、カスタマージャーニーのニーズ潜在期、興味関心期、情報取集期、比較検討期など、どのフェーズでも有効といえます。

実際、OneDougaの動画配信サービスでは、自社のHPに流入してきたニーズ潜在期のユーザーに動画を見せる場合もあれば、見積もり依頼や資料請求を行った比較検討をしている段階のユーザーでも、ワンプッシュのために配信しています。また、コンバージョンした後、アフターフォローとして動画を配信することもあります。

有効な配信タイミングは「ボトルネックを解消したい」フェーズ

あえて、動画の活用タイミングをお伝えするならば、「ボトルネックを解消したい」フェーズが有効でしょう。

現在取り組んでいるプロモーション施策からコンバージョンになかなか至らず、「プロモーション内容が適切ではないのかも…」」というときなどに動画を追加して“コンテンツを補う”という使い方は有効と思われます。

現状、OneDougaの動画導入事例で多い配信タイミングは、情報収集・比較検討段階です。売り上げを上げるための施策として、コストを投資できる場合が多いと考えられるためです。

もちろん、既存顧客にボトルネックを感じているのであれば、既存顧客向けに動画配信するのも有効です。

視聴者にコンテンツを選ばせるインタラクティブ動画

動画配信をしても、顧客情報がない潜在顧客のニーズを顕在化させるのはむずかしいものです。正攻法として、視聴者のカスタマージャーニーのステージによって動画の内容を変える手法がありますが、顧客情報がないためその手を打てません。ではどうやって、潜在顧客に最適な動画コンテンツを配信すればよいのでしょうか?

その最良な方法の一つは、視聴者にステージを選ばせることです。そこで使えるのがインタラクティブ動画です。

インタラクティブ動画とは、視聴者に動画内で選択肢を示して、動画の内容をユーザーに選んでもらう動画です。

例えば、自動車を購入したいユーザーが自動車メーカーのHPにランディングしたとしても、顧客情報がないため、そのユーザーが悩んでいるのは色なのか、車種なのかなど、メーカー側はわかりません。

そうしたとき、インタラクティブ動画の活用は有効です。例えば動画内のイントロで「車種から選ぶ」「色から選ぶ」などという選択肢を用意すれば、ユーザーは悩みにあった選択をすることができます。その後は、選択したものに応じてコンテンツを表示させていくことができるので、常にユーザーに適したコンテンツを見せることができるのです。

もし今、レコメンド技術で動画を見せているのであれば、それにこのインタラクティブの要素を足すと、もっと効果が出やすいのではないでしょうか。ユーザーが今知りたいことを自ら選択できるため、企業側が配信のタイミングを考えなくて済むのもメリットです。

また動画の視聴動向はすべてデータ化され、インタラクティブ動画でユーザーが選択した瞬間に課題は顕在化していきます。

インタラクティブ動画は視聴者側・企業側双方にメリットがある

このインタラクティブ動画なら、1ターゲット1コンテンツではなく、さまざまなターゲットに1つのコンテンツで済みます。なぜなら1つのコンテンツで雰囲気や説明の仕方等が異なるものを用意しておけば、ユーザーに動画コンテンツを選んでもらい、最適なものを見てもらうことができるためです。視聴者側は自分が気になることを選んで見ることができ、企業側も本当に伝えたいものがそのユーザーに見せることができることから、お互いにハッピーといえます。

近年、InstaLiveやツイキャス、TikTokなどを代表とする、動画配信側と視聴者側の「双方向のコミュニケーション」の流れがあります。企業動画にもそのトレンドが入ってきているといえるのではないでしょうか。より企業と視聴者との距離が近くなっているといえます。

パーソナライズド動画のメリット

インタラクティブ動画に加えて、さらに視聴者に合ったコンテンツを届けられるのが、「パーソナライズド動画」です。パーソナライズド動画とは、視聴者に合わせて映像、画像テキストを変更して配信するものです。

このパーソナライズド動画も合わせて活用することで、メリットが期待できます。インタラクティブ動画とパーソナライズド動画を組み合わせた動画の主なメリットをご紹介します。

●興味のあるコンテンツを見せるため、長くても見てもらえる
パーソナライズド動画はもともと視聴者に合わせたコンテンツを見せることができますが、その視聴者が持つ興味の度合いによって、インタラクティブに選んでもらうことによって、さらに効果が高まることが期待され、動画が長くても見てもらえるようになります。

●視聴後の行動喚起がしやすい
パーソナライズド動画は、視聴者に響くコンテンツとなることから、ただのインタラクティブ動画よりも、視聴者の視聴後の行動に、よりつなげやすいといえます。

●データが取得しやすい
企業側のメリットとしては、視聴データやインタラクティブに動いた記録、動画上で選択してもらったアンケートのデータなどの各種データが取得しやすいというメリットがあります。ビックデータの分析などにも使えます。

【パーソナライズド動画の効果をより詳しく紹介した記事はこちら】
実例紹介! 営業支援、マーケティングでのパーソナライズド動画活用最前線

動画の効果を最大限に高めるパーソナライズド動画

今回ご紹介した、適切な動画の尺やタイミングのコツを踏まえ、動画の効果を最大限に高めるインタラクティブ動画やパーソナライズド動画を活用しながら、より視聴者の興味関心に近い動画コンテンツ制作に取り組んでいきたいものです。
OneDougaに関する詳しい情報は以下をご覧ください。
https://www.onedouga.jp/

次回は「インタラクティブ動画」について詳しくご紹介します!

【こちらも合わせてお読みください】
パーソナライズド動画とは?成功事例や活用方法をご紹介
動画マーケティングとは?活用目的とメリット、動画制作のポイントをご紹介!
海外から学ぶ! 動画マーケティングを成功に導く戦略のヒントとは?【前編】~4つの基本ステップ~

実例紹介!!パーソナライズド動画活用最前線

詳しくはこちら▶▶

ゼロから分かる!パーソナライズド動画入門

詳しくはこちらから▶▶

おすすめ資料