「すべての人のためのデザイン」であるユニバーサルデザイン(以下、UD)を、グラフィックデザインの視点から解説する連載企画。第3回のテーマは、メディアにおけるUDに欠かせない要素の一つである「フォント」です。

[編集協力:株式会社モリサワ]

UDフォントの定義

UDフォントとは、UDの考え方に基づいてデザインされた、「より多くの人にとって見やすく読みやすい」をコンセプトに作られたフォントです。
例えば株式会社モリサワのUDフォントは、以下の3つの観点から文字を設計しています。

  • ●文字の形が分かりやすい
  • ●読み間違えにくい
  • ●文章が読みやすい

モリサワのUDフォントとは UDフォント ユニバーサルデザインフォント

「見えにくい」を回避する3つの工夫

文字が見えにくい状況はたくさんあります。例えば下図のように、視力低下でぼやけたり二重に見えたり、スクリーンに映した際に光源の問題で細い線が飛んでしまったり、類似したシルエットの文字が判別困難であったり、文字が欠けて読みにくいなど、さまざまなケースが想定できます。

文字が見えにくい状況

そこでモリサワのUDフォントは設計の際、以下の3つの具体的な工夫をしています。

  • ①線画のアキを広くし、つぶれや誤読を防ぐ
  • ②濁点・半濁点をより区別しやすくする
  • ③識別性を上げ文字の形を明確にする

モリサワUDフォントの工夫

一般的な書体との比較

それでは、UDフォントの見え方を実際に比較してみましょう。

(1)単純比較

右側がモリサワUDフォントの明朝体、左側が一般的な明朝体を使い、同じ文面、同じ文字サイズにしました。さまざまなご意見があると思いますが、UDフォントのほうが見やすくなっていると感じる人が多いのではないでしょうか。

UDフォントと従来フォントの比較(明朝体)

ぼかし加工を加えた場合の比較

「検証」の重要性

モリサワではUDフォントを開発する際、見やすさの根拠としてさまざまなテストを行い、エビデンスを取得しています。「デジタルデバイスにおける可視性・可読性に関する比較研究」をはじめとする研究報告が、モリサワのホームページで公開されています。ぜひご覧ください。

▶モリサワ「UD書体」 https://www.morisawa.co.jp/fonts/udfont/

UDフォントの可読性検証

UDフォントの活用例(1)教育

UDフォントは、教育の現場でも使われています。今回ご紹介するのはモリサワの「UDデジタル教科書体」です。
このフォントは、硬筆やサインペンで書いた文字を意識し、手の動きを重視したデザインとなっており、ロービジョン(弱視)・ディスレクシア(読み書き障害 ※1)への配慮として、一定の太さを保ちつつ、はらいやハネなど分かりやすく強弱をつけ、字を書くときの筆の運び方がわかるようなデザインにしています。
通常のゴシック体とは異なり、しんにょうの形状など学習指導要領に準拠した字形になっており、さらに子どもが画数を間違えないように細部も工夫された字形で、学校現場の指導に適しています。

※1 ディスレクシア:視覚・聴覚に異常がなく、知的に問題はないが、普通に学習しても文字の読み書きの能力に著しい困難さがあること。発達性読み書き障害と言われる。

教育現場にも広がるUDフォント

また、UDデジタル教科書体には、2020年からの小学生の外国語学習に合わせた欧文シリーズのラインナップがあります。

教育現場にも広がるUDフォント

UDデジタル教科書体についても、第三者機関によって見やすさの検証を行っています。

▶︎モリサワ「ユーザー評価に基づく読みやすさのエビデンス(科学的根拠)」
https://www.morisawa.co.jp/products/fonts/ud-public/study/

UDデジタル教科書体の検証(対象者:ロービジョンの生徒とその教員)

UDデジタル教科書体の検証(対象者:読みに困難さを抱える児童)

UDフォントの活用例(2)多言語対応

モリサワのUDフォントはグローバル展開の際にご利用いただけるよう、多言語にも対応しています。同じシリーズのフォントを使用することで、多言語で記載する際にも統一感のあるデザインが可能になります。

UDフォントの多言語対応


《シリーズ企画》
広告・販促・広報ですぐに役立つ「ユニバーサルデザイン入門」

  • (1)「見え方」の多様性
  • (2)ユニバーサルデザインを用いる理由
  • (3)UDフォントとは
  • (4)Webサイトでのフォント活用
  • (5)配慮のポイント・基本編
  • (6)配慮のポイント・実践編

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