近年ビジネスシーンで注目度の高いキーワードの一つに「パーパス」があります。

もともとは英語のpurpose(目的、目標)からきていますが、ビジネスシーンでは経営戦略やブランディングのキーワードとして使われることが多く、パーパス=「企業の存在意義」や「事業の目的」などを表しています。

経営理念や社是、社訓といったものを通じて“パーパス”を示す企業もあれば、その上位の概念として自社の“パーパス”を掲げる会社もあります。

また、企業の存在意義を明確にして経営方針などに反映させることを「パーパス経営」、さらに“パーパス”を起点に経営戦略を立案したり、業務遂行したりすることが「パーパス・ドリブンな経営戦略」「パーパス・ドリブンの実践」と呼ばれ、経営戦略の上で大きなトレンドとなっています。

パーパスが注目される理由

企業経営において“パーパス”が注目されるようになったきっかけのひとつに、2019年8月19日に米国トップ企業が所属する財界ロビー団体「ビジネス・ラウンドテーブル」での「企業のパーパスに関する宣言」があります。

宣言では、過去数十年間にわたり企業経営の原則であった「株主資本主義」を否定し、代わりにすべてのステークホルダーへの配慮をめざす「ステークホルダー資本主義」への転換が表明されました。

そして、「雇用創出」や「必要な財・サービスの提供」といった企業の基本的役割に加え、「企業のパーパスに関する宣言」で下図の5点(Why、When、Where、What、How)をコミットすることが宣言されたのです。

また同年、世界最大の資産運用会社ブラックロックCEO、ラリー・フィンク氏が、2020年の年次書簡において、「(企業の)長期的成長には、パーパスこそがその原動力となるものである」として企業にとってのパーパスの重要性を述べたことで、投資家を中心にパーパスへの注目はさらに高まりました。

パーパスとMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の違いとは?

パーパス経営とは、社会の中において自社の存在意義を経営方針の中心に置きつつ、社会への貢献を伴った事業運営を行う経営手法です。
パーパス経営と従来の経営手法との最大の違いは、企業が社会のさまざまな課題に対し、事業を通じて解決に貢献することを経営の中核としている点です。

パーパス経営とよく似た概念にMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)がありますが、位置付けに違いがあります。MVVは理想像(ビジョン)を実現するために、使命(ミッション)を果たし、バリュー(価値)を創造していく構造です。
一方、パーパス経営は自社の存在意義(理念)を果たすために、自社がどのように社会に貢献できるかといった、社会(世界)と自社の関係性を中心として価値を創造していくことに主眼をおいています。

パーパス経営を行うことで得ることができるメリット・デメリット

パーパス経営の実践には、以下のようなメリットとデメリットあるといわれています。

【メリット】

  1. 1.企業の持続的な成長につながる
  2. 2.ステークホルダーの支持
  3. 3.従業員エンゲージメントが高まる
  4. 4.革新や変化を生み出す
  5. 5.ミレニアル世代・Z世代の支持を得ることができる

【デメリット】

  1. 1.パーパスウォッシュになる危険性がある  
  2. 2.すぐには効果を得られない

パーパス経営を掲げても実態を伴わない状態である「パーパスウォッシュ」になってしまうと、かえってステークホルダーの信頼を失うことになりかねません。
また、パーパス経営による効果は、実績を重ねることではじめて現れるので、短期的なリターンを期待すべきものではないということも理解して取り組む必要があります。

パーパス経営の事例

パーパス経営は日本国内でも次世代の経営手法として注目されており、多くの企業がパーパス経営を取り入れ始めています。

一例をあげると、食品メーカーの味の素株式会社があります。

同社では従来、「確かなグローバル・スペシャリティ・カンパニーへ」というビジョンを掲げて経営を行い、自社のめざす姿をミッション、ビジョンとして掲げてきました。

しかし2020年に、創業以来の理念である社会課題解決=ビジネスの成長であるという原点にたちかえり、会社の存在意義そのものを見つめ直し、社会課題を解決し、社会と共有する価値を創造することを中核におく「Ajinomoto Group Shared Value (ASV)」を掲げ、パーパス経営を明確に打ち出しました。

今後も、社会課題の解決により、企業と社会双方に多くの利益をもたらすことが重要視される時代の要求に応えるため、パーパス経営を取り入れる企業の増加が予想されています。

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