その企画、リーガルチェックは大丈夫?  プロモーション法務入門 Vol.4  「ステルスマーケティング」の規制

2023年10月1日から、いわゆる「ステルスマーケティング」の規制が始まりました。そこで「プロモーション法務入門」の第4回は、この「ステマ規制」を取り上げます。この規制により、商品広告における著名人やインフルエンサーの起用、アフィリエイトの活用などには、これまで以上に注意する必要が生じます。本稿では、その規制内容を簡潔にまとめました。

※本コンテンツは、2023年9月現在の情報をもとに、当編集部が独自の観点からまとめたものです。
※当社は本稿に関して一切の法的責任を負いません。記載内容については必ず貴社や取引先などの法務部門や顧問弁護士などにご確認ください。

■ステルスマーケティングとは

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ステルスマーケティング(以下、「ステマ」)とは、広告主が自らの広告であることを隠したまま行う広告をいいます。例えば、インフルエンサーがある商品のレビューを行う際、広告主が、インフルエンサーに商品を提供し、インフルエンサーが自然な形でその商品を宣伝するように促す場合などが相当します。
一般消費者は、広告であると認識すれば、経験則上、その表示内容に、ある程度の誇張・誇大が含まれると考え、商品選択の際にそのことを考慮に入れます。
一方で、一般消費者がステマで広告を見た場合、広告であると認識できないため、その表示内容にある程度の誇張・誇大を含むことがあり得るとは考えないことになり、そこに誤認を生じさせ、商品選択を歪めるおそれがあります。
ステマは、このような消費者心理や判断力の不十分さを巧みに利用して消費者を商品購入に誘引するため、アメリカやEUでは法令で直接的に規制されていましたが、日本では法対応が遅れていました。
しかし、2023年10月1日以降は、景表法(不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律134号))5条3号に基づき指定された「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の告示(内閣府告示19号。以下、「ステマ告示」)により、ステマ告示を満たすものについては不当表示として規制されます。
なお、規制の対象となるのは、原則として、商品やサービスを供給する事業者(広告主)です。企業から広告・宣伝の依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は、通常、規制の対象とはなりません。

■ステルスマーケティング規制の告示内容

ステマ告示では、外形上第三者の表示のように見えるもののうち「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」であって、「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」が不当表示とされています。

■ステルスマーケティング規制の運用基準

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ステマ告示には、どのような表示が規制されるのかは具体的に示されていません。
そのため監督官庁である消費者庁から、ステマ規制の考え方や具体例をまとめた「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」が公表されています(以下、「運用基準」)。
ステマ規制に対応するには、この運用基準を理解する必要があります。

(1)「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」とは
運用基準では、この表示には以下の二種類があるとしています。

  1. ①事業者が自ら行う表示
    (例)事業者の販売担当チームの一員が、自らの身分を秘した上で商品の販売促進のためにSNSに画像や文章を投稿する場合。

  2. ②事業者が第三者をして行わせる表示
    (例)事業者が第三者に対して、口コミサイトに自らの商品に関する表示をさせる場合。

① については、意識の低い販売担当者が投稿を行い、気付かぬうちに規制対象になってしまう可能性があります。また、インフルエンサーやアフィリエイターを起用した広告は②に該当する可能性があります。

なお、運用基準では事業者の表示とみなされる場合だけでなく、みなされない場合についても具体的な例が示されています。

(2)「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である」とは
この点については、一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっているかどうか、逆にいえば、第三者の表示であると一般消費者に誤認されないかどうかを、表示内容全体から判断することになります。
一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっていないものには、事業者の表示があることが記載されていないものと事業者の表示であることが不明瞭な方法で記載されているものがあります。これらについて、運用基準では具体例が示されています。

  1. ① 事業者がアフィリエイトプログラムを用いた表示を行う際に、アフィリエイトサイトに当該事業者の表示であることを記載していない場合。

  2. ② 事業者の表示である旨について、部分的な表示しかしていない場合。

  3. ③ 文章の冒頭に「広告」と記載しているにもかかわらず、文中に「これは第三者として感想を記載しています。」と事業者の表示であるかどうかがわかりにくい表示をする場合。

  4. ④ 動画において事業者の表示である旨の表示を行う際に、一般消費者が認識できないほど短い時間において当該事業者の表示であることを示す場合。

  5. ⑤ 一般消費者が事業者の表示であることを認識できない文言を使用する場合。

  6. ⑥ 事業者の表示であることを一般消費者が視認しにくい表示の末尾の位置に表示する場合。

  7. ⑦事業者の表示である旨を周囲の文字と比較して小さく表示した結果、一般消費者が認識しにくい表示となった場合。

  8. ⑧ 事業者の表示である旨を、文章で表示しているものの、一般消費者が認識しにくいような表示(例えば、長文による表示、周囲の文字の大きさよりも小さい表示、ほかの文字より薄い色を使用した結果、一般消費者が認識しにくい表示)となる場合。

  9. ⑨ 事業者の表示であることをほかの情報に紛れ込ませる場合(例えば、SNSの投稿において、大量のハッシュタグを付した文章の記載のなかに当該事業者の表示である旨の表示を埋もれさせる場合)。


一方、「広告」、「宣伝」、「プロモーション」、「PR」などと広告であることが分かる表示を分かりやすく表示する場合や、「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった記載をしている場合は、表示が明瞭となっているとされています。
なお、そもそも、ステマ規制は、消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示を規制するものですので、事業者の表示であることが社会通念上明らかであるものはステマ規制の対象となりません。

■ステルスマーケティング規制に違反した場合

ステマ規制に違反した場合には、措置命令(景表法7条)や、措置命令に違反した場合の刑事罰(景表法36条等)の対象となります。
措置命令では、一般消費者への誤認の周知、再発防止策の策定、今後同様の違反行為を行わないことが命じられる場合が多いです。
なお、令和5年の景表法改正では、優良誤認表示・有利誤認表示に対し、直罰規定が新設され、同改正法の施行後、優良誤認表示・有利誤認表示行為をした場合、100万円以下の罰金の対象となりますが、指定告示に係る表示は、直罰対象ではありません。

■まとめ:ステマ規制対応を徹底するための、3つのポイント

ステマの恐ろしさは、事業者自身が無自覚なまま規制対象となる表示をしている可能性があることです。ステマを防止するには、以下の方法が有効と思われます。

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関連する法令については改正される場合があるので、日頃から情報収集をしつつ、ステマ規制に対応することが重要です。ある表示がステマに該当するかどうかは困難な判断が伴うところですので、必要に応じて専門家に相談することをお勧めします。

▶本文:Hint Clip編集部
▶監修:池田・染谷法律事務所 弁護士 染谷隆明/弁護士 李明媛
https://www.ikedasomeya.com/

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