JPM協会展 2年連続金賞受賞ディレクターの仕事の進め方

店頭販促に欠かせない什器やPOPは、ユーザーの購買意欲を高めて購買のひと押しになるとともに、店頭の売り場をにぎやかして装飾性を高め、かつ、売りたい商品を明確化する重要なコミュニケーションツールです。
そのプロモーショナル・マーケティングの最前線で展開されているツールが集う日本最大級のPOP広告コンテスト『JPM POPクリエイティブ・アワード』※にて、手がけたPOPが2年連続金賞受賞に輝いたクリエイティブディレクターの河野彩子に、ユーザーをひきつける作品を次々と生み出す秘訣についてインタビューしました。

脚注※JPM POPクリエイティブ・アワード:一般社団法人日本プロモーショナル・マーケティング協会が主催する、わが国のプロモーション業界における、唯一最大のPOPツールのコンテストです。プロモーションツールの表現力向上と同時に、プロモーション業界に対する社会的認知を高めることが目的です。

<ファシリテーター>Hint Clip編集長 杉山毅

■うまく舵取りしながら、販促に効果的なPOPを制作

杉山:JPM協会展2年連続の金賞受賞、おめでとうございます。まずは率直な受賞の感想をお願いします。

河野:このコンテストに出品できるのは、実際に使用されたPOP広告作品です。お客さまに採用していただき、なおかつ、優れたPOPとして業界の方々から多方面で評価いただいて、とてもうれしいです。

杉山:河野さんは現在当社でディレクターをしていますが、どのようにキャリアを積んでこられたのでしょうか。

河野:もともとは造形デザイナーでした。玩具の金型などに関係するデザインの仕事で、原型師あるいは造形師とも呼ばれていました。
それと同時に、お客さまとの折衝や企画を考えるというディレクターのような仕事もしていて、その方が作ることより自分には合っていると感じました。当時はそれが営業の仕事だと思っていたので、営業職をめざそうと思い至りました。

杉山:珍しいパターンですね。私の場合は、営業職志望で入社したのに、制作の方がおもしろくなったタイプなので。

河野:たぶんディレクターという職を知っていたら、また違っていたと思います。でも、担当する職務はそれほど変わりませんでした。
結局は、お客さまのやりたいことをお聞きし、販促に効果的なPOPを作るために、うまくデザイナーや製造担当をまとめていく舵取り役なので、それは営業が担うこともありますから。

杉山:ちょっとした勘違いから営業、そしてディレクターへ。今の仕事は天職だと思いますか。

河野:はい、そう思います。「自分がやりたかったのは最終的にディレクターだった」ということが、ここに来てようやくわかったと実感しています。

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■お客さまの要望をいち早く理解し、要望以上の提案を

杉山:では、具体的にディレクターとしての業務や流れを教えてください。

河野:私の仕事はコンペ形式のものがほとんどなので、オリエンを受けたらすぐに、どういう人にお願いして、どういう流れでいくかをまず考えます。その際、最も大事なことは、「お客さまの求めているものは何か」をいち早く理解することです。

杉山:求めているものというのは、どういう売り場に何を入れたいかということですか。

河野:お客さまの目的は当然商品が売れることなのですが、そのために何が正解なのかは誰にもわかりません。だから、なぜそうしたいのか、しっかりと要望をヒアリングした上で「販売促進に効果的で最適な仕掛け・展開は何か」を早く察知することです。
それがよいデザインにも、コンペを勝ち取ることにもつながるのだと思います。

杉山:お客さまの要望通りにきっちりと作る、ということですね。

河野:ただ、それだとお客さまがわかっている範囲の提案で終わってしまうこともあります。
要望されていないものを提案すると、逆にそれがハマって採用になることもあるので、お客さまが要望されている以上に響くものを多角的に検討してから提案するように心掛けています。

杉山:以前、ある健康食品メーカーの方が、「オリエンシートに書き込みすぎない方が色々提案してくれるのではないか」というお話しをされたことがありました。

河野:そうおっしゃるお客さまの気持ちはわかります。作り手としては具体的に伝えていただいた方が、一度焦点を絞ってから広げていけるのでありがたいですが、
「提案が狭まって面白くなくなるから、制作のプロの視点で自由な発想を求めたい」とコメントされるお客さまもいます。
きっと、私たちが提案したものから、やりたいこと・つくりたいものを見つけたいのだと思います。

杉山:提案するときに、コンセプトや提案書のようなものも一緒に提出されるのですか。

河野:店頭什器やPOPというのは作ったものがすべてで、そのプロダクトストーリーはあまり必要ありません。というのも、店頭でユーザーが立ち止まってくれて買ってくれることが目的なので、提案書よりも、一目でよいと思えば採用になります。
もちろん、案件によっては「なぜこのデザイン、フォルム、マテリアルなのか」といった根拠を丁寧に説明するケースもありますが。

杉山:まさに、見た目が勝負なのですね。

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■デザインとプロダクトの両視点から商品を具現化

杉山:ディレクターに求められるスキルには、お客さまから聞いたことをスタッフに伝えるコミュニケーション力、スケジュールや予算管理なども含めたマネジメント力、市場を読むマーケティング力などがありますが、河野さんが注力するところはどこですか。

河野:オリエンの時点ですでにお客さまの方でコンセプトも決まり、マーケティング調査も終わっていることが多いので、私たちに求められている達成要件は、什器やPOPを通したお客さまとユーザーとのコミュニケーションを創出する機会の提供です。
デザインや設計、素材や予算などをひっくるめて、いかに効果的に具現化できるかが重要です。

杉山:そういう意味でのコミュニケーションですね。売り場リサーチなどはされますか。

河野:売り場の調査は常にしていて、デザインのトレンドや競合他社の傾向などを蓄積しています。しかしそれはお客さまに提案するためというよりは、自分の知識として制作物に反映させる要素が強いですね。

杉山:造形デザイナーの経験は、ディレクションするときに役立っているのですか。

河野:制作に関わる人の立ち位置によって、やりたいことを伝えても伝わり方が異なります。デザイナーなら、どう言うと理解しやすくて提案の幅が広げられるか、伝えるときの言葉選びがしやすいということはあるかもしれませんね。
それから、よく女性はデザイナー視点で、男性はプロダクト視点だと言われます。男性はゴールから見て「どう作ろうか」と現実的に考えるけれど、女性は「これを作りたい」という理想が先にあって、デザイナー視点が強いと聞いたことがあります。…ちょっと一昔前の概念かもしれませんが。
でも本来、POPは制作と製造なので、両方の視点があった方がよい。私の場合、デザイナー時代に中国の製造現場まで行くことが多かったので、プロダクト寄りの発想ができるところも役に立っていると思います。

■専門性の高い人材による、鮮度の高い情報も当社の強み

杉山:当社の強みというと、マーケティングリサーチからプランニング、クリエイティブや製造、デリバリーまでオールインワンでできることですが、他に店頭販促における強みは何だと思いますか。

河野:私が所属しているCDC(コミュニケーションデザインセンター)は共同印刷グループ内で企画制作案件を担っており、什器以外にも、カタログやWeb、アプリ開発、イベントやキャンペーン運営といった、多種多彩な製品やサービスに対応しています。専門性の高いメンバーが多いので、さまざまなサプライヤーから鮮度の高い情報がたくさん集まることも強みとなっています。

杉山:社内だけではなく、社外からの情報も共有できることですね。

河野:特に素材についてはいつもアンテナを張っていて、聞いたことのない素材や気になる素材があれば、すぐにお付き合いのあるサプライヤーに確認をとるようにしています。

杉山:新素材が提案できれば、お客さまにもインパクトがありますよね。近年のトレンドは何ですか。

河野:今は環境対応素材の開発が目覚しいので、できる限り環境対応素材を使うようにしています。

杉山:JPM協会展でもそうした環境への配慮は評価されるのですか。

河野:特にそういった審査基準は設けていないようですが、最高賞の経済産業大臣賞を受賞する作品には環境を意識したものが多いように思います。
もちろん、お金をかければ、よりよい素材や豪華な加工や装飾もできますが、それよりも完成度やデザイン性を見てくれているようです。
金賞を受賞した私たちのチームの作品は、今回も前回も全出品作品の中でも1、2位を争うくらい低予算で作ったものだと思います。
とはいえ、JPM協会展での受賞を意識して作ることはありません。
出品された作品はお客さまのもので、私たちは代理として具現化した立場となります。まずはお客さまに評価されることが私たちの喜びで、受賞はあくまでも成果物です。

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■諦めず勝ちにこだわる。それが、結果としてお客さまのために

杉山:ディレクションをする上での河野さんのポリシーは何ですか。

河野:ずばり、〝勝ち〟にこだわることです。コンペで採用してもらうために徹底的に力を尽くす、直前まで諦めません。いや、提案した後でも、お客さまの反応を見てすぐに追加提案もします。

杉山:なんだかアスリートみたいですね。そのこだわりが金賞受賞や、コンペ勝率の高さにつながっているのですね。では、最後に河野さんの今後の目標、ビジョンをお聞かせください。

河野:店頭調査や、お客さまが求めている以上のものを作り出すことは当然やり続けていくことです。
それと同じくらい、若い人たちに活躍できる場を与え、若い人たちにこそいっぱい受賞してほしい。それが私たちの底上げにもなりますし、結果としてお客さまのためにもなりますので、自分がその道筋の一つになれればいいなと思っています。

杉山:若い人たちが河野さんをロールモデルに成長していくということですね。

河野:そう思ってもらえるようにこれからも努力を継続して頑張ります。
私が所属している店頭メディア課ではデジタルサイネージ領域の取り組みを強化していて、自社開発商品となる「デジタルゴンドラ」の拡販に力を入れています。
新たな店頭販促となるツールだと思われるので、このデジタル領域にも取り組んでいきます!

株式会社仙台銀行

共同印刷株式会社
コミュニケーションデザインセンター SPメディア部 店頭メディア第2課
ディレクター 
河野 彩子
玩具の造形デザイナー兼ディレクターを経てノベルティ制作会社の企画営業に転職。ともに中国での製造管理にも携わる。その後フリーランスで造形デザイナーをしながら、GMSやスーパーマーケットの店頭販促を行うSPプロダクションの企画営業への転職。
2015年からNISSHA株式会社グループの制作会社に入社。クリエイティブディレクターとして、主にコスメ・文具・製薬業界の店頭販促を担当する。
2019年NISSHAグループから共同印刷への商圏譲渡により、共同印刷グループへ移籍。現在は、さまざまな業界・職種で培った経験を活かして、店頭販促のクリエイティブディレクションを行っている。プロモーショナル・マーケター。

私たちがお役に立てること売り上げに直結する店頭販促サービスこれまでの店頭販促のノウハウに加え、「累積店舗データベース420万件」と「28万人の人材ネットワーク」からお客さまの課題に合った店頭販促・店舗運営サービスを提供。詳細はこちら

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