店頭を中心としたプロモーションは、デジタル×フィジカルでどう変わる

日々進化するデジタルマーケティングの領域。メーカーと流通の担当者は、デジタル(オンライン)とフィジカル(オフライン)の融合する“店頭を中心としたプロモーション”に試行錯誤で取り組んでいます。
そんな店頭の現場に対して、「今後のプロモーションのヒントとなる考え方」を、マーケティングプランナーである共同印刷プロモーションメディア事業部の多田、小川と、デジタルプロモーションのディレクターであるコスモグラフィックSPメディア部の菅田の、3名のスペシャリストの鼎談を通してお届けします。
“デジタルとフィジカルの効果的な融合方法は”あるいは、“ 導入の際に気をつけるべきポイントは”など、最前線で活動するスペシャリストたちの知見をまとめたコンテンツです。

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1.消費行動とプロモーションの変化

マスから個へ、十人十色ならぬ一人十色というような時代です。

――各分野のプロモーションで経験豊富なみなさんにお集まりいただきました。それぞれの経験を踏まえたうえで、店頭を中心としたプロモーションはどのような時代の変遷があったのか、改めてお願いします。

菅田:テレビやラジオなどを中心としたマスが主流の時代は、消費者は基本的に受け身の消費行動でした。
そこからWebメディアやSNSが一般的になることで、Web上の情報で興味を持ち、さらに消費者が自ら調べるようになりました。
マーケティングの基礎とも言われる消費購買モデルAIDMA(アイドマ)も、ネット上の検索や共有、比較検討などの消費行動を加えたAISAS(アイサス)、AISCEAS(アイセアス/アイシーズ)といったモデルに置き換わるなど、「消費者の能動性」を語ることは、このテーマで欠かすことができない要素です。

小川:AIDMAは大量生産大量消費時代のモデルだったということもあると思います。
今は商品のコモディティ化も進み、消費者が比較検討する際になかなか明確な優位点は作りにくい。
そこにスマホの登場もあって、コミュニケーションのパーソナル化が進むのは必然の流れですね。

多田:私は広告業界歴が長いのですが、昭和60年頃のマス全盛の時代はテレビで認知と興味喚起を行い購入させるというのが販促の定番でした。
単純に広告を多く打った商品がそれだけ売れるという時代で、その手法を誰も疑っていませんでした。しかし、Webでの情報量が爆発的に増え、消費者が自分で摂取した情報を取捨選択するようになってからは、テレビの影響力は落ちました。
マスから個へ、十人十色ならぬ一人十色というような多様性の時代です。4大メディアだけを把握してクロスメディア施策を行えば売れた時代から、Webをいかに活用するかという時代になりました。

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店頭販促は最後のひと押しの訴求として意思決定に強い力を持ちます。

小川:しかし、これだけデジタルが隆盛している今でも、“消費者の行動をWebメディアなどのデジタル上でコントロールできているか”というとそうでもありませんよね。
Web上では情報の取得・比較検討までで、(ECを除けば)最終的な購買商品の決定は購買の場である店頭で行われます。

多田:私はいま流通のマーケティング支援を行っていますが、一般的なデータとして消費者の7割は何を買うかを決めずに来店しています。
そして、店頭で購買商品を決定する際には、純粋想起で上位3つにその商品やブランドが入っている必要があるとも言われています。それを踏まえると、マス広告は商品性よりも「ブランドイメージを伝えるためのもの」となっていると思います。
そのうえで、店頭販促は“最後のひと押しの訴求”として「意思決定」に強い力を持ちます。
例えば洗濯用洗剤で、マス広告では謳っていない「すすぎの水の使用量が少ない」という店頭POPで大きく売り上げを伸ばした事例もあります。その一方で、店頭広告などによる施策ではなく、単純に棚を多く取ることの有効性も確かなものがあります。

菅田:棚取りの段階になると、なかなか私たちが関与できないことも多いです。
そのなかで、狭いスペースであってもいかに、その場での顧客心理に沿った訴求を行えるかということがポイントです。

小川:いま店頭コミュニケーションのお話がありましたが、スーパーやドラッグストアの場合、従来の来店前コミュニケーションではチラシが大きな役割を果たしていました。
しかし、新聞の部数減などの影響もありチラシのリーチ率は最盛期に比べ半分程度に落ちています。そういったなかで、電子チラシサービスが底堅く人気を集めています。
どういったコミュニケーションを行うかを考えるうえで、想定する店舗の立ち位置と客層の分析は欠かせません。
例えば、価格志向の顧客が多く安さがウリの店舗では、チラシの重要性は今でも高いままです。

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――スーパーやドラッグストアなどは、ほかの流通と比べて現在でも店頭での販促の重要性が高いのでしょうか?

多田:そうだと思います。例えば、欲しい物があってWebで事前に調べて行く家電量販店などとは異なり、スーパーやドラッグストアは自宅の近くで日常のルーティンとして通う店です。
この場合、事前に情報収集をして購買商品を決めてから来店する確率はかなり下がるので、店頭でのコミュニケーションの重要性は高くなります。
デジタルの施策やメディア・ツールが発展しても、カスタマージャーニーに沿って、いつ、どこで(タッチポイント)、どのようなコミュニケーションを行わなければならないかという観点で取り組みを整理するのは変わらないですね。

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2.フィジカルとデジタルの違いと特徴

今まではつかめなかったニーズをデジタルでなら拾い上げることができる。

――フィジカルとデジタルの違いや特徴を具体的な施策に落とし込んで教えてください。

菅田:例えばオープンキャンペーンでは「来店前に、どれだけ商品やブランドの認知を広めるか」が課題で、従来は「メーカー側」が告知をしていました。
現在ではSNSを活用してキャンペーンを拡散することを応募条件にして、「消費者側」にも商品やブランドの情報を広めてもらうような仕掛けが一般的になってきていますよね。

多田:メディアの特性を生かしていますよね。従来の4大メディアのキャンペーンは基本的に拡散性が無いので、とにかく広告の量を増やして接点を持つというのが重要でした。

菅田:リーチが広がるなかでどれだけエンゲージメントがあるかというのは常に課題になりますが、まずは拡散して情報を広めるという意味でマス的な動きではあると言えます。

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――キャンペーンの応募ではスーパーにいくと応募ハガキがありますが、あれは今でも欠かせないものなのでしょうか。

小川:キャンペーンに対する需要調査をすると、若年層はSNSでの応募意向が強いですが、50代・60代以上ではハガキでの応募意向もまだ強いです。
また、先ほどのお店のタイプの話とも近いのですが、商品が欲しくて新規に買って参加する人、普段から買っている商品で応募する人、参加すること自体を楽しむ人など、キャンペーンにもさまざまな参加目的があります。

菅田:ハガキは大事ですね。単純にデバイスを扱う知識の問題でWeb応募できない人がいるというだけではなく、店頭でのリアルな肌感はキーワードだと思います。
わかりやすい例ではスタンプラリーですね。やっていること自体は面倒なはずなのに、スタンプを集めて完成をめざすのが楽しく、それ自体がエンタメとして成り立っている。
ただし、単純な利便性やインスタントウィン※のような即時性では、デジタル・プロモーションの方が勝っていると思います。

多田:便利になりましたよね。昔は応募されたデータは紙の上にしかないので、分析まで予算が回らないことも多かったです。
今ではお客さん自身が、氏名や属性、アドレスなどのデジタルデータを入力してくれて、それをまとめれば分析できるわけですから。
やはり、そこの利便性というか、スピード感は以前なかったものです。

インスタントウィン: その場で抽選結果がわかるクローズド懸賞のこと。店頭であればアイスの棒や、スクラッチ、三角くじ。ネットでは商品QRコードやレシート画像アップでの応募や、SNSで企業アカウントの投稿を「フォロー・リツイート」をすることで応募するキャンペーンなどがある。直接的な購買動機付けや、話題拡散、フォロワー増加などのための手法。

時間が限られる棚前では、すべての情報をひと目で認識できる紙のPOPに強みがある。

――デジタルの利便性の話が続きましたが、フィジカルのメリットはどのような点でしょうか。

菅田:フィジカルなメディアやツールは、“店頭で最も商品に近いタッチポイント”として設置しやすいというメリットがあります。
いくらWebやマスで広告をしても、実際に店舗に行って隣に目立つ商品があれば、そちらが選ばれてしまうので、店頭コミュニケーションはとても重要です。
設置の制約はありますが、そこにデジタルサイネージやePOPなどのデジタルデバイスを採用する事例も増えています。

多田:紙よりもデジタルなPOPの方が「音声」や「動き」がある分、興味を引きつけることはできますよね。ただ、目を向けた後に何秒間モニターを見ているかという問題もあります。
コロナ禍で店の滞留時間が短くなり、棚の前にいる時間も短くなります。
そうすると数十秒かけて訴求する動画では長すぎて、すべての情報をひと目で認識できる紙のPOPの方が強いという考え方もできます。

小川:デジタルサイネージに関しては、「設置すればその商品がより売れるようになる」というデータは、残念ながらまだ取れていません。売り場担当者側からしても、売り場全体の雰囲気づくりや賑やかしという目的でサイネージを使っているケースもあると思います。
サイネージを積極的に導入している流通のお客さまの事例では、棚に小型のサイネージを設置してOne to One的な訴求をするよりも、店内の壁面に大型のサイネージでインパクトある訴求をした方が売り上げにつながるという話もあります。

――レシピなどが動画で流れていることはありますが、やはりレシピカードも欲しいという声も必ずありますよね。

多田:レシピ訴求の場合、やはりカードは必須ですね。商品と一緒に持って帰れるという利便性があります。

菅田:「レシピ」をテーマに、デジタルとフィジカルを組み合わせる例としては、店頭からレシピカードを自宅に持ち帰り、レシピカードのQRコードをスマホで読み取ると、動画が観られたりクーポンが出たりというようなサービスです。
特性を生かして連動することで発展性が高まりますよね。

多田:最近でもフィジカルな紙のクーポンの利用自体が減っている実感はありません。一方で、スマホのクーポンは若年層の消費者の利用が拡大しています。

小川:もともとはキュレーションメディアである「スマートニュース」などクーポン施策で利用者数を増やしているようなケースもありますし、コロナ禍でのキャッシュレスの急速な普及と合わせてより進んでいる印象です。

菅田:紙のクーポンは手元に実物があることに強みがあると思います。お財布の中に入れておいて、有効期限が切れそうになると、使わなきゃと思う。
人は何かを得ることよりも、失うことを拒む傾向が強いものです。“損失回避の心理”を活用している例ですね。

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3.フィジカル・デジタル融合時代のポイント

マーケティング全体の枠組みのなかでプロモーションをご提案できる共同印刷に確かな価値がある。

――流通各社では顧客データをどのように活用されているのでしょうか。

小川:共同印刷が提供している「CRooM+™(クルームプラス)」という“流通向けのパーソナル・マーケティング支援サービス”では、「顧客の属性」や「アプリ内でのチラシ閲覧状況」、「クーポンの利用状況」などが取得できます。
現在サービスを利用いただいているお客さまと進めているのは、このデータを活用して新聞折り込みチラシの費用対効果を上げることです。
また、アプリ自体をメーカーにメディアとして活用してもらい、広告収益をあげようという計画もあります。
やはり大手の流通と地場の流通では、デジタルに関する予算やリテラシーの差が大きく、デジタルの分析結果を店頭にすぐに反映できないケースもあるのが実情です。
アメリカの事例が5年で日本に来るという話もありますが、同様に流通のデジタル化も、大都市圏から地方都市に事例が回るまで多少のギャップがあります。

「CRooM+(クルームプラス)」
https://www.kyodoprinting.co.jp/products/it-communication/crm/croomplus.html

多田:だからこそ、マーケティング全体の枠組みのなかでプロモーション戦略や店頭施策をご提案できる共同印刷に確かな価値があると思います。
メーカーはフィジカルな領域で顧客と直接の接点を持つことはあまりありません。
一方で流通はリアルな売り場とPOS※そして顧客情報を分析し活用することで今後の発展が期待できます。

菅田:日々の仕事で忙しい各担当者が、マーケティングまで立ち返ったうえで棚作りをできるかというとそうではないですよね。

多田:前提としてバイヤーは、自分の担当カテゴリの成績を上げることがミッションになります。そうなると店全体を見ることが必ずしも必要ではない。
全体を俯瞰しながら現場のことも知る私たちがそういった点を補い、“流通のサポート”をしたり、“メーカーとタッグを組んで流通への提案を行う”ことでプロモーションの活性化に貢献できると思います。

※POS:”Point of sale”の略で、「販売時点情報管理」の意味。スーパーやコンビニ、ドラッグなどで、POSレジを使って購買商品と購入者の年齢層、性別、当日の天気などのデータを収集し、店舗や企業のマーケティングツールとして活用するシステム。

――最後にフィジカルとデジタルを融合させるうえでのポイントを教えてください。

菅田:境界線を引いてしまわないことだと思います。これはデジタル、これはフィジカルと別物として扱うのではなく、顧客の心理や行動ベースで考えることが大事です。

多田:そうですね、“デジタルだ、フィジカルだ”と手法ありきで考えてしまうのは避けるべきです。
根本にはマーケティングがあり、命題が「商品を売ること」であれば、その達成に向けて最適化するために、何が必要かを考えるということです。
ただ、最近はスピードやコスト、データ分析などの優位性を踏まえると、デジタル施策が増えがちなのは確かですね。

小川:「アフターデジタル」という概念がありますが、そのなかではフィジカルはデジタルに内包されています。
オンラインを全体とした大きな枠組みのなかで、カスタマージャーニーに沿ってお客さまにどのポイントで何を提供し、その見返りとしてどのようなデータが得られるかの設計です。
当然そのなかには、フィジカルな領域でしか得られないタッチポイントやデータもあり、それらをいかに取得しデジタルで分析していくかという点が、今後のセールスプロモーションでも重要になっていくと思います。

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4.まとめ

  • ○検索や共有、比較・検討など消費者の能動的行動を踏まえた施策検討が不可欠。
  • ○最終的な意思決定は購買の場である店頭で行われ、依然として店頭施策の重要性は高い。
  • ○スーパー、ドラッグストアなどルーティンで通う店は店頭施策が特に重要。
  • ○拡散性や顧客利便性ではデジタルが優位。一方店頭では紙のツールに優位性がある。
  • ○流通での顧客データ利活用は発展途上。今後その分野が進化することで、流通はフィジカルとデジタルが融合した場となる。
  • ○店頭施策において手法から入るのはNG。デジタル・フィジカルと分けて考えずに、統合的なマーケティング視点で目的達成に最適な設計をする。

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