サステナビリティって何だろう?

「サステナビリティ」、あるいは「サステナブル」という言葉に触れる機会が多くなったと感じることはないでしょうか。テレビ番組のタイトル、高級車のCMのコピー、女性誌の特集、はてはアイドルグループの歌のタイトルにまで使われています。日本語に訳すと「持続可能性」。環境への配慮や社会貢献といったイメージはあるけれど、実際の意味はよくわからないという方がまだまだ多いのが実情です。
1990年代以降、企業経営における環境問題の影響が大きくなってから約30年。CSR、CSV,ESG、SDGsと聞きなれない言葉が次々と現れました。その多くは欧州から伝わってきて、対応に苦慮されたビジネスパーソンも多かったのではないでしょうか。
ヒントクリップでは、知らぬ間に一般化していた、今さら聞けない「サステナビリティ」の概念を、現代のビジネスでは必須といわれる「CSR」「ESG」「SDGs」と共に、全4回のシリーズ企画でご紹介します。

サステナビリティの基本的な概念

「サステナビリティ」(sustainability)とは日本語で「持続可能性」と訳されています。「地球環境と社会環境全般の持続」という意味です。元々は自然と共生する持続可能な社会システムをめざす環境思想のキーワードでしたが、1987年に国連が「環境と開発に関する世界委員会」の最終報告書で「Sustainable Development」(持続可能な発展)を「理念」として記載したところから広く認知されるようになりました。
その後、1990年代にナイキのサプライチェーンで起きた、児童労働を発端として世界に広がった不買運動を一つの大きな契機に、欧米先進国の企業で続発した「コンプライアンス違反」や「サプライチェ-ンの人権問題」などで市民社会の意識が高まり、サステナビリティの取り組みに高い関心が集まるようになったのです。
サステナビリティの基本的な定義は、「環境」「経済」「社会」のバランスをとることです。これは1990年代、英国のサステナビリティ社を創設したジョン・エルキントン氏が提唱した「トリプルボトムライン」という概念です。企業は、金銭的な利益、すなわち経済面だけでなく、環境汚染やCO2排出量などの環境面、人権や労働環境などの社会面におよぼすインパクトも管理する必要があるという考え方で、21世紀を迎えた現在、多くの企業で組織のマネジメントに取り入れられています。
ただし、100%環境によいことだけでは、経済は成り立ちません。例えば環境保全を第一に考え、CO2排出量の多い企業を操業停止にすれば、私たちはそれらの企業が提供する製品やサービスを利用できなくなります。そうした製品・サービスは電力、運輸など、社会の維持に欠かせないインフラであることが多いのです。そして、そこで働く社員やその家族の収入源もなくなります。つまり、「環境」「経済」「社会」の三側面のバランスをとることが、サステナビリティの根幹ということになります。

[トリプルボトムライン]
図:トリプルボトムライン

CSR(企業の社会的責任)とESG投資

1990年代に欧米を起点に拡大したCSRは、2000年代に入ると、経済のグローバル化と共に日本にも普及していきます。2003年にはCSR元年とよばれるほど、急速に普及。ほとんどの大企業が、それまでの「環境報告書」「環境社会報告書」から、「CSR報告書」を発行するようになったのもこの頃からです。「CSR(=Corporate Social Responsibility)」とは企業の社会的責任という意味で、企業が自らの利益だけを追求するのではなく、社会の一員として責任ある経営を行うことです。
2010年代に入ると、「CSV(=Creating Shared Value)」という概念が生まれます。経済学者のマイケル・ポーター氏が提唱した概念で、日本語では「共有価値の創造」と表現されます。ビジネスの視点から社会課題の解決を図ることで企業価値と社会価値の双方の向上をめざす経営戦略です。環境や社会への配慮が事業の成長の機会につながるという視点を明確にしたことで、サステナビリティが、新たな価値を生み出す可能性があるという「気づき」を与えました。
さらに投資の側面にも大きな進展がありました。「ESG投資」です。それまで企業の財務情報に基にしていた投資評価に加え、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)面の活動や実績を考慮して投資することです。社会、環境リスクが急速に高まる時代背景もあり、機関投資家の間に企業の長期的成長とリスクを判断するためにESG視点で評価する動きが広がりました。もともと「SRI(社会的責任投資)」という持続可能な社会の構築に適さない企業を投資先から排除するネガティブスクリーニング(具体的には軍需産業、たばこ産業、アルコール産業、原子力産業、アダルト産業など)はありましたが、「機会」の部分も評価する投資活動として、欧米では2010年代にはメインストリームになりました。遅れていた日本でも、最大の機関投資家であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が2015年に「PRI(国連責任投資原則)」に署名したことで、ESG投資に注目が集まり、2020年を迎えてさらに活発になっています。
同時に、2000年代は大企業による粉飾決算や不祥事隠蔽などの事件が相次ぎ、多くの企業が退場を余儀なくされたことで、コンプライアンスの側面からもCSR、サステナビリティへの要求が高まりました。2006年に国連がPRI(責任投資原則)を制定したことも、投資家が不透明なガバナンスの企業への投資をリスクと考えるきっかけとなり、その後、2010年には、各国の行政機関、NPO、NGO、企業などあらゆるステークホルダーの参加による社会的責任の国際ガイドライン「ISO26000」を発表。CSRは、自社だけでなくサプライチェーンの人権などにも責任の範囲が広がっていくことになります。
さらに、2015年のパリ協定締結とSDGs採択を契機として、世界中でサステナビリティが企業にとって欠かすことのできないものとなりました。

[1990年以降のサステナビリティ]
図:1990年代以降のサステナビリティ

サステビリティと企業活動の未来

サステナビリティは企業にとって新たなビジネスチャンスでもあり、「経済的な発展」を続けながら「地球環境や社会をよりよくする」事業活動を創出することが、競争優位の源泉になっています。企業としてできるサステナブルな取り組みは多様です。一人ひとりの社員の省エネ活動や、製造プロセスの効率化などによる事業活動の環境負荷低減は、経費節減効果はもちろん、生産性の向上にもつながります。環境や社会課題解決につながる自社商品・サービスの開発は、直接的な利益だけでなく、長期的な企業ブランディングにも直結します。今話題の働き方改革で、従業員が働きやすい環境を整備することも企業にとって重要なサステナビリティ施策です。ワークライフバランスを見直して、男女問わず育休の取得率が上がるようサポート体制を整える、介護や育児と仕事の両立がしやすいよう在宅勤務環境を用意する、作業現場の安全を確保するなど、従業員の健康や職場の衛生環境への配慮もサステナブルな企業には必要です。
2020年代、サステナビリティは企業の存在の基本条件であり、存続と成長のために、欠くことのできない競争優位の源泉となっているのです。

[サステナビリティのフレーム]
図:サステナビリティのフレーム

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