EC市場が拡大するなか、「今さら紙のカタログ?!」と思われるかもしれません。

通販各社はECへ誘導するための戦略的なカタログやDMを強化し、マルチチャネル展開における紙媒体の役割は変化しつつあります。とはいえ、通販における紙カタログの持つ力はいまだ強く、顧客リストに合わせた丁寧なコミュニケーションを意識することで、高いレスポンス率を得ることが可能と言われています。商品が売れるカタログにするには、商品力はもちろんのこと、紙面のビジュアルも重要です。

今回は、共同印刷プロモーションメディア事業部のカタログ・情報誌制作ディレクター香山幸子に、「紙のカタログだからこそできるビジュアル表現」や「注意したいポイント」など、“売れる”通販カタログを作るコツをインタビューします。

カタログ・情報誌制作ディレクター

最近の通販カタログの傾向

2016~2017年は「ブランディング」を意識されている企業が多くありました。通販市場が激化するなか、競合との差別化を課題として、ターゲットゾーンを明確に絞り込んだデザインを求められる傾向にあったように思います。

今年はそれに加えて、改めて「売り上げ」がキーワードになりつつあると感じています。
“今、売れるもの”を選定し、いかに売れる紙面づくりをするかが課題となっています。
これまでは、ブランディング重視でポイント訴求のマークや目立つ色の使用を控え、セールス色が強く出ることを嫌う傾向にありました。
しかし、そうすると読者の目には留まりにくく、結果的に売り上げにつながりにくい。
そのため、これまでのブランディングの要素は維持しつつ、強調したい商品はしっかりアピールするいう、ブランディングとセールスの両軸を維持する紙面づくりが求められていると感じています。

通販カタログ制作の課題と解決策

課題①:ターゲットへの商品訴求間違いによる機会損失

プロモーションを展開する上では、通販に限らずどの企業にも共通する課題かもしれません。特に通販カタログの場合、1冊の中にさまざまな商品が含まれます。
そのため、同じカタログ内でも、商品によってターゲットが異なることがあります。とはいえ、カタログ全体としてのペルソナに対するトーン&マナーはそろえる必要があり、“商品ごとのターゲット”に対する訴求を変えていかなくてはなりません。

例えば、主力商品がランジェリーのメーカーだとします。
新商品のブラのストロングポイントが「ノンストレスな付け心地」であった場合、直感的にその特徴が伝わるようなビジュアルとはどんなイメージでしょうか。
開放感、躍動感、浮遊感、羽、ふんわり…と、「ノンストレス」をイメージさせるキーワードがたくさん思い浮かぶと思います。
それらのキーワードと、自社のブランドイメージや通販カタログ全体のペルソナ、各商品のターゲットとをすり合わせ、きちんと意味を持たせたクリエイティブを意識することが大切です。

また、イメージだけではなく紙面に対するアンケート調査なども有効です。当社では、社内のアンケート機能やモニターアンケートを利用して、紙面構成の裏付けもとっています。

参考記事:「顧客」を知ればマーケティングが変わる!ペルソナ活用のススメ

課題②:掲載情報過多による売り上げの伸び悩み

通販の場合、実際の商品を手にとって確認することはできません。
そのため、限られた紙面で商品の特徴や機能性を正しく伝える必要があります。

例えば先のランジェリーメーカーの場合、ビジュアルとスペック、機能説明で情報を伝えますが、伝えたいことが多すぎると、逆に何が一番伝えたいことなのかわからなくなってしまいがちです。Webであればスクロールをして順に伝えられますが、紙面は見開き、または片ページで完結する必要があります。
そのため、以下が課題解決のポイントとなります。

1.情報を絞る…たくさんある伝えたいことのなかから、「そのページで最も伝えたいこと」を整理し、不要な情報をそぎ落とす作業が大切です。

季節ものやカラーバリエーションが豊富な商品など、機能性よりも、ビジュアルにインパクトを持たせて訴求する方が効果的な場合もあります。本当に伝えたいことを、プライオリティーをつけて整理することが大切です。

2.キービジュアル&コピー…キービジュアルとコピーの位置の連動を確認し、撮影の際は、キービジュアルとコピーの位置を事前に設計しておきましょう。

またファッション雑誌とは異なり、商品を格好よく見せるだけでは売れません。ディテールをきちんと伝えられるビジュアルが重要です。

3.フォント…見やすいフォントを使用する、ターゲットの年代に合わせて文字サイズを大きくするなどの調整が必要です。

4.導線…カタログ読者の目の動きに合わせた、しっかりした“導線”設計が重要です。
導線設計にはアイトラッキングという調査が有効です。

アイトラッキングは店舗の導線調査などで使われることがありますが、紙面にも応用可能です。どんなビジュアルやコピーが目を引きやすいのか、どのような商品配置であれば、全体をまんべんなく見てもらえるかなど、ABテストを行うのも効果的でしょう。

課題③:紙面とWEBのクオリティ差異によって生れる消費者の離脱

一概には言えませんが、店舗とWeb両方の販売チャネルを持っている企業では、紙のカタログ制作チームとWebチームは別部隊という場合が多いようです。
しかし、紙のカタログで商品を選び、購入はWebで、という購買行動は最近では珍しくありません。消費者のシームレスな買い物を実現する上でも、媒体は異なれど、発信する情報やトーン&マナーが統一されていることは重要です。

また、カタログ制作のデータを活用しながらWeb設計を同時に行うことで、制作業務効率改善やコスト削減にもつながります。

通販カタログのプロモーション効果を高めるためのコツやポイント

最も大切なことは「フィードバック」です。
可能な範囲で、カタログ担当者と制作担当者で情報共有をし合うことが次の改善策につながります。思ってもみなかった商品の売り上げが好調だった場合や、逆に一番力を入れたページの商品の売り上げが振るわなかった場合、その理由を、クリエイティブ、MD、季節、顧客層など、さまざまな角度から分析されることと思います。この検証、フィードバックを一緒に行うことで、同商品の訴求方法を変えてテストするなど、PDCAをより早く効果的に回すことが可能です。
また先ほどの話にもありましたが、「情報をそぎ落とす」ことも効果を高めるポイントです。
通販カタログを隅々まで見てくれる方が多くいれば、これほどありがたいことはありませんが、そうとは限りません。

流し読みの人にも最も伝えたいことが伝わるよう、“情報はなるべくシンプルにする”ことがポイントです。思いが強いほど伝えたい情報は多くなりますが、訴求ポイントが多くなるほど伝わりにくい紙面になってしまいます。軸をきちんと持ち、それに沿って情報を取捨選択することをおすすめします。

最後に、制作担当者との意思疎通をスムーズにするための「オリエン」も重要です。
思ったものと違うものが出てきた…という経験をしたことはありませんか。クリエイティブは感覚的な面もあり、「ふんわりした感じ」「やわらかい感じ」など、表現がどうしても感覚的になりがちです。

オリエンシートでしっかり情報共有することで、制作担当者との認識に齟齬がなくなり、業務効率の改善にもつながるでしょう。

関連記事:販促物の「イメージと違う!」を回避するためにデザインオリエンの前にやっておくべきこと
DL資料:デザイナーから思い描くアウトプットを得る!デザインオリエンのコツ

『実は○○が一番大変!!』制作担当者の裏エピソード

最大の敵はやはり「表現のマンネリ化」です。
特に定期カタログは、どうしても表現がパターン化しがちなため、常に情報収集を行い、新しいネタを仕込むように心がけています。幅広いジャンルの広告や雑誌を見て、ビジュアルの見せ方をストックしています。そうすることで、お客さまとクリエイター間で齟齬が起こりやすい「ニュアンス」部分の方向修正も可能になります。「ニュアンス」の理解には言葉より、ビジュアルイメージそのものを共有することが一番効果的です。
紙媒体やWebなどの媒体やジャンルを問わず、幅広い視点で情報収集することをおすすめします。

まとめ

最近では「通販」と言うと、ネットをイメージする人の方が多いのかもしれません。スマートフォンやSNSの普及により、いつでもどこでも買い物ができるようになりました。しかし、“売り場”としての強さでは、紙のカタログはネットに劣らないと思います。
ネットは欲しい商品がある場合、商品名で検索し、一番安く買えるのはどこか?というように情報を絞り込んでいきます。Amazonや楽天のように大きなモール内で購入することも多く、“どのお店で買ったか”より、欲しい商品をいかにお得に手に入れられるかがポイントとなります。

一方、紙のカタログは紙面上、つまりその売り場で商品をじっくり選び購入をしてもらうことが可能です。検索によって異なるショップへ移動されてしまうこともありません。強い“売り場”である紙の通販カタログは、クリエイティブの一工夫でより“売れる”媒体になれる可能性を秘めています。

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