ペルソナ活用のススメ 「顧客」を知ればマーケティングが変わる!

「マーケティングにおいてもっとも大切なことは何か?」と問われたら、多くのマーケティング担当者が「顧客を深く知ること」と答えるのではないでしょうか。ターゲットとなる顧客・見込顧客を具体的にイメージできていなければ、どれだけ多額の予算を割いて施策を企画・展開したところで、マーケティングにおいて本質的な成功を収めるのは困難です。

この記事では、マーケティング担当者の頭の中に漠然と存在する「顧客像」を心理的な側面(インサイト)まで踏み込んで具体化し、顧客理解を手助けしてくれる「ペルソナ」について解説します。

そもそも「ペルソナ」とは

ペルソナはもともと「俳優がかぶる仮面」を表すラテン語で、そこから転じて演劇の登場人物を指して使われるようになりました。また、心理学の分野においては、「仮面」「人が周囲に対して見せたいと思う外面的な姿」といった意味合いで用いられています。

ビジネスの世界に最初にペルソナの概念を持ち込んだのはマイクロソフト社のソフトウェアを開発したアラン・クーパー氏で、ソフトウェア開発の際、ターゲットユーザーを明確にするためにペルソナを活用したといわれています。クーパー氏はその後、著書『コンピュータは、むずかしすぎて使えない!(原題:THE INMATES ARE RUNNING THE ASYLUM)』のなかでペルソナについて解説し、これをきっかけとしてペルソナが広く知られるようになりました。

特にマーケティングにおいてペルソナ活用が進んでいますが、従来の顧客セグメント(プロファイリング)と混同されがちです。顧客のセグメントは性・年齢・職業・居住地などの属性で分けたグループとしての特性を明らかにしようとするのに対し、ペルソナは趣味嗜好や価値観、ニーズや行動特性などの定性データも組み合わせ、具体的かつ詳細に設定した1人の顧客像に注目して、「誰が買うのか?」から「その人はなぜ買うのか?」についてアプローチする点に特徴があります。

なぜペルソナが重要なのか

近年、マーケティングにおいてペルソナを重視する傾向が見られます。その理由のひとつは、冒頭でも述べたとおり、顧客を深く知ることこそがマーケティングを成功に導く最短距離であるためです。

マーケティングの父、フィリップ・コトラー氏は、マーケティングとは「「売ろうとしなくても売れる仕組みを作る」ための一連の取り組みである」という意味のことを述べていますが、そうした仕組みを構築するうえでも、商品・サービスの買い手である顧客の理解が重要であるのは改めて述べるまでもないでしょう。

例えば、自然派化粧品を開発・販売する会社であれば、商品の買い手である自然派志向の女性が何を求めていて、どのようにして化粧品に関する情報を得るのかを理解している必要があります。スポーツカーを開発する企業なら、開発しようとしている車種のターゲットとなりうるクラスターを明確化し、彼らの生活パターンや収入状況だけでなく、どんなときにその自動車を必要とするかといった気持ちの動きも把握しなくてはなりません。そうでなければ、ターゲットの求める商品を作ったり、ターゲットの心に響くメッセージを届けたりするのは難しいからです。

ターゲットの理解が曖昧であるばかりに、せっかくのマーケティング活動が非効率となったり、失敗してしまったりするケースは枚挙に暇がありません。ペルソナを定義して顧客像を明確化することにより、DMの送付やマーケティング・コンテンツの開発、広告の出稿といったあらゆる施策を、より効率的かつ効果的に実践することが可能となります。

ペルソナ設計のポイント

ペルソナを設計する際は、対象となる顧客クラスターの特徴を抽出したうえで、これを架空の人物像として具体化していきます。名前、性別、年齢、居住地といった属性はもちろんのこと、趣味やライフスタイル、情報収集の方法といった行動パターンなども明確化し、あたかも実在の人物であるかのようにリアルに定義することがペルソナ設計のポイントです。

ペルソナ設計のための調査方法

ペルソナの作成方法はさまざまありますが、そのなかのひとつとして、顧客の分析データを基に仮説を立て、その仮説を洗い出すために調査を行うという方法があります。その場合、まずは顧客視点でのクロス集計やRFM分析などで顧客の行動傾向やその変化などを把握し、そのデータを基にクラスター分析によってペルソナのベースを作ります。そしてさらに顧客インサイトを掘り下げるために調査を行います。

調査方法にもさまざまなものがありますが、代表的なものは以下のとおりです。

  1. 1.アンケート
    ユーザーの嗜好や興味などについて質問し、回答を得る方法。インターネットや自社店舗などで行うほか、あらかじめセッティングした会場に対象者を集めて行う(会場調査)ケースもあります。

  2. 2.インタビュー
    ・デプスインタビュー
    基本的に1対1の対面形式で行い、1人の考えを深く聞く方法。隠れた本音を探るのに向いています。

    ・グループインタビュー
    座談会によって複数のユーザーの考えを聞く方法。広く意見を集めるのに向いています。

  3. 3.社内でのヒアリング
    営業や接客の担当者に、顧客の好みや要望などについて尋ねる方法。普段から直接顧客と触れ合っているスタッフだからこそ知ることができる、具体的な情報が得られます。

  4. ソーシャルリスニング
    SNSやブログ、掲示板などからユーザーの声を集め、商品に関連するキーワードの登場傾向を分析する方法。

ペルソナの例

それでは、具体的なペルソナを1つ見てみましょう。以下は、おしゃれな軽量ノートパソコンを必要としている人の例です。

  • ・ペルソナA:おしゃれな軽量ノートパソコンを探している女性
    名前:鈴木○〇美
    性別:女性
    年齢:33歳
    業種:アパレル
    役職:店長
    年収:450万円
    学歴:○○大学商学部卒
    居住地:東京都武蔵野市
    家族構成:未婚(単身世帯)
    よく見るメディア:「○○○○」「XXXX」
    検索に用いるワード:おしゃれ、ファッション、スマート、トレンド……etc.
    インサイト:
    大学卒業後にアパレル業界での経験を積む。5年ほど前に現在の店(東京のショッピングモールに入っている店舗)に勤め始め、昨年店長となる。現在は、店舗での接客、商品管理、売上管理、スタッフの指導に加え、本社とのミーティングや店長会議、ショッピングモールでのイベントに関する会議に出席するなど、多忙な日々を送っている。会社ではBYOD(私有の端末を持ち込むこと)が認められており、これまで5年前に購入した私物のノートパソコンを仕事に使用していた。

    しかし、店長になってからはノートパソコンを持ち歩いてミーティングに参加したり、出張したりすることが多くなり、パソコンの重さが気になるようになった。また、購入当時は機能重視で機種を決めたため、外観もハードすぎるところが気になっている。今は自分のノートパソコンを人から見られる機会が多くなり、またアパレル業界ということもあって、おしゃれで軽量な機種を新たに探している。ただ、年齢や役職を考慮すると、甘すぎるデザインではなく、適度な高級感も欲しいところ。使用目的は、メールのやり取り、ミーティング用の資料作り、店舗の在庫確認、ファッション関連のリサーチなど。価格は15~20万円くらいのものを探している。

こうした内容のほかに、ペルソナの趣味やライフスタイルなども項目立てしていくと、さらに具体的な人物像が浮かび上がってくるでしょう。そこから、ペルソナが抱える別の悩みや行動パターンが見えてくる可能性もあります。

情報の共有、アイデアの整理

ペルソナは以後のマーケティング活動の拠り所となる要素のため、社内外のマーケティング関係者間で正しく共有することが重要です。ペルソナを作成する過程での関係者との密な連携はとても手間がかかることですが、実はペルソナマーケティングを成功に導くプロセスでもあるのです。例えば、関係者一同によってワークショップを開いたりすることで、さらなる仮説の洗い出しやアイデアの整理を行うことも可能になります。

ペルソナ定義でマーケティングが変わる!

以上、この記事ではペルソナの重要性と活用のメリット、ペルソナ設計のポイントについて解説しました。

定義したペルソナは、その後のマーケティング活動におけるさまざまな場面で活用でき、好ましい効果をもたらしてくれることになるでしょう。しかしそれ以前に、「チーム内で討議を重ねてペルソナを定義した」ということ自体がマーケティングチームとしての大きな前進となります。というのは、関係者がそれぞれでターゲットをイメージしながら動くよりも、共通したペルソナをターゲットにすることでチームの推進力となり、マーケティングにおける最も重要な第一段階をクリアしたといえるからです。

貴社の顧客を深く理解し、マーケティング活動をより効果的に推進するため、ぜひペルソナの活用を検討してみてください。

カスタマージャーニーを知る最初の一歩 「顧客の行動や心の動き、把握できていますか?」

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