結婚式は何かとお金がかかるもの。日本ではあまりお金をかけず、少人数で行う式をいわゆる「ジミ婚」とよんだりしますが、最近アメリカでも「マイクロウェディング」という、少人数での結婚式がトレンドになってきています。ただし日本の「ジミ婚」とは少し勝手が異なるようで、特に「ブーマー」、「ミレニアル」とよばれる世代層に人気です。本記事ではトレンドの背景や、なぜブーマーとミレニアル世代に支持されているのかについて迫ります。

「カリフォルニア・ナパバレーの麓、古城のようなワイナリーで結婚式をしてきました。」知人カップルからそう報告され、さぞかしゴージャスな派手婚なんだろうとイメージしながら写真を見せてもらい驚きました。なんと出席者はたった8人の少人数婚だったのです。

またとある平日の朝早く、サンフランシスコの市庁舎のビルの中でも、同じようなこじんまりとした結婚式を見かけました。ヨーロッパ調の天窓から光が差し込む階段で、幸せそうに写真撮影を楽しむカップルとそれを見守る友人が4人。その後は、近所の有機栽培食材で有名な、レストランに集まり10人ほどで「お祝い会」を開くのだそうです。

ミニマリズムの結婚式、「マイクロウェディング」が新トレンド

アメリカで結婚式のプラニングなどを手がける、ウェディングサービス大手の「Knot」の調べによると、2016年の全米の結婚式にかける費用は平均$35,329で、ニューヨークではなんと$78,464もかかっているそうです。アメリカでは日本のように「結婚ご祝儀」の習慣がなく後から現金が入ってくることがないので、それを考えると相当な出費になります。

そのような中、今アメリカでは人数も予算も徹底的に縮小した「ウェディング」が注目されています。規模が小さい(=マイクロ)という意味で、「マイクロウェディング」とよばれ、筆者が見聞きした2件のウェディングはまさにそれです。主に都市部を中心に、「ベビーブーマー世代」と「ミレニアル世代」と呼ばれる両方の世代から支持されています。Googleの検索ワード調べでも、2017年の後半あたりから急速に注目されていることがわかります。

1946年~1964年に産まれた世代を「ベビーブーマー」といい、昨今の結婚式という文脈においては、「熟年再婚」のケースが多いため、こういった少人数・小規模なプランが好まれるそうです。

一方で「ミレニアル世代」は1980年から1994年産まれで、ちょうどベビーブーマーの子供世代にあたります。「デジタルネイティブ」・「SNS&セルフィー世代」・「シンプリシティ」を好む、『ミニマリズム主義』などで説明されることが多い、極めて特徴的な世代です。

ニューヨークで、ミレニアル世代向けのウェディングプランナーが手がけた案件のうち、2017年は、35%にあたるのが「マイクロウェディング」であったそうです。

「型」やぶりで、量より質。自分達だけのオリジナルストーリーにこだわるミレニアル世代にぴったり。

さて、新しいトレンドである「マイクロウェディング」と呼ばれる結婚式の条件とは?招待客が少ないだけとか、予算を少なくするとか、すべての規模を「小さく」するだけのいわゆる「ジミ婚」のようなものを指すのでしょうか。

最大の特徴は、いわゆる「伝統的な結婚式の形式をあえてとらないこと」です。例えば、「教会でセレモニーをしてから、披露宴会場へ移り、100人を超えるゲストを招いたパーティをする、生演奏バンドを呼ぶ、最後には皆でダンスをする」等の一般的なことを意図的にやらないのです。「型やルール」に従わず、自分たちだけのストーリーで、自由にゼロから構成していく、こだわりの結婚式なのです。そして、そこに登場するのは、そのストーリーに共感できる「親密な友人と家族だけ」でいいのだといいます。

予算の観点からも招待客が少ない分、安く抑えることができますが、マイクロウェディングはケチケチするのが主目的ではないため、こだわるところには上質なものを選び予算をかけることも珍しくありません。つまり、マイクロウェディングは量よりも、自分の個性を演出する「質」を重視し、究極のシンプルにを追求しパーソナライズされた、親密性の高い結婚式であるといえるでしょう。

マイクロ・ウェディングの特徴まとめ

  • ●小規模な招待客(5名から25名程度)
  • 伝統的なスタイルをとらない(教会式のあと披露宴、などはしない)
  • 自分たちだけのストーリー・個性・スタイルを重視
  • 自分たちに意味のある場所(ビーチ、野外キャンプ場、ワイナリー、市庁舎、国立公園、二人が出会ったカフェなど)
  • こだわる部分は上質に(農家直送食材を使った料理、家庭栽培の花、DIY:自作のデコレーションやフラワーアレンジメントなど)
  • 「量より質」を重視

デジタル世代だからこそのバランス。最高の1枚と、最高の親密度を同時に楽しむ

再婚組の「ベビーブーマー世代」が、熟年になって自分たちの価値観を「シンプル」に追求し、表現するためというのは比較的理解しやすいですね。一方で、その子供世代であるミレニアルも時代の流れとはいえ、異なる背景から同じウェディングスタイルを好む傾向があるのはとても興味深いです。

彼らがマイクロウェディングを好む背景として、「現代デジタル社会生活のストレスがすでに限界値」で、結婚式という「イベント」で余計なストレスはできるだけ避けたいという傾向があるから、というのも挙げられています。また都市部では、特にキャリアを持つカップルの晩婚化が進み派手婚よりも、二人を中心とした現実的な結婚式を望むようになったからだ、という指摘もあります。

「マイクロウェディング」はデジタルやSNS世代ならではの、究極のバランス感覚の象徴なのかもしれません。インスタグラムなどのSNSで映える「絵になる」場所・モノ・シーンは、こだわって上質に作り上げれば、リアルの場に100人、200人もいなくても、最高の1枚は演出できますし桁違いの数に拡散することだって可能です。そのかわり、実際のリアルの場では、自分たちのコアな部分「気の置けない家族・友人達だけ」と楽しみたい、という一石二鳥のウェディングスタイルといえるのではないでしょうか。

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