ある休日の朝。「アレクサ、電気をつけて」この一言で暗かった部屋がぱっと明るくなります。「アレクサ、何かテンションのあがる曲をかけて!」すると、ベッドのそばに置いてあるスピーカーから音楽が!つい、鼻歌混じりで身支度を整えます。

この便利な「アレクサ(Alexa)」とは一体誰なのでしょう?実はデジタルアシスタントのニックネームです。アマゾンが発売している家電「Amazon Echo(アマゾンエコー、以後エコー)」に入っている音声認識ソフトで、アメリカで爆発的な人気を博しています。

では、アメリカ人はどのようにエコーを使いこなしているのでしょうか。アメリカで暮らす筆者や実際に使っている人たちの体験談に基づき、その利点と課題を分析すると同時に、エコーを使った企業の取り組みについてもご紹介します。

アマゾンエコーで一体何ができるの?

一見なんの変哲もないスピーカーのような形のアマゾンエコー。「Forbes」のレポートによると、エコー関連商品はボイスコントロールスピーカー市場の70%を占めているというから驚きです。ご存じのように、音声認識のデジタルアシスタントはiPhoneのSiriのように、今に始まったことではありません。では、何が異なるのでしょうか。それは、エコーを生活空間に置くことでスマホの操作以上のことができるようなった点でしょう。

例えば、ライトやエアコンなどの家電と接続することで、音声だけで家中の家電が操作できます。また、家事をしながら複数のタスクを同時にこなすことも可能です。例えば、料理をして手が汚れているときに音声だけでタイマーをセットできたり、出かける前の忙しい時間帯、身支度の合間に今日の天気やニュースを読み上げてもらったり、子どもたちが手持ち無沙汰なときにアレクサと数字当てゲームをしたりと、その使い方は無限大です。「エンターテイメント」「インフォメーション(情報)」「ホームオートメーション(家の中の自動化)」とさまざまな使い方ができるエコー。実際に使用している人に聞くと、ベットルームやキッチンなど各部屋に一台ずつ設置し、誕生日には一緒にHappy Birthdayを歌ってもらうなど、エコーが生活の一部になっている様子がうかがえます。またエコー所有者に向けて、アマゾンから毎週金曜日にニュースレターが配信され、新しい使い方を提案してくれるのも便利です。

「Business Insider」によると、アメリカでは約900万人がエコー関連商品を所有しているという試算がなされており、その需要は今後も高まっていくと予測されています。このエコーの人気を広げるため、アマゾンではエコーの小型版スピーカー「エコー・ドット」やワイヤレスの「エコー・タップ」などの関連商品を次々と展開しています。

また、今年6月には「アマゾン・エコー・ショー」というエコーにスクリーンがついた家電が発売されました。アマゾン・エコー・ショーを持つ人同士でビデオ電話ができたり、YouTubeと接続してレシピのビデオを流せたりするデバイスですが、スクリーンの大きさや厚みなどから、ユーザーの評価はあまり高くないようです。

「ながら」作業を最適化するツール、アマゾンエコーの課題とは?

忙しい現代人に、複数のタスクをこなせるように「少し」の便利さとエンターテイメントを提供してくれるエコーですが、課題もあります。アメリカには多様な人種が住んでいますが、現状ではアレクサは英語とドイツ語しか認識しません。

もう一つの課題として、新しい商品を買う場合、口コミなどのレビューを読んだり、画像で商品を確認したりしたいので、音声だけでの買い物は正直難しいのです。

この課題を別の方法で解決すべく、アマゾンではリピート買いとお買い得商品の2つの組み合わせで「アレクサボイスショッピング」という付加価値をつけています。以前購入したことのある商品のリピート買いを促進するため、注文履歴の中から再注文した人には10ドルのクレジットがつくなど積極的なプロモーション活動を行っています。また、「アレクサ、今日のお買い得商品は何?」と聞くとプライムメンバーだけに20~30%オフの特別商品が読み上げられる仕組みになっており、アレクサを利用するお得感を感じさせます。

「スキル」を通じて消費者に入り込む、企業のアマゾンエコーへの取り組み

エコーによって家庭での音声認識のバーチャルアシスタントが身近になった今、企業ではどのようにアレクサを使って消費者へブランディングしているのでしょうか。アレクサには現在1万5千以上の「スキル」が存在しており、それをアマゾンのアカウント上で有効にすることでユーザーの嗜好にあったスキルを身につけていきます。例えば、スキルからニューヨークタイムズ紙をアカウントに追加すれば、毎朝ニューヨークタイムズ紙のトップニュースを読んでもらうことができます。また、大手銀行Capital Oneやクレジットカード会社のAmerican Expressではアレクサを使い口座残高確認や支払いができますし、個人タクシーのUberやLyftのスキルを使い車を呼ぶことができます。このように企業がアレクサスキルを通じ、消費者との接点をより増やすことでブランドロイヤリティを高めているのです。

アマゾンの他にもグーグルホームやマイクロソフトも参戦しているバーチャルアシスタント家電業界。さまざまな企業とのパートナーシップにより、今後ますます多くの“スキル”が誕生し、アレクサも企業のブランディング戦略の中の一つとして組み込まれていくことでしょう。

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