前編では、アメリカの代表的なシェアリングエコノミーと主要プレーヤーについて紹介し、拡大のカギとして①サービス提供者の確保、②安全性と信頼性、③使いやすいプラットフォーム、の3点を挙げました。後編では各社がどのような手法で利用者を拡大しているか、具体例に迫ります。

■事例①サービス提供者の確保:Uberにおけるアグレッシブなドライバー採用

シェアリングエコノミーは、サプライ側にある程度の規模がないとユーザーが増加せず、成功しないと言われています。
規制当局に対して強気に出ることで知られるUberですが、ドライバーの採用戦略もアグレッシブです。アメリカは堅調な景気を背景に、街を歩けば小売・飲食店・物流いたるところで”NOW HIRING(人材募集中)”と人不足が顕著で、Uberもドライバー確保に躍起になっています。

ドライバー確保のためにまず、TV、ラジオ、Webのコマーシャルで、大々的にドライバーを募集。

Uberによるドライバー募集のTVコマーシャル
https://youtu.be/ZsbWt6FjlTk

そして、ドライバーに対して車購入費用補助などのインセンティブを与える仕組みを導入。さらには競合であるLyftのドライバーを引き抜くプロジェクトチームを編成するなど、なりふり構わず採用活動をしています。

■事例②信頼性と安全性:AirBnBにおける安全性対策

多くのシェアリングエコノミーサービスで、信頼性・安全性を高めるためにユーザー同士のレビュー評価制度や、サイト経由の代金決済を導入していますが、それでも、個人間ビジネスであるがゆえにトラブルが避けられません。特に、見知らぬ人に宿泊施設を提供する民泊サービスでは、破壊・盗難といった物的被害から、レイプ・暴力事件、果てにはホスト宅を売春宿・ドラッグパーティーに利用するなど、犯罪の温床となるような事件も起きており、https://www.airbnbhell.com/という、「AirBnBのリスクと危険性を報告しあおう!」といったサイトまで立ち上がっています。

Airbnbは、当初こうした事件の対応が十分でなく批判が巻き起こりましたが、その後以下のような対策を導入して、安全性の確保に力を入れています。

  • ホストに保険を提供する(最高額100万ドル、約1億円)
  • 予約成立以前のゲスト/ホスト間のコミュニケーションの充実を図る
  • ホストがゲストにIDの提示やデポジットを要求できる
  • カスタマサポート要員を増員し、「信頼安全部」を設置

米国では、ユーザーの信頼度をこれまでのオンライン活動履歴や、既存サービスからスコア化するサービスも現れています。トラブルをいかに回避し、起きた場合にどう対応するか、という守りが利用者への訴求にもなります。

■事例③プラットフォーム:即座のマッチングが売りのUber、シンプルさを追求のcraigslist

シェアリングエコノミーにおける技術面でのカギは、サービスの利用者と提供者を結びつけるプラットフォームです。特に、スマホアプリでの利用が圧倒的に多いため、ユーザーのモバイルとデータベースを連携させ、提供者・利用者が連絡を取り、システム上で決済まで行える、というのがスタンダードになりつつあります。

特に、Uberのような自動車配車プラットフォームでは、ユーザーの現在位置を特定し瞬時にドライバーをマッチングするテクノロジーが必要です。さらに、需給の状況から価格を変動させ、週末夜や雨天時など需要が多い時間に出動したドライバーには、インセンティブを与えています。混雑時に価格が上昇することに利用者からの不満があるのも事実ですが、UberのCEOはあえて「価格が高い時は乗らないように」と開き直っています。

一方、シンプルさ追求の例としてcraigslistがあります。前回述べたように、craigslistは非営利の個人広告サイトで、なんら積極的なマーケティングをせず、口コミだけで毎月200億PVを超えるサイトに成長しています。

創業時からシンプルなサイトの構造はほとんど変化しておらず、スタッフもたったの28人です。求人、不動産、出会い、個人広告、履歴書、会議といったフォーラム別になっており、個人同士がつながるプラットフォームを提供するだけで、決済やトラブル対応などにサイト側は関与しません。マッチングサイトの元祖でありながら、非営利とシンプルさで訴求するモデルは、今や珍しい存在です。
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アメリカでは、規制当局の柔軟な対応、自己責任の文化、ベンチャーキャピタルからの豊富な資金提供など、シェアリングエコノミーが育つ土壌があるといえます。日本では、規制、安全性への要求、資金提供などまだまだ課題も多いですが、アメリカの事例を参考に、新規サービスが生まれ、発展していくことを期待したいです。

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