売上や利益を拡大するうえで欠かせないのが、既存顧客へのクロスセル・アップセルの実施。クロスセルやアップセルは適切に実践すれば高い効果を期待できる施策ですが、一歩間違えると、顧客離反にもつながりかねない諸刃の剣でもあります。

この記事では、効果的なクロスセル・アップセル戦略について考えてみましょう。

クロスセル・アップセルとは

クロスセルとは、ある商品の購入を検討している顧客に対して関連する別の商品をあわせて提案するような取り組みのことをいいます。例えば喫茶店でコーヒーを注文したお客様に「ご一緒にケーキはいかがですか?」と勧めたり、レーザープリンターを購入する顧客に替えのトナーとコピー用紙を勧めたりするのもクロスセルの実践です。最近でいうと、Amazonや楽天市場のようなECサイトで表示されるリコメンド広告などもクロスセルの実践例の1つだといえるでしょう。

これに対してアップセルとは、顧客が購入しようとしている商品よりも上位の商品を購入してもらうために働きかけるという施策です。喫茶店の例になぞらえていうと、一杯350円のブレンドコーヒーを注文しようとしたお客様に1000円のブルーマウンテンを勧めたり、家電製品の購入を検討している顧客に上位機種を買うよう働きかけたりするのがアップセルの実践です。

なお、ECサイトで「この商品を閲覧した人はこちらの商品も見ています」といったメッセージとともに類似商品や上位機種などが表示されることがありますが、これは前述のリコメンド広告をアップセルに適用した事例だといえます。

クロスセル・アップセルのメリットとリスク

商売において売上を増やす方法は、極端にいうと2つしかありません。1つは顧客を増やすこと、もう1つは一顧客あたりの売上単価を増やすことです。

クロスセルやアップセルは、主に後者に関わる取り組みだといえます。クロスセルやアップセルを適切に実践すると、新規顧客の獲得だけに頼ることなく売上を増やすことが可能です。「新規顧客の獲得には既存顧客向けの施策に比べて5倍のコストがかかる」といわれています(売上拡大のための1:5の法則(※))。既存顧客向けにクロスセルやアップセルを展開すれば、少ないコストで売上を増やし、ひいては利益率の向上につなげることができるのです。

とはいえ、既存顧客に対して無計画にクロスセル・アップセルを行うのは考えものです。
例えば、懐に余裕のないお客様に無理に上位の商品を勧めても成功する可能性は低いうえ、顧客に悪い印象を与えてしまうおそれがあります。また、売上を増やしたいからといって、欲しくもない関連商品をむやみやたらと勧められても、顧客はうんざりしてしまうでしょう。売上拡大・利益率向上のために行った活動で逆にお客様を逃してしまっては、元も子もありません。

CRMの活用でクロスセル・アップセルの効果を上げる

それでは、クロスセル・アップセルを効果的に実践するためには、どんなところに気を付ければよいのでしょうか?それは、ひとことで言えば「お客様の気持ちになって考える」ということです。

とても買えないような高いものを勧められたり、欲しくもないものを押し売りされたりして、うれしいお客様はいないでしょう。しかし、少し背伸びすれば手が届く範囲の価格でより良いものが手に入ったり、あわせ買いにより利便性が高まったりするのなら、それはお客様にとってもメリットとなります。クロスセルやアップセルは、こうしたことをきちんと見極めたうえで実践することが大切です。

顧客の予算感は日頃の購入単価や購入頻度、家族構成などからある程度割り出すことができますし、BtoB向けの商材なら、企業規模から推測できるでしょう。また、クロスセルに向く商品の組み合わせは、アソシエーション分析(バスケット分析)(※)のような手法を用いて割り出すことが可能です。いずれもCRMに蓄積された顧客属性や購買履歴、購入履歴などから導き出せる情報です。

※アソシエーション分析(バスケット分析):購入履歴データを分析し、複数の商品間の関連性を探る手法。スーパーや百貨店、多品種を扱うECショップなどでしばしば利用される。

Win-Winのクロスセル・アップセルを目指そう

近年、大量データ分析や人工知能技術の発展により、データを用いて顧客の気持ちを推し量る手法が目覚ましい進歩を遂げつつあります。クロスセルやアップセルといった販売活動においても、こうした手法がますます活用されていくことでしょう。

無計画で強引なクロスセルやアップセルは顧客離反を招きかねませんが、顧客の求めるものを先読みして適切に提案することができれば、自社と顧客、双方にとって実りある結果につなげることができます。CRMを活用して顧客をより深く理解し、効果的なクロスセル・アップセル戦略を構築していきましょう。

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